釜石の日々

進化を無視した食生活

東京に住んでおられる方から、身内の方が膵臓癌の末期であることを聞かされた。日本では2人に1人が癌になり、3人に1人が癌で亡くなっていると言われる。医療が高度に進歩したとされる日本では癌が増え続け、先進国の中でも日本だけが癌で亡くなる人の数も増えている。むろん、超高齢化も一因だと思われる。しかし、それだけではなく、他にも日本は他の先進国と異なることがあるように思う。癌を含めて多くの病気は毎日繰り返される生活の中に原因があると思う。戦後、社会環境が大きく変わり、豊かにはなったし、医療も高度になったが、病気は一向に減らないばかりか、増え続けている。10年前に岩手に来て、豊かな自然を目の前にして、人は動物だとあらためて気付かされた。そして野生動物にはほとんど癌は見られないそうだ。動物の進化には気の遠くなるような時間を要する。しかし、戦後、豊かさは人の食事と運動量や社会環境を大きく変えた。特に食事は飽食の時代とまで言われるほどに、TV番組では毎日のように料理番組が登場している。車や電車、過労死を生み出す職場環境は、人の運動量を減らし、ストレスを増加させている。人類がチンパンジーから分かれて地上生活を始めたのは700万年前からである。その後の長い期間を狩猟生活で送って来た。考古学では人類が初めて穀物などの農耕生活を始めたのは1万1000年前の西アジア、アラビア半島の根付である今のシリアやヨルダンの地域である。日本人の稲作に至っては、たかだか3000年前の北部九州が始まりである。人類の体内には何百万年もの間、穀物は入っていなかった。穀物をはじめ糖分が人類の身体に適応するにはあまりにも期間が短いのだ。長い狩猟時代は人類の体内ではごくわずかなインシュリンが分泌されていただけである。1万年前に穀物を食べるようになると、穀物は体内で糖分に変わり、インシュリンの増加が必要になった。まして、戦後の急速な食物の広がりは、人類の歴史のごくごく短期間に急速で、多量のインシュリンの分泌を要した。インシュリンは癌の増殖も促進する。進化にはとても長い時間を要する。にもかかわらず、人類はその歴史のごく短期間に身体には合わない食物を大量に体内に入れる生活に至っている。食べ物だけでなく、日本では食品添加物まで欧米の3〜5倍も多い種類が許可されている。狩猟時代には動物の肉や魚を口にしていたが、今ではそうした肉や魚すら牧畜や養殖に抗生物質などの化学的な物質が使われ、自然回遊する魚ですらマイクロプラスティックが検出されるようになってしまっている。スーパーには豊富な食品が並ぶが、添加物の含まれていない食品を探すのは不可能な状態になっている。大阪大学は癌に対するケトン食療法に積極的に取り組んでいる。米国ではすでに2011年からその実証研究に入り、有効性が認められ、実際の治療にも使われている。このケトン療法はまさに人類の進化に適応させようとする治療法とも言える。糖質を制限し、インシュリン分泌を極力抑え、エネルギーを糖分から脂肪が分解されて出来るケトン体に変えると言う、実際にも人類の狩猟時代の食生活に近付けるものだ。癌細胞は糖分をエネルギー源としており、正常な細胞の何倍もの糖分を必要としていると言われる。糖分が制限されると癌細胞はエネルギー源を絶たれてしまう。人の身体では糖分が入って来なくなると、脂肪が分解されて、ケトン体と言うものが作られ、これが正常細胞のエネルギー源となる。しかし、癌細胞の方はケトン体はエネルギー源として使えない。このことが癌のケトン食療法となった。人類の進化過程を考えれば、ある意味では当然のことのように思える。空腹や飢餓は長寿遺伝子を活性化させると言われる。これも長い狩猟時代に人類の身体が身に付けた進化の結果なのだろう。獲物が長期に渡って捕れない状態でも生命が保たれるように進化したのだろう。
庭で自生した一輪草
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