釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

金利で遊ぶ中央銀行

2018-09-08 19:15:52 | 経済
中央銀行は市中金融機関の短期金利に直結する「政策金利」と呼ばれる短期金利をコントロールしている。1971年のニクソン・ショックで、ドルの価値は急降下し、このため米国内ではインフレが急速に進んで行った。1979年に、米国の中央銀行FRB議長に就任したポール・ボルカーPaul Adolph Volckerは、1981年には政策金利を20%に引き上げて、インフレを押さえ込んだ。しかし、これほどの高金利になると、債務を抱えるものには耐えられず、産業の稼働率が低下し、失業者が増加した。批判が殺到したため、FRBは金利を下げざるを得なくなり、1983年には3.2%まで下げて行った。これにより経済は回復し、失業率も低下した。そこでFRBは再び金利を上げ始め、1990年には8%になった。これがまた景気後退をもたらし、金利はまた少しずつ下げられて行った。こうして、FRBの金利は操作は、景気が少しでも上向いた時には金利を上げ、景気後退が始まると金利を下げる、この繰り返しであった。そして、1981年の20%を最高に、繰り返すたびに金利引き上げ時の最高金利がだんだん下がって来ている。1990年8%、2000年6.5%、2007年5.25%で、2007年にはサブプライムローンの破綻があったため、以後2008年12月の0.25%まで下げられて行った。この金利0.25%と言う状態が2015年11月まで続けられ、翌月12月から金利引き上げが開始された。今年6月までに7回の引き上げを行い、6月には金利を1.75~2.00%とした。今年中では、今月と12月の2回さらなる金利引き上げが予想されている。これまで、金融崩壊は金利が引き上げられている中で発生している。金融バブルは債務によって支えられており、その債務は金利上昇には弱い。金利がある段階まで上がって来ると、借金で投資をしていた人たちが、投資を引き上げ、借金の返済に回る。この投資の引き上げが、現在だと新興国の通貨危機をもたらしており、さらに金利が上がって来ると、社債やその他の借金で株式に投じられた資金が引き上げられ、株式の暴落をもたらす。米国のこれまでの景気後退のパターンである。しかも、今後株式の暴落が起きれば、凄まじい金融崩壊に発展する。世界中の債務が巨大に膨れ上がっているため、バブル化した資産の暴落は一気に市中の通貨を減少させ、ドミノ倒しで、次々に金融機関が機能不全に陥る。米国だけでなく、欧州や日本、中国をも巻き込み、世界恐慌へと進んで行くことになる。米国ではこれまで、金融危機、景気後退の度に、金利は5%引き下げられて、景気後退から少なくとも見かけ上は回復して来た。しかし、現在の金利は1.75~2.00%であり、仮にこの先何度かに分けて金利引き上げを行って、3%まで上げられたとしても、景気後退が発生すれば、とても金利を5%下げることなど出来ない。その余地が全くない。その意味では中央銀行として、FRBは内心穏やかではないはずである。景気後退がやって来る前に少しでも金利を上げて、良く言えば、5%までは上げておきたいのだ。しかし、その金利引き上げ過程自体が金融崩壊の引き金になる。その危険を十分FRBが分かっているからこそ、0.25%と言う小刻みな金利引き上げの仕方しか行えないのだ。裏付けのない通貨は、中央銀行の思惑だけで、いくらでも印刷、発行出来る。リーマン・ショック後FRBにより大量発行された米国通貨ドルは、あくまでも市中金融機関を通して、貸し出しの形で、市中の投資家や個人、企業に流れた。それらの資金は従って、あくまでも金利付きの借金である。中央銀行の金融緩和とは、結局は借金を世の中に増やすことでしかない。しかも、現在の中央銀行により膨らませられた世界の借金は歴史上かってない凄まじい規模のものになってしまった。持続不可能な借金がどの国にも積み上がっている。日本など、世界に他に類のない超低金利状態でなければ、現状を維持出来なくなっている。その現状とは、まさに政府債務そのものが置かれた状況だ。日本政府の満期が5年以下の国債はマイナス金利である。通常は満期がくれば、利子がもらえるが、これらの国債では利子を政府に逆に払わなければならない。とんでもないことが起きている。そこまでしないと維持出来ない政府債務の状況だと言うことだ。利益を考えなければならない市中金融機関は、こんな国債は買わない。唯一最終の買い手は日本銀行だけである。とりあえず、通貨を印刷して渡せばいいからだ。しかし、そんな通貨はいつまで信頼されるだろうか。今年度の日本政府の予算の税収は59兆790億円である。60兆円としても、政府債務は1260兆円あり、単純に収入の20倍の借金を抱えていることになる。個人の借金の限界は収入の7倍と言われている。もはや、日本はこの超低金利を永遠に続けて行くしかない。しかしそれですら、すぐに続けられない日がやって来る。
芙蓉