釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

抜け出せない労働分配率低下

2018-09-04 19:16:17 | 社会
昨日、財務省は2017年度の法人企業統計を発表し、各メディアがそれを報じている。しかし、大手メディアは企業利益と企業の内部留保が過去最高となったことを報じているだけである。企業統計からは労働分配率についても読み取れるが、それを報じているのは地方紙のみである。金融・保険業を除く全産業の経常利益は過去最高の83兆5543億円に達し、「内部留保」と呼ばれる利益剰余金も過去最高の446兆4844億円となった。しかし、労働分配率は前年の67.5%から66.2%へ下り、73%あった1980年以来、下り続けて来ている。もっとも、労働分配率の趨勢的低下は日本に限らず、米国、ドイツ、フランスなどでも見られている。それでも、日本の労働分配率はそれらの国をさらに下回っている。米国マサチューセッツ工科大学(MIT)のデービッド・オーターDavid Autor教授は、4年前に、オートメーションやコンピューター化により、世界中で高学歴の人や未熟練労働者に対する需要は高まったが、中間レベルの教育やスキルの人への需要が低下したことを指摘しており、昨年5月には、スーパースター企業の興隆が労働分配率の低下をもたらしているとする論文を出した。米国のFacebookのようなネット企業は、高収益で、株価の時価総額も日本のトヨタよりはるかに巨額だが、従業員はトヨタの18分の1の2万人しかいない。同教授はこの労働分配率の低下は米国だけでなく、国際的にも見られ、やはりスター企業の存在の高まりが労働分配率の低下に関係していると言う。総務省の労働力調査によれば、パート・アルバイト、派遣社員、契約社員・嘱託などのいわゆる非正規雇用者は、1990年には20.0%であった。しかし、バブル崩壊の後遺症の中で、着実に非正規雇用の比率が上昇し、リーマン・ショック後にはさらに上昇を続け、2018年第1四半期には38.1%までになっている。特に近年は女性の非正規雇用が急拡大している。政府は消費が低迷している原因を掴んでおり、そのためにわざわざ企業に賃上げを要求した。政府が直接企業に賃上げを要求するなどと言うことは、とても先進国では考えられないことだ。社会常識では考えられないことをするほどに政府は、インフレに結び付く消費を促したかった。しかし、そんな政府が非正規雇用の適応職種を拡大させてもいる。前世紀末から、先進国の経済成長率は鈍化してしまった。先進各国の経済成長の指標である国民総生産GDPに占める消費は50%を超える。その消費を支えるのが賃金である。労働分配率の低下は明らかに消費の低下に結び付く。賃金が低迷するため、日本や米国では貯蓄率さえ低下している。GDPの構成要素には企業投資も含まれるが、企業は、新規分野への投資よりも、企業買収を選ぶようになり、旧来のような投資は減少傾向にある。2020年代はAI人工知能やロボットの普及時代になるだろう。そうなると、オーター教授の言う中間レベルの人だけでなく、未熟練労働者への需要も減少して行くだろう。中国などではすでに無人のコンビニが登場している。それがスーパーに拡大するのも時間の問題だろう。
今日も職場の駐車場裏の山に4頭の鹿が来ていた