釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

「核の傘」と言う幻想

2016-08-22 19:12:53 | 社会
昨日、ジャーナリストのむのたけじ氏が101歳で亡くなった。戦争中、政府に協力する形で報道し続けた新聞社を敗戦を機に退社した。出身地の秋田県横手市へ戻って、小さな新聞で、戦争反対と民主主義の立場から、批判を続けることで贖罪とされた。「「どんな悪い平和でもいい戦争に勝る。」との自説を持たれていた。安倍政権の憲法改正への動きにも批判的で、憲法9条の大切さをを訴えられていた。しかし、今や国内では戦争の出来る国として、着々と法整備が進められ、軍隊である自衛隊の強化も行われている。北朝鮮や中国の脅威がメディアやネットで強調され、日本は対米従属の立場から、日米同盟にしがみつく。原爆が投下された広島では首相自ら核廃絶を口にしながら、米国の核の傘を拠り所としている。核を持たない国々の多くが今月上旬にジュネーブで開催された国連核軍縮作業部会で、核兵器禁止条約の制定を求めたが、日本は米国による核の傘を頼みに、時期尚早として棄権している。戦争の兵器は過去の歴史を見ても、競争に際限がなく、軍縮こそが戦争を避ける道であることを示している。まして、核兵器ともなると、国の滅亡をも招きかねない。米国の識者はそのことを十分に理解していた。米国のヘンリー・キッシンジャー元国務長官はすでに1958年の時点で、米ソの対立の中で、「全面戦争という破局に直面したとき、ヨーロッパといえども、全面戦争に値すると誰が確信しうるか。米国大統領は西ヨーロッパと米国の都市五〇と引き替えにするだろうか。」と核戦争の無意味さを指摘しており、昨年3月には米国の国防総省にも影響を持つ国防大学の国家戦略研究所(INSS)が、「核による同盟国の拡大抑止が米国への大規模な攻撃を覚悟しなければならない」として、いわゆる「核の傘」への否定的な見方を示した。INSSのこの報告書は「米日同盟=防衛協力指(ガイドライン)調査」と名付けられている。北朝鮮だけでなく、中国もすでに日本を標的としたミサイルを完成させている。日本が核攻撃をこれらの国から受けた場合、同盟国である米国が単純に北朝鮮や中国へ核攻撃で応戦してくれると考えることは短絡すぎるのだ。米国は何よりも国益を優先する。米国自体が核攻撃を受けるようなことにはならないようにすることが優先されるだろう。もはや「核の傘」と言う発想自体が幻想である。核保有国に対して核軍縮を求めることが唯一の「滅亡」から逃れる道だ。核は通常兵器とは全く異なる。現代では核攻撃は自滅の道である。そのことは実は誰もがすでに認識していることでもある。にもかかわらず、「核の傘」を口にするのはもはや幻想以外の何ものでもないだろう。
木槿