釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

経団連会長

2014-06-20 19:59:50 | 社会
今月初め、米倉弘昌氏(住友化学会長)に替わって榊原定征東レ会長が経団連会長に就任した。経団連会長は従来「財界総理」と言われたほどに戦後の日本では重要な役割を果たして来た。しかし、10年近く前から経団連そのものが「おねだり経団連」の異名をとるようになった。経団連は個別企業の政治献金をやめ、経団連として集約した上で、献金をすることで、発言力を維持していたが、2009年の政権交替を機に2010年より30億に上る政治献金を取りやめていた。これもあって、一層、政治への発言力の低下が進んだ。そのため、榊原新会長は就任早々、政治献金への関与を復活させる意向を示した。日本では1994年に政党助成法が成立し、要件を満たした政党へは毎年国から政党交付金が支給されている。2012年には総額で320億円と言う世界でも最も多い交付金が支給されている。近年では第一党は毎年170億前後を受け取っている。こうした交付金により、政治家は経済界への依存を弱めていることは確かだ。しかし、現在の経団連の弱体化は政治献金に要因があるのではない。今や、国内総生産(GDP)のうち、製造業の比率は18%であり、卸・小売業の15%、サービス業に至っては20%になっている。5月30日に公表された総務省統計局の労働力調査によれば、就業者数でも総数6338万人に対し、製造業は1080万人であり、卸・小売業は1037万人、サービス業では2797万人となっている。ただこの統計では製造業に派遣される労働者は派遣会社に所属する者として、サービス業に含まれてはいるが。それを考慮しても、もはや日本の産業構造は経団連会長職を製造業出身者から選ぶと言う体質自体が時代にそぐわないものとなっているのだ。IT大手の楽天の三木谷浩史会長兼社長はそうした経団連に見切りをつけて脱退している。そして、三木谷氏はIT(情報技術) 企業を中心に新経済連盟(新経連)を、また、小売業も国民生活産業・消費者団体連合会(生団連)を新たに結成ししている。経団連は製造業の窮状だけを訴え、還付金を期待して消費税の増税や法人税の引き下げ、労働法制の緩和を唱える。政府も製造業である輸出産業の保護のために円安を誘導し、多くの就業者を抱える卸・小売業、サービス業へは消費税の増税や輸入物価の上昇で圧迫を加えている。消費税も導入時には社会保障にあてると言われたが、導入後、社会保障費は毎年のように削減されて来ている。かえって、消費税による税収は法人税の引き下げによる税収減の補填にあてられている有様だ。経団連の「おねだり経団連」と揶揄されるまでの弱体化はまさに製造業自体の弱体化を反映している。かっての経団連会長であった石坂泰三(東芝)、土光敏夫(東芝)、豊田章一郎(トヨタ自動車)各氏はまさに「財界総理」として発言力を有していた。それは取りも直さず、自らの企業経営を政府に頼ることなく実行したからである。政府の保護を「おねだり」しなければならない企業経営はもはや経営が破綻していると言ってもいいだろう。現在の日本の悲劇は政府も財界も日本が変わったことを認識出来ていないことだ。製造業中心に高度経済成長をした過去の記憶の中で日本を見ているようだ。