釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

どこか幕末に似ている

2011-08-31 19:31:31 | 文化
今日は大型台風12号のせいか曇った蒸し暑い日になった。湿度が高い。釜石は今ボランティアの方々が来てくれているおかげと被災者の新規購入のために被災しなかった商店はむしろ震災以前より盛況のように見える。特に大型店は客の数が非常に多い。銀行なども所用で手続きに行くと1時間以上待たされる。被災が大きかった東北三県で初めて岩手県が今日ですべての避難所が閉鎖される。福島県も今日でほとんどが閉鎖されるようだが、宮城県だけはまだ143カ所の避難所に4,000人近く残っている。宮城県も仮設住宅は十分建設済みだと思うが、仮設住宅に入ると生計の一切を自立していかねばならず、その見通しのつかない人たちが多いのかも知れない。自衛隊も福島第一原発事故関連以外はすべて今日で撤退完了になる。釜石ではかなり前から無料の「復興釜石新聞」が全戸に定期的に配布されており、今日のその新聞にも平田地区にあるコミュニティ型仮設でのU先生たちの活動の一部が紹介されている。中小企業基盤整備機構が建設した天神地区の仮設住宅敷地内に併設された仮設店舗も市に引き渡された記事が出ている。岩手県内でも沿岸部では市の地形的な関係で釜石が被災地域の中でも最も復興が進んでいる。ようやく隣接する大槌町でも新しい町長が決り、これからは遅れていた復興事業も次第に挽回されて行くだろう。これからはじっくりと腰を落ち着けた長期の復興が主になって行くのだろう。日本は前世紀末以来内需中心の経済に変換して行かなければならないことが指摘されていたが、結局は輸出企業中心の相変わらずの政策がとられ続け、産業界も未来への展望を欠いたまま従来の経済体制を押し進めるばかりだった。米経済誌フォーブスのアジア版が報じたところではアジアの中小企業の業績で200社のランキングが発表されているが日本は年々数を減らし、ついに1社だけになってしまった。中国・香港がトップで65社がランク入りしており、インドの35社がそれに次ぐ。台湾、韓国、マレーシアなどがそれに次いで日本は14位となっている。これまで日本の大企業を支えて来たのは世界でも優秀だと言われて来た中小企業の存在であった。輸出のリーダーは自動車産業であったが、5年ぶりに発刊された定評ある徳大寺有恒氏の「間違いだらけのクルマ選び」を見ても国産車メーカーの戦略の遅れが見て取れる。まだまだ先の見えないEVにとらわれてヨーロッパのように小型車のガソリンエンジンの燃費の改善に大きな技術革新を導入する姿勢を怠っている。隣国中国はこの自動車の生産台数でも2009年に世界一となった。無論まだまだ中国の自動車技術は遅れてはいるが、それも時間の問題だろう。輸出中心の牽引車であった自動車産業が今後もう牽引車であることは期待出来ない。にもかかわらず過去20年間の間に優秀だと言われた中小企業を潰し、次世代を担う産業を育てることもしてこなかった。経済の伸びがなければ当然税収は減少して行かざるを得ない。巨額の財政赤字を抱える上に今回の震災や原発事故による巨額の支出がさらに財政を圧迫する。政治家が未来の展望を提示してそれに沿って官僚が最適な政策を立案するという本来の国家の機能が崩壊してしまっている。政治家も官僚も経済界も旧来の高度経済成長期と何ら変わらない手法にのみ依拠するためすべてが惰性で行われている。今の日本は幕末に連続した大地震が襲って幕府財政が困窮し維新に繋がった状況と重なって見えてくる。幕末の混乱期に若いリーダーがたくさん生まれたように果たして今の日本にそうした若いリーダーが生まれて来るのだろうか。幕末は福沢諭吉のように地方の下級武士の子弟たちがその差別に目覚め、改革へ結びついて行った。今の日本でも疲弊した地方の中からそうしたリーダーが現れるだろうか。
アメリカ芙蓉(草芙蓉) 通常の芙蓉より大きい