2006年の最後の最後に、最悪のニュースが入ってきた。
12月26日にバグダードの特別法廷で死刑判決が確定していたサッダーム・フセイン元イラク大統領の死刑が執行された、というニュースが配信されたのだ。
2003年3月の、アメリカ軍を主体とするイラク攻撃の開始以来姿を隠していたサッダーム・フセインは、同年11月にアメリカ軍に逮捕された。
その後、アメリカが支援して成立したシーア派主体の政府(フセインはスンニ派で、大統領時代にシーア派を弾圧した)による特別法定が、サッダーム・フセインに死刑を宣告したとされる。
サッダーム・フセインは、24年間の大統領在職中に反対勢力(多くはシーア派で、北部に住むクルド族も多く含まれる)に対して徹底した弾圧を行い、その怨恨が今日のイラクのテロをはじめとする不安定な状況の大きな原因になっている。
今回のサッダーム・フセインに対する刑の執行で、こうした怨恨が洗い流されるわけもなく、むしろ中東と長年に渡って関わってきた在野の団体や研究者などから
「死刑は状況を改善しない」とのメッセージが、サッダーム・フセインを拘束しているアメリカ政府に送られていた。
しかしながら、できれば早く〔イラク〕を手放したい(しかし利益は吸い上げたい)アメリカ政府は、現イラク政府意向を尊重して、サッダーム・フセインを引き渡したとされる。
『火事場泥棒』という言葉がある。
元来が水と油であるアルカーイダとサッダーム・フセインがイカにも共闘しているかのように主張し、各種の国際機関が調査をして「ない」と報告した〔大量破壊兵器〕を「巧妙に隠しているだけだ」と主張してイラク攻撃を開始したアメリカのブッシュ政権。
それはあたかも家庭内暴力を繰り返すオヤジを「排除する」ために、隣町の〔イラク家〕に火を点けたようなものではないか。
半焼し、オヤジが排除された〔イラク家〕の長男に「用心棒代」を月々請求しながら、長男が他の家族と傷付け合うのを見てみぬ振りをしている。
そんなアメリカの姿が目に浮かぶ。
長年に渡る怨恨というのは、もはや原因がどこにあるとか言うのは無意味である。
当事者たちの思考にあるのは、常に直前の被害であり、それに対して行った(あるいは行う)報復である。
サッダーム・フセインの死刑は、現在進行形の怨恨の連鎖に、またひとつ鎖を付け加えたに過ぎない。
今年も、残すところあと四時間となった。
こんな暗い話題で締め括りたくはなかったが、致し方あるまい。
お読みいただいている方々にとって面白いかどうかは別として、お読みいただいてありがとうございます。
三が日は休みます。
RSSリーダーに更新が表示されるかもしれませんが、カテゴリー整理以外のことはしません。
いただいたコメントへのお返事も遅れると思います。<既に遅れてますね。
よいお年を。
おやすみなさい。
12月26日にバグダードの特別法廷で死刑判決が確定していたサッダーム・フセイン元イラク大統領の死刑が執行された、というニュースが配信されたのだ。
2003年3月の、アメリカ軍を主体とするイラク攻撃の開始以来姿を隠していたサッダーム・フセインは、同年11月にアメリカ軍に逮捕された。
その後、アメリカが支援して成立したシーア派主体の政府(フセインはスンニ派で、大統領時代にシーア派を弾圧した)による特別法定が、サッダーム・フセインに死刑を宣告したとされる。
サッダーム・フセインは、24年間の大統領在職中に反対勢力(多くはシーア派で、北部に住むクルド族も多く含まれる)に対して徹底した弾圧を行い、その怨恨が今日のイラクのテロをはじめとする不安定な状況の大きな原因になっている。
今回のサッダーム・フセインに対する刑の執行で、こうした怨恨が洗い流されるわけもなく、むしろ中東と長年に渡って関わってきた在野の団体や研究者などから
「死刑は状況を改善しない」とのメッセージが、サッダーム・フセインを拘束しているアメリカ政府に送られていた。
しかしながら、できれば早く〔イラク〕を手放したい(しかし利益は吸い上げたい)アメリカ政府は、現イラク政府意向を尊重して、サッダーム・フセインを引き渡したとされる。
『火事場泥棒』という言葉がある。
元来が水と油であるアルカーイダとサッダーム・フセインがイカにも共闘しているかのように主張し、各種の国際機関が調査をして「ない」と報告した〔大量破壊兵器〕を「巧妙に隠しているだけだ」と主張してイラク攻撃を開始したアメリカのブッシュ政権。
それはあたかも家庭内暴力を繰り返すオヤジを「排除する」ために、隣町の〔イラク家〕に火を点けたようなものではないか。
半焼し、オヤジが排除された〔イラク家〕の長男に「用心棒代」を月々請求しながら、長男が他の家族と傷付け合うのを見てみぬ振りをしている。
そんなアメリカの姿が目に浮かぶ。
長年に渡る怨恨というのは、もはや原因がどこにあるとか言うのは無意味である。
当事者たちの思考にあるのは、常に直前の被害であり、それに対して行った(あるいは行う)報復である。
サッダーム・フセインの死刑は、現在進行形の怨恨の連鎖に、またひとつ鎖を付け加えたに過ぎない。
今年も、残すところあと四時間となった。
こんな暗い話題で締め括りたくはなかったが、致し方あるまい。
お読みいただいている方々にとって面白いかどうかは別として、お読みいただいてありがとうございます。
三が日は休みます。
RSSリーダーに更新が表示されるかもしれませんが、カテゴリー整理以外のことはしません。
いただいたコメントへのお返事も遅れると思います。<既に遅れてますね。
よいお年を。
おやすみなさい。