てんぷら屋に行くときは腹をすかして行って、親の敵にでも会ったように揚げるそばからかぶりつくようにして食べなきゃ
-池波正太郎「男の作法」-
なぜか?
「職人が困っちゃうんだよ」
ヒトコトで言って、「世の中ってのは、あれなんだから、お互い気配りを忘れちゃいけませんよ」ということだ。
むかし、NHKのアナウンサーだかが、そのものズバリのタイトルの本を出したが、オレなんか手にとろうという気すらおきなかった。
著者は、この本の巻頭にて
「この本の中で私が語っていることは、かつては《男の常識》とされていたことばかりです。しかし、それは所詮、
私の時代の常識であり、現代(いま)の男たちには実行不可能でありましょう」
と記している。
また、「文庫版の再刊にて」では、
「何としても忸怩たるおもいがするのは『男の作法』というタイトルだ」といい、
「どうか、年寄りの戯言(たわごと)とおもわれ、読んでいただきたい。そうすれば、この本は、さほど、おもしろくないこともない」と結んでいる。
時代の変遷を嘆くのではなく哀しみ、それを語りながら含羞をも忘れないのだ。