奥田英朗の『サウスバウンド』(角川書店刊・2005年)を読んだ。家事は子どもにバイトと称してやらせ、一日パジャマで、一日ふとんの中で読みふけった。今年読んだ本の中でベスト、久しぶりに心が躍るような小説だった。
かつて学生運動の伝説の闘志だった父の姿が、小学校6年生の息子の目から語られる。この父親があまりにカッコいい。夫にはしたくないが惚れてしまうカッコよさ。
「おれは楽園を求めている。ただそれだけだ」
「はは、楽園ね。いい大人が、そんなものあると思っているのか」
「求めないやつに、何を言ってもむだだ」
公安に対しての言葉。
「個人単位で考えられる人間だけが、本当の幸福と自由を手にできるんだ」
マスコミに対しての言葉。
そして、息子に対して言う言葉が心にしみる。
「卑怯な大人だけにはなるな。立場で生きるような大人にはなるな。これは違うと思ったらとことん戦え。人と違ってもいい。孤独を恐れるな。理解者は必ずいる」
型破りだけれど、それは世間の常識からずれているというだけで、人間としてはあまりに真っ当でまっすぐだ。
第一部の東京での生活では、そのまっすぐさがハタ迷惑としか息子の目には映らないが、第二部、沖縄に行ってからはそれが徐々に変わってくる。この父親に対する見方の変化が、オビのコピーにも書かれているように「ビルドゥングスロマン(成長小説)」なのだ。
この息子の成長した(大人になった)ときの小説が読みたい。この作者ならばきっと書いてくれるだろうと期待を込める。
環境問題に熱心な叔母に対し、小学校6年生の女の子が言う言葉が痛快だ。
「小学生にはうまく言えないけど、働かないことや、お金がないことや、出世しないことの言い訳にしている感じ。正義を振りかざせばみんな黙ると思ってる」
サウスバウンドは、南へ向かう、南まわりの、という意味である。
この小説を「面白い!」と感じた方は、ぜひなだれ込み研究所で語り合いましょう。
かつて学生運動の伝説の闘志だった父の姿が、小学校6年生の息子の目から語られる。この父親があまりにカッコいい。夫にはしたくないが惚れてしまうカッコよさ。
「おれは楽園を求めている。ただそれだけだ」
「はは、楽園ね。いい大人が、そんなものあると思っているのか」
「求めないやつに、何を言ってもむだだ」
公安に対しての言葉。
「個人単位で考えられる人間だけが、本当の幸福と自由を手にできるんだ」
マスコミに対しての言葉。
そして、息子に対して言う言葉が心にしみる。
「卑怯な大人だけにはなるな。立場で生きるような大人にはなるな。これは違うと思ったらとことん戦え。人と違ってもいい。孤独を恐れるな。理解者は必ずいる」
型破りだけれど、それは世間の常識からずれているというだけで、人間としてはあまりに真っ当でまっすぐだ。
第一部の東京での生活では、そのまっすぐさがハタ迷惑としか息子の目には映らないが、第二部、沖縄に行ってからはそれが徐々に変わってくる。この父親に対する見方の変化が、オビのコピーにも書かれているように「ビルドゥングスロマン(成長小説)」なのだ。
この息子の成長した(大人になった)ときの小説が読みたい。この作者ならばきっと書いてくれるだろうと期待を込める。
環境問題に熱心な叔母に対し、小学校6年生の女の子が言う言葉が痛快だ。
「小学生にはうまく言えないけど、働かないことや、お金がないことや、出世しないことの言い訳にしている感じ。正義を振りかざせばみんな黙ると思ってる」
サウスバウンドは、南へ向かう、南まわりの、という意味である。
この小説を「面白い!」と感じた方は、ぜひなだれ込み研究所で語り合いましょう。