昔の望遠鏡で見ています

昔の望遠鏡による天体観望と、その鏡景写真についてご紹介します

胎内星まつり2023

2023-08-28 | 日記


 胎内への道は、田んぼの中の道が良い。途中に見える青い空と白い雲も、綺麗だ。
 通行止めの林道があり、何度も迂回して着いた星まつり会場は車が一杯で、駐車できたところは少し離れた所だった。気になるのはメイン会場だ。急ぎ足で行ってみると、あまりの炎天下で人通りもまばらだったが、友人と会う。




 暑さに負けそうになるが、せっかく来たのだからと、店を二人で回ってみる。日差しを防ぐために、首に巻いていたタオルを頭に載せた。すると面白い部品を見つける。トミタの「31.7→24.5マイナスポイントAD」という、光路長をマイナスにすることのできる優れものだ。昔のドイツサイズの接眼鏡を使っていて、もう少し接眼鏡を押込めたらピントが出るのだがという経験があったので、一つ購入してみることにした。





 取付は、小型のビスで横から押さえる構造である。N社のオルソ7mmは、24.5スリーブの上側の黒色の部分がADに入り込み、マイナスポイントとなるのが判った。一方、P社のオルソにも取付けてみたが、5mmと9mmは入り込むべき部分が無いので、期待される性能は得られなかった。一方、同社のオルソ12mmとケルナー25mmは効果が得られたことから、利用する際には、その形状をよく見る必要がありそうだ

 会場には飲食コーナーもあった。涼をとるため、かき氷でも食べようかということになる。孫が食べるところは、隣でよく見ているかき氷だが、自分用に買うのは数十年ぶりである。店主も忙しいのか、シロップは適当にかけてくれという。味も何にしようか迷ったのだが、端にあった赤いイチゴにする。自由にどうぞというので、沢山かけた後に、甘すぎたらどうしようと少し後悔したのだが、結果的には大丈夫であった。
 テントの中に空いた席を見つけ、友人と向かい合わせに座って食べながら話をする。来年の日食観測に行くのだが、船でのコースにしようか迷っているという。望遠鏡は使えないが、晴れのエリアへ移動できるので、日食を見ることのできる確率が高くなるから良いかなと言っていた。自分は、上海に弾丸ツアーで見に行ったことはあるが、その後は見たいという情熱が小さくなってしまい、今回も見送ろうかと思っている。




 夕方には、少し涼しくなる。遠くにはカミナリ雲も見えたが、雨が降るとしてもだいぶ先のようだ。人通りも増えて、会場も賑やかになる。





 N社の高級双眼鏡を覗く。目で見える風景を、そのまま大きく明るくしただけの見え方で、実に自然で、双眼鏡を覗いているのか目で見ているのか判らなくなるくらい、光学系の存在を感じさせないものだった。
 友人は、T社のフリーストップで部分微動付き経緯台の掘り出し物を入手していた。写真三脚に取付可能ということを確認したかったのだろう、別の店の三脚に取付けさせてもらったのは良いのだが、なかなか外せなくなって困っていたのも、星まつりらしい風景だと思った。

星像を味わう

2023-07-18 | 天体望遠鏡


 梅雨の晴れ間に、天文台観察室の望遠鏡を利用できる機会があった。望遠鏡は、SDP125とTSA102が同架された赤道儀だ。接眼鏡は、XL40mmからHR3.4mmまでを持参した。短焦点側には、XW5mm,Hi-Or4mmも加えて、倍率による微妙な見え方の違いも確認しようと思った。中間の倍率は、Po24mmとDl9mmを使った。各接眼鏡の種類が異なるのは、これまでの望遠鏡遍歴とでも言うべきものによるものだ。

 当日の空は低空まで晴れ渡り、サソリはその全景を近郊の山々の上に現し、S字の曲線をたどると、尻尾の返しも見事であった。
 その日のトップバッターは、てんびん座ベータ星だ。全天でも珍しい緑色に見えると言われている星だが、いつも見ようと思っているうちに西に傾いてしまう地味な星だ。
 まず口径8cmと5cmのファインダーで見る。言われてみればだが、他の星に比べて緑っぽいような気がした。TSAの20倍でも、同じ傾向であった。当日の感想としては、思ったより緑色を感じたというところだろうか。このことについては、もっと空の暗いところでも、再度確認してみたい。

 次に、アンタレスの伴星を見てみた。5mm,4mm,3.4mmを使うも、はっきり把握することは出来なかった。高倍率の像の見え方としては、当日の空の条件下の自分の目では、5mmを使った時が最も見易かったが、10cmでは過剰倍率になる3.4mmも、実用になるのが判った。ディフラクションリングの影が繊細に美しく見えたのは3枚玉で、このことは印象に残っている。

 星雲星団は、40mmと24mmを使用した。椅子の高さを調節して、じっくり接眼鏡を覗く。この時が、一番の幸せを感じる時だ。
 SDPでは、ヘリコイドの操作性も手伝ってか、快適に綺麗な星々を見ることが出来た。一方のTSAは、何も足さない何も引かない見え方だと思った。

 施設を利用するのにも慣れ、望遠鏡の特性も判ってきたからであろうか、じっくりと星像を味わうことのできた一夜であった。

ある観望会

2023-06-19 | 日記
 所属している天文同好会の天体観望会が、開催された。場所は、高山の中腹にある駐車場だ。星を見る前に、”お茶会”も企画されている。

 最近は、手軽なので天文台観察室の望遠鏡ばかり利用しているのだが、街の中の限界も感じている。月惑星や二重星は良いのだが、星雲などは当然ながら良く見えない。今回は、久しぶりに行く暗い空のもとで、自分の小望遠鏡では、どの様に星雲星団が見えるのか、天文台の望遠鏡と比較してみようと思った。

 観望会当日は前日までの雨も上がり、初夏の陽気だ。暑くなってから、望遠鏡を準備するのは大変なので、朝の時分に行っておくことにした。まずL型伸縮三脚を、物置の奥から取り出す。接眼鏡類も、今晩見る天体を予想して、長焦点側をメインに取りそろえる。そして車の後部座席を収納して、望遠鏡一式分のスペースを確保しておいた。
 夕方前に用意した機材を積み込み、出発した。途中の道の駅で、食事を取ろうとしたが、終了時間の30分前なのに営業終了だった。それではと、近くの飲食店に行ってみたのだが、そちらも同じだった。客が少ないので、早く店を閉めるのだろう。帰ろうとしていると、店主がやってきて申し訳ないのでと、手打ちのうどん一袋をお土産にと差し出した。都会には無い人情を感じながら、再び目的地を目指した。
 途中のコンビニで軽食を取った後に、いよいよ山道に入る。最初は緩やかなカーブの続く運転しやすい道だ。所々には樹木のトンネルもあり、その緑と背景にある空の青を楽しみながら運転する。しばらく行くと、だんだん曲がりくねった山道になる。厳しい冬を耐えてきた低木の間からは、これまで通ってきた田んぼや街並みが望めるようになるが、そんな暇がないくらい、ハンドル操作が忙しい。道路脇にはチングルマだろうか、白い草花がたくさん風に揺れていた。

 目的の駐車場には一番乗りだったが、車から降りたとたんに、強風のお出向かえを受ける。その後にMさんらが到着したのだが、あまりにも強風がひどいので一つ下の駐車場へ移動することにする。
 駐車場では、キャンプ用のテーブルや椅子等が出されて、皆で歓談した。そこに、友人が到着する。数日前に星見の誘いを受けたのだが、丁度、今回の観望会が公共の場所で行われるので、同好会に所属していなくても一緒にどうかと話をしていたのである。テーブルを囲んでいた方々に、” 通りすがりの友人です ” と紹介すると、皆さん笑顔で迎えてくれ、同好の士を大切にするという気持ちが伝わってきた。
 それぞれが持ち寄った饅頭の箱やお菓子の袋が飛ばされ、遠くまで追いかけて回収するなど、ここでも風が止む気配が無かったので、更にもう一段下まで移動することになる。
 先導車の後に続くと、着いた先は山麓にある森の中で、天頂付近のみ開けた砂利敷きの広場であった。それでも北斗七星から伸びる春の大曲線や、昇ってくるベガ、そしてサソリの頭などが見える、まずまずのところであった。
 皆が集まると各々の場所で、望遠鏡を組み立て始める。先の友人とは隣同士に車を止め、四方山話をしながら作業を進めた。

 そこで大変なことに気が付く。接眼鏡の入ったアルミケースを忘れてきたのだ。これは、フイルムを入れないで手動ガイド撮影を行って以来の大失敗だ。
 手元には、先日行われたスターライトフェスティバルで入手したRPL25の接眼鏡一個のみ。さらに悪いことに、FC100の鏡筒は2インチの差込口だけの状態で、他に何も無かった。友人に話すと、2インチ天頂ミラーとアメリカンサイズADがあるから貸してくれるという。その間は、アメリカンサイズの天頂プリズムと接眼鏡を使っていると言ってくれた。EM11Temma3とスマホの同期にも手こずっていると、自身が使用しているKK社のNexus2の接続手順を基にアドバイスしてもらい、動くようになった。
 このようにして、無事に星々を覗くことが出来た時には、朝からの準備が徒労にならずにすみ、良かったと思った。来る予定になかった友人のおかげで、無事に星を見ることが出来たことに、自分の幸運を感じた。

 M81,82、M27等を見たのだが、視野の中には星雲の他に、沢山の星が見えているのが印象的だった。帰宅後に星雲星団ガイドブックを見ると、確かに星雲を取り囲む恒星についても、スケッチされていた。これまでの自分には、星雲の部分にのみ目が行って、その周辺は見えていなかったのだろうと思った。

 そのうちに、Iさんが回って来られたので友人を紹介すると、先のスターライトフェスティバルで一度会っているという。そんな偶然に驚きながら、楽しく話をさせて貰った。
 次の日の予定があるため、12時過ぎに会場を後にしたが、車では「What a wonderful world」をかけ、今日一日に起こった様々な事の余韻に浸りながら帰宅した














ニコンにTVの鏡筒バンド

2023-06-14 | 天体望遠鏡
 若い頃に「君は慎重な性格だな。」と、言われたことがある。このことは今にして思えば、もっと早く仕事をしろということだったのだろう。しかし、それは生まれつき持っているものなので、しょうがないし、むしろ先を予想し準備したことで、ひどい目に合わずに済んだことも、あったように思う。

 この性格は趣味の世界にも、形を変えて影響している。事前に準備してしまうのだ。具体的には、将来、欲しい望遠鏡を手にした際に使用するであろう部品を、先に入手したくなってしまう。

 TV社の短焦点の10cmは、評判の望遠鏡である。ユーザーのリポートで視野の端までピンポイントなどという文句を見ると、覗いてみたくなる。この大元をたどると、有名な彗星捜索家が「良質な広視野屈折が捜索に適している」と言ったことが、若かりし天キチに影響を与え、RFTへの憧れを持ったというところに行きつく。

 物置奥のダンボールの小箱を開けると、TV社の4インチ用鏡筒バンドが入っている。だいぶ前に、事前準備として中古品を購入していたものだ。そして今の状況といえば、置くところは無いし、円安で価格も高騰しているしで、残念ながら本体を入手することは難しくなっている。




 このバンドは、金属の削り出し感のある、しっかりした物だ。蝶番が無いぶん、保持力もあるのだろう。
 使わないのだったら処分しようかと思った時に、あることに気が付く。ニコンの8cmの鏡筒外径は、100mmだったなと。そう、4インチ=100.16mm≒100mmなのである。そして更に幸いなことに、底には35mmピッチで8mmボルト用の穴が加工してある。
 これらから、ニコンの8cm鏡筒を赤道儀に取り付ける際に、TVの鏡筒バンドが利用できるかもしれないと思った。ただ先の数字の精度等が不明なところが、心配でもある。そこで、実際に90S赤道儀に取り付けてみることにした。すると利用可能であり、格好もなかなか良いのが判った。




 使用してみると、残念ながら少しゆれが感じられた。よく見ると、鏡筒バンドの上下がぴったりと合っている。つまりネジを最後まで締めても、僅かに隙間があるのだろう。この対策として厚めのフェルトを挟んで、もう一度組み立ててみたい。また、鏡筒保持長さも、オリジナルが約100mmなのに対して約75mmと少々短いようだ。この影響についても、今後確認してみたいと思っている。




 もう一つ判ったことは、鏡筒を取り付ける際に長い鏡筒を押さえながら、上バンドを付属の小ねじで下バンドに締め付けるのが、とても難しいということだ。自分の使用環境では、バンドは鏡筒に取り付けたままにして、アリ型アリ溝を使用すべきなのだろう。

 憧れのRFTは雲の彼方だが、この鏡筒バンドでもう少し楽しむことにしよう。







新型プラネを双眼鏡で見る

2023-05-15 | 日記
 天文台のプラネタリウムが新しくなった。天の川も、17.5等までの一つ一つの星で映し出されているという。同好会の例会で、T元台長が双眼鏡の使用を奨めていたので出掛けてみた。




 コロナ対策も一段落し、検温器は無くなった。入口には、手指用の消毒液のみ設置されていた。




 投影が開始されると、周囲の景色がリアルに表現されているのに気が付く。星見に行く高山は南西に、子供を連れて行ったスキー場は北西に見えるのだが、空が茜色に染まっていく時に、いつも見回してしまうのも不思議なのである。暗くなって初めに投影されたのは、季節を先取りした夏の星空だ。さそり座のアンタレスの色も良く判るし、尻尾にかけてのS字の並びもはっきり見える。天の川も、従来より自然なのであろう。
 見とれてしまいそうになったのだが、慌てて膝の上の双眼鏡を持ち上げて覗く。すると天の川の中の星雲星団が、星の集まりとガスの集まりが区別できるくらいに細密に映し出されていた。暗黒星雲も、良く表現されているのが判る。実際の星空で、こんなに見えた事はないのだが、光害の無い星空ではこのように見えるのかもしれないと思った。

 面白いと思ったのは、1等星から6等星まで任意に消灯できる機能を紹介された時だ。6等星までの星々を全部消しても真っ暗にはならず、天の川の部分は見えていた。「6等星までしか写っていない天体写真には、天の川は写らない。」のに「6等星までしか見えない肉眼で、なぜ天の川は見えるのか。」という逆説的な問いを思い出す。こういった星空の不思議さを説明するのにも、新しいプラネタリウムは役に立つのであろう。




 今回は、CF式の双眼鏡を持参したのだが、使う際はピント合わせに忙しかった。これは、視野を振るとドーム内壁との距離が変化するので、致し方ないのだろう。