町内のジャズ愛好会に誘われ、例会に時々参加させてもらっている。場所は集会所で、オーディオ機器は寄付されたという小型のものだ。続きの部屋を開け放し、一方の部屋にスピーカーをセットし、もう片方にあるソファに座って鑑賞している。皆さんマニアなのは当然なのだが、特に会長は中学生の時にジャズに目覚め、その後ずっとこの道一筋の人らしい。当然オーディオにも興味があったのだろう、新婚旅行に行った際に高級アンプを購入し、それを抱えて帰ってきたという話も聞いた。さぞ重かっただろうと思ったし、寄り道を奥さんに納得させたのも、大したものだと感心している。
毎回会長が、所蔵するものの中から二~三枚を持参し、紹介してくれる。ジャンルは陽気なものや、ボーカルの曲を主体にして、会員同士の話が弾むように気を使っているようだ。ある時に、どのような演奏家が好きなのかと問われたので、コルトレーンと答えてみる。すると、あまり好みではないのか、「いつも同じ様な演奏だ。」と批評する。「『至上の愛』を正座をして聞いている。」と少し冗談まじりに語ると、私の顔を見て少しうなずいたのが判った。
後日ポストにコルトレーンのCDが、モンクと一緒のものも含めて4枚ほど入れられていた。どうやら会長が、コレクションの中から貸してくれたらしい。添えられたメモには、コルトレーンが酒と薬のやりすぎで、マイルスから解雇された時にモンクに世話になったことや、レコード会社の業績アップのために『バラード』が作られたことなどが書かれていた。自分の所有しているCDと重なる演奏もあったが、初めて聞くものも多かった。特に惹かれたのは、『バラード デラックス版』の2枚目にある複数のテイクである。『GREENSLEEVES』の5種類の演奏は、何度も比較しながら聞いてしまった。テイクによっては、万人向けに演奏しようとしても、隠すことのできない所謂 ” 地の部分 ” が出ているところがあり、面白いと思った。返却時にこのことを伝えると、会長も「このアルバムは、2枚目だよ。」とのことだったので、どうやら同じことを行ったことがあるのだろう。
今回演奏の聞き比べを楽しんだのだが、考えてみれば天文愛好家が行っていることと対象が入れ替わっているだけなのかもしれない。具体的には、望遠鏡や接眼鏡の覗き比べが、それに相当する。
次の画像は、所有している25mm接眼鏡類である。覗き比べがしたくて、いつの間にか集めてしまったものである。ただどういう訳か、この焦点距離が多いのも不思議なのである。昔の望遠鏡では、普通に使うものの中では最も長焦点なので、使う頻度が高かったからかもしれない。
今回思いがけず、いつも行っている比較観望が、他の趣味に通じる一般的なことだと知ることができた。これで言い訳が出来るようになったので、この道を増々進んで行きたいと思う。