昔の望遠鏡で見ています

昔の望遠鏡による天体観望と、その鏡景写真についてご紹介します

路上の星 その2

2019-09-28 | 天体望遠鏡


 交差点で、ふと空を見上げると「HALF MOON BUILD.」の文字。よく通っていた道なのに、最近までちっとも気が付きませんでした。街中に、星にちなんだ名前は、まだまだあるようです。




 さて、ジャズ喫茶の「カウント」が、その近くにあります。スピーカーは、アルテックA5、アンプは確かマッキントッシュだったと思います。店の中では、皆さん静かに瞑想にふけりながら聴いています。耳と目の違いこそあれ、音楽と星見には、通じるものがあるような気がします。
 奥の壁には、カウントベーシーとオーナーが一緒の写真や、アートペッパーのLPアルバムに付いてきた青いプレート「1977 7-28 29 30」などが、飾られています。そして5~6人が座れるカウンターの端には、ステンドグラスの傘を持つ電気スタンドがあります。スピーカーの正面でなく、この元で雑誌を見ながらゆっくり過ごすのも良いものです。
 さて、私がこのようなカウンターを持つことができるのなら、置きたいのはこれです。




 五藤のポケット望遠鏡で、昭和一桁の製造だと思われます。金属部分は真鍮と鋳物で出来ていて、さらに鏡筒は革張りというレトロな雰囲気が漂う逸品です。口径は20mmですので、いわゆる”ベストオブタンスの上”よりも小型で、さしずめ”ベストオブ机の上”とでも呼べばよいのでしょうか。好きな望遠鏡を見ながら、音楽とお酒を楽しめたら最高です。

ランボオと天キチ

2019-09-22 | テレパック
 
 
 ヨーロッパでは短い夏が過ぎ、厳しい冬を迎えようとする中、ゆく季節を惜しむ詩が多く詠まれているようですが、私達天キチには、また別の視点があるように思います。確かに虫の音を聴いたり、明るい星が少ない秋の星空を見上げると、寂しさを感じるのは事実なのですが、私達はもうすぐ冬の星々が昇ってくるのを知っています。オリオンの勇姿やシリウスの輝きには、力強さを感じ、ある意味勇気づけられるようにも思います。

 小林秀雄は傷心した友人に、ランボオの『訣別』という詩を贈りました。それは、なにかこの視点に通じるように思えてなりません。
 
 “もう秋か。-それにしても、何故に、永遠の太陽を惜しむのか、俺達はきよらかな光の発見に心ざす身ではないのか、-季節の上に死滅する人々から遠く離れて。”(地獄の季節 ランボオ作 訳者 小林秀雄 岩波文庫)
 
 秋の東天に、冬の星々が昇ってくるのを見つけると、私達は毎年このような気持ちになるのではないでしょうか。いや、天キチはいつもランボオのいう”清らかな光”を、捜し続けているのかもしれませんね。

ウエイトは悲し

2019-09-14 | 天体望遠鏡
 



 
 天体望遠鏡の部品の中で、一番気を使われていないのは、ウエイトだと思います。他の部品は、防湿庫の中であるとか、ほこりのかぶらない場所とかに、大切に保管されているのに、良くて物入れの隅、普通は物置の床にごろごろと置かれているのが、多いのではないでしょうか。赤道儀のバランスを取るために必要にもかかわらず、「もっと軽いウエイトが欲しい」という人もいたりします?!二番目の画像は、左からニコン、五藤、タカハシが3列、五藤、タカハシが3列、最後がミザール(タカハシ互換)のウエイトです。




 そんな悲しい存在のウエイトの中で、私の一番のお気に入りは、タカハシD型赤道儀用ウエイトです。留めネジが、締めやすいクランプ状になっているのは、これだけです。この形状のものは、普及型のS型赤道儀には付かず、高級品のD型にのみ付属していました。天体写真を撮影するときには、動くと困るので赤道儀のクランプを、ある程度きつく締めるのは判りますが、ウエイトはふつう動きませんので、このクランプはデザインの一部なのでしょう。


 

 昔の天文ガイドに載っていたタカハシ65mm屈折赤道儀D型です。鏡筒径が直径77mmで、S型の68mmより太くなっています。セルはD型のは、ごつくて立派ですが、対物レンズは共に3枚玉セミアポで、直径65mmの焦点距離が1000mmですので、同じレンズを使用しているようです。全体的に、S型はスマートな印象ですが、D型はベアリングが入っているという先入観もあってか、精密機械という感じがします。