昔の望遠鏡で見ています

昔の望遠鏡による天体観望と、その鏡景写真についてご紹介します

ある観望会

2023-06-19 | 日記
 所属している天文同好会の天体観望会が、開催された。場所は、高山の中腹にある駐車場だ。星を見る前に、”お茶会”も企画されている。

 最近は、手軽なので天文台観察室の望遠鏡ばかり利用しているのだが、街の中の限界も感じている。月惑星や二重星は良いのだが、星雲などは当然ながら良く見えない。今回は、久しぶりに行く暗い空のもとで、自分の小望遠鏡では、どの様に星雲星団が見えるのか、天文台の望遠鏡と比較してみようと思った。

 観望会当日は前日までの雨も上がり、初夏の陽気だ。暑くなってから、望遠鏡を準備するのは大変なので、朝の時分に行っておくことにした。まずL型伸縮三脚を、物置の奥から取り出す。接眼鏡類も、今晩見る天体を予想して、長焦点側をメインに取りそろえる。そして車の後部座席を収納して、望遠鏡一式分のスペースを確保しておいた。
 夕方前に用意した機材を積み込み、出発した。途中の道の駅で、食事を取ろうとしたが、終了時間の30分前なのに営業終了だった。それではと、近くの飲食店に行ってみたのだが、そちらも同じだった。客が少ないので、早く店を閉めるのだろう。帰ろうとしていると、店主がやってきて申し訳ないのでと、手打ちのうどん一袋をお土産にと差し出した。都会には無い人情を感じながら、再び目的地を目指した。
 途中のコンビニで軽食を取った後に、いよいよ山道に入る。最初は緩やかなカーブの続く運転しやすい道だ。所々には樹木のトンネルもあり、その緑と背景にある空の青を楽しみながら運転する。しばらく行くと、だんだん曲がりくねった山道になる。厳しい冬を耐えてきた低木の間からは、これまで通ってきた田んぼや街並みが望めるようになるが、そんな暇がないくらい、ハンドル操作が忙しい。道路脇にはチングルマだろうか、白い草花がたくさん風に揺れていた。

 目的の駐車場には一番乗りだったが、車から降りたとたんに、強風のお出向かえを受ける。その後にMさんらが到着したのだが、あまりにも強風がひどいので一つ下の駐車場へ移動することにする。
 駐車場では、キャンプ用のテーブルや椅子等が出されて、皆で歓談した。そこに、友人が到着する。数日前に星見の誘いを受けたのだが、丁度、今回の観望会が公共の場所で行われるので、同好会に所属していなくても一緒にどうかと話をしていたのである。テーブルを囲んでいた方々に、” 通りすがりの友人です ” と紹介すると、皆さん笑顔で迎えてくれ、同好の士を大切にするという気持ちが伝わってきた。
 それぞれが持ち寄った饅頭の箱やお菓子の袋が飛ばされ、遠くまで追いかけて回収するなど、ここでも風が止む気配が無かったので、更にもう一段下まで移動することになる。
 先導車の後に続くと、着いた先は山麓にある森の中で、天頂付近のみ開けた砂利敷きの広場であった。それでも北斗七星から伸びる春の大曲線や、昇ってくるベガ、そしてサソリの頭などが見える、まずまずのところであった。
 皆が集まると各々の場所で、望遠鏡を組み立て始める。先の友人とは隣同士に車を止め、四方山話をしながら作業を進めた。

 そこで大変なことに気が付く。接眼鏡の入ったアルミケースを忘れてきたのだ。これは、フイルムを入れないで手動ガイド撮影を行って以来の大失敗だ。
 手元には、先日行われたスターライトフェスティバルで入手したRPL25の接眼鏡一個のみ。さらに悪いことに、FC100の鏡筒は2インチの差込口だけの状態で、他に何も無かった。友人に話すと、2インチ天頂ミラーとアメリカンサイズADがあるから貸してくれるという。その間は、アメリカンサイズの天頂プリズムと接眼鏡を使っていると言ってくれた。EM11Temma3とスマホの同期にも手こずっていると、自身が使用しているKK社のNexus2の接続手順を基にアドバイスしてもらい、動くようになった。
 このようにして、無事に星々を覗くことが出来た時には、朝からの準備が徒労にならずにすみ、良かったと思った。来る予定になかった友人のおかげで、無事に星を見ることが出来たことに、自分の幸運を感じた。

 M81,82、M27等を見たのだが、視野の中には星雲の他に、沢山の星が見えているのが印象的だった。帰宅後に星雲星団ガイドブックを見ると、確かに星雲を取り囲む恒星についても、スケッチされていた。これまでの自分には、星雲の部分にのみ目が行って、その周辺は見えていなかったのだろうと思った。

 そのうちに、Iさんが回って来られたので友人を紹介すると、先のスターライトフェスティバルで一度会っているという。そんな偶然に驚きながら、楽しく話をさせて貰った。
 次の日の予定があるため、12時過ぎに会場を後にしたが、車では「What a wonderful world」をかけ、今日一日に起こった様々な事の余韻に浸りながら帰宅した