昔の望遠鏡で見ています

昔の望遠鏡による天体観望と、その鏡景写真についてご紹介します

比較する楽しみ

2023-12-28 | 日記
 町内のジャズ愛好会に誘われ、例会に時々参加させてもらっている。場所は集会所で、オーディオ機器は寄付されたという小型のものだ。続きの部屋を開け放し、一方の部屋にスピーカーをセットし、もう片方にあるソファに座って鑑賞している。皆さんマニアなのは当然なのだが、特に会長は中学生の時にジャズに目覚め、その後ずっとこの道一筋の人らしい。当然オーディオにも興味があったのだろう、新婚旅行に行った際に高級アンプを購入し、それを抱えて帰ってきたという話も聞いた。さぞ重かっただろうと思ったし、寄り道を奥さんに納得させたのも、大したものだと感心している。
 毎回会長が、所蔵するものの中から二~三枚を持参し、紹介してくれる。ジャンルは陽気なものや、ボーカルの曲を主体にして、会員同士の話が弾むように気を使っているようだ。ある時に、どのような演奏家が好きなのかと問われたので、コルトレーンと答えてみる。すると、あまり好みではないのか、「いつも同じ様な演奏だ。」と批評する。「『至上の愛』を正座をして聞いている。」と少し冗談まじりに語ると、私の顔を見て少しうなずいたのが判った。

 後日ポストにコルトレーンのCDが、モンクと一緒のものも含めて4枚ほど入れられていた。どうやら会長が、コレクションの中から貸してくれたらしい。添えられたメモには、コルトレーンが酒と薬のやりすぎで、マイルスから解雇された時にモンクに世話になったことや、レコード会社の業績アップのために『バラード』が作られたことなどが書かれていた。自分の所有しているCDと重なる演奏もあったが、初めて聞くものも多かった。特に惹かれたのは、『バラード デラックス版』の2枚目にある複数のテイクである。『GREENSLEEVES』の5種類の演奏は、何度も比較しながら聞いてしまった。テイクによっては、万人向けに演奏しようとしても、隠すことのできない所謂 ” 地の部分 ” が出ているところがあり、面白いと思った。返却時にこのことを伝えると、会長も「このアルバムは、2枚目だよ。」とのことだったので、どうやら同じことを行ったことがあるのだろう。

 今回演奏の聞き比べを楽しんだのだが、考えてみれば天文愛好家が行っていることと対象が入れ替わっているだけなのかもしれない。具体的には、望遠鏡や接眼鏡の覗き比べが、それに相当する。
 次の画像は、所有している25mm接眼鏡類である。覗き比べがしたくて、いつの間にか集めてしまったものである。ただどういう訳か、この焦点距離が多いのも不思議なのである。昔の望遠鏡では、普通に使うものの中では最も長焦点なので、使う頻度が高かったからかもしれない。



 今回思いがけず、いつも行っている比較観望が、他の趣味に通じる一般的なことだと知ることができた。これで言い訳が出来るようになったので、この道を増々進んで行きたいと思う。














秋の日の星見

2023-12-01 | 天体望遠鏡
 とある秋の日に新たな鏡筒を試すべく、山岳道路にある駐車場を目指した。平野部では青空が広がっていたが、高度が揚がるにつれて徐々に雲が増え、ついには一面の曇り空になってしまう。それでも天候の回復を期待して、望遠鏡を組み立てた。
 持ってきたのは、大型のティーガル経緯台とTSA102である。そこからは、平野部に広がる市街地や田園地帯に加えて、その先の大海原も望むことが出来る。鏡筒を水平にし接眼鏡を覗くと、海に浮かぶタンカーや貨物船、そしてその先にある半島部の山並みも見えた。ゆっくり望遠鏡で景色を見ることは、街中ではとてもできる事ではないのだが、ここでは誰に気兼ねをすることもない。こうやって望遠鏡を覗いて感じる楽しさは、最近の電子観望では得ることのできない独特なものなのだと思う。

 辺りが暗くなっても、一向に晴れる気配が無いので、山頂なら雲抜けしているのではないかと移動することにした。無人の料金所付近まで来ると完全に雲の中で、車のライトも二~三十数m先までしか届かない。真っ白な世界を、先を凝視しながら運転していくと、路面を流れる霧の切れ間が徐々に大きくなり、山頂に着く頃には遂に星々が現れる。
 広い駐車場には数台の車が停まっていて、若い人たちの声が聞こえる。おそらく、夜景を見に来たのだろう。周囲を見回すと、登ってきたのと反対の風下の方向は晴れており、山麓に広がる家々の明かりを望むことができた。肝心の星の方は天頂を超える雲もあり、望遠鏡を出すまでの空ではなかった。

 ここまで来たのだからと、風下にあるリフト発着所まで行ってみることにした。車で10分程度走っただろうか、到着した駐車場は山頂方向は視界が遮られるが、南には隣県の街の明かりも見渡すことができる、雲の影響も殆ど無いところだった。



 改めて望遠鏡を組み立てて、天の川の方向に向けてみた。月が明るくて見え方は程々だったが、見えただけ良しとしようと思った。フラットナーの効果も調べてみたが、今一つはっきりしなかった。後日判ったのだが、フラットナー以降のフランジバックには最適値があるにも拘らず、今回はピントが合うのをいいことに、より短いところに接眼鏡をセットしてしまったので、充分効果を発揮できなかったのかもしれない。




 ティーガル経緯台であるが、10cmF8鏡筒と言えど微動ハンドルまでの距離が結構あるので、フレキが有れば良いと感じた。








ある星祭りにて

2023-11-02 | 日記
 会場は高原にあるホテルで、周囲を沢山の白樺で囲まれている。その葉は色づき、落葉は芝生の上に茶色の絨毯のように広がっていた。建物は、石積の外壁に木製の窓柵をしつらえた年季を感じる造りで、風景に溶け込んでいる。エントランスを入ると、ハロウィンの飾り付けの最中であった。かぼちゃ頭の人形の後ろの壁には、WELCOMEの文字と色とりどりの風船に加え、星形の色紙も飾り付けられていた。何気なく眺めていると、オリオンの三ツ星と思しき並びが作られているのが判り、少し嬉しくなる。

 部屋に荷物を置き、祭り会場に向かう。今年は、ホテル裏手を下った所にあるスキー場のレストハウスが、メイン会場である。そこまでの道は結構な坂道で、戻ってくる人を見ると、息を切らしているのが判る位であった。星祭りでは、仲間と一杯飲んだりする事もあるものだが、そんな時に行き来するのは止めた方が良さそうなところだった。
 急いた気持ちを抑えつつ下っていくと、やがてお目当ての所だ。左側に草地、右側に建物が見えてくる。道路脇には、テントを建て望遠鏡を設置している人もいるようだ。会場に入ると、柱の少ない大きな空間になっていて、真ん中にイスとテーブルが並べられ、周囲にメーカー等のブースが設けられていた。思いの外、沢山の人が居るのに驚く。新たな掘り出し物が無いかと、今日二度目の訪問だという会話も聞こえ、皆さんの活力を感じる。自分はというと、目当ての物があるわけでもないので、ゆっくり辺りを回ってみることにした。すると昨年、誤って所有していた物と同じ焦点距離の接眼鏡を購入してしまったP社が、今年も出店していた。そこで最近気になっていた、新旧40mmの接眼鏡について周辺像の違いはあるのかと聞くと、設計の内容は良く判らないという。少々がっかりしながら、別のブースを見ていると、P社の別のスタッフの人が、今回両方持ってきているので、晴れれば実際に望遠鏡に取付けて見比べられると、わざわざ教えに来てくれた。




 天気予報は良い方に外れ、暗くなると雲は多めながら星が出てきた。改めてP社のブースを訪ねてみると、150SDPを据え付けて星を見ている最中であった。先の話をすると、憶えていてくれて、実際に見比べさせてくれた。対象は見慣れたベガだ。赤道儀はMS4型だったが、ファインダーを使用して導入する際に、赤緯クランプまで手が届かないようで、他の人に締めてもらっていたのは、皆同じだと思った。150SDPのヘリコイドは、天文台の125SDPと同じで、操作しやすい高級な造りだと感じながら、ピントを合わせる。その後に、電動による微動のボタンを押して、中央から端の方に星を動かして、像の見え方を確認させてもらった。中腰のちょい見なので厳密な比較ではないが、新しいものの方が明るく、中央部の星は良く見えていると感じた一方、周辺像の崩れは形状の違いこそあれ、認められるようであった。

 新しいものは改良されたものだと判ったのは良かったのだが、実は今回の一番の収穫は、これまで古い40mmの接眼鏡を使用すると、自分の目の収差で星が点にならないと思っていたのが、今回の組合せで、きちんと点に見えると判ったことである。目が悪くなかった事が判り喜んだ反面、自分の使用している光学系に問題があるのかもしれないということに、少々ショックを受けた。

 次に行ったのは、ホテル脇の駐車場で観望サイトとされたところである。初日で数は少なかったが、いくつかの望遠鏡が据付られ、月惑星を見せてもらうことが出来た。いろいろ話をしながら望遠鏡を覗くのは、実に楽しいものであった。
 木星を観望していた時である。アポで上下に赤青の着色が見えたので、大気分散だと思ったのだが、その隣の反射では認められなかったのが不思議であった。倍率に大きな違いは無かったようだし、見た時刻もほぼ同じなので対象の高度にも違いは無かった。シンチレーションや、反射鏡の温度順応が影響しているのかな等と、今は想像している。









地元の天文講演会

2023-10-16 | 日記
 町内会では毎年、秋に文化祭を催している。従来は、屋内ホールでの住人によるコーラスや楽器演奏、屋外でのボランティアによる焼きそば等の模擬店が主体であった。しかし今年は4年ぶりだし、原点に帰って講演会を行ったらどうだろうかという声がでる。それでは演目は何が良いだろうかと、話合いが持たれたので、星の話を提案してみた。空が澄んで星が綺麗に見える季節になってきたので、時節柄も良いのではと、賛同を頂く。
 講師は、地域にお住いの天文学者にお願いすることにし、地域住民や小中学生向けに講演頂きたいと依頼すると、快く引受けて頂いた。題目も悩んだのだが、「宇宙を巡る - 太陽系から宇宙の果てまで - 」とした。

 この手の行事は、その日の天候が重要になる。大雨でも降ったら、模擬店の食材が無駄になりかねないし、何よりホールに来てくれる人も少なくなる。だいぶ前から天気予報を気にしていたのだが、当初は雨の予想だったのが次に曇りとなり、最後は晴れになった時には、ほっとしたものだ。当日は気持ちの良い秋空が広がり、会場には多くの人が集まった。ホールの最前列には、眼鏡を掛けた理科少年らしき小学生も陣取っている。後で聞くと、会長は多くの子供たちにも是非聞いて欲しいと、地元の学校にもチラシを配ったとのことだった。
 プロジェクターに先生のパソコンを接続し、講演会の準備は完了だ。
 初めは地球の周りを回るスペースシャトルからスタートし、次は月のクレーターの話だ。昔は火山説が優勢だったが、現在は隕石の衝突で出来たと考えられていると説明した後に、老眼鏡を組み合わせた望遠鏡でも良く見えると、自身の経験について話された。その時に映し出されていた光学系を説明する画面の下に、小さな赤文字で「その時、ぼくはガリレオになった。」と書いてあるのに気が付いた。先生は天文学者だが、子供の頃は熱心な天文少年だったというから、自作の望遠鏡で初めて月を見た時の気持ちなのであろう。皆をニコリとさせる、印象的な言葉であった。

 楽しい時間は短く感じると言うが、講演時間は瞬く間に過ぎた。今回は、時間切れで太陽系を出たところまでとなったが、きっと子供たちには、宇宙の不思議や星の魅力を感じてもらえたのではないかと思っている。





My new old telescope

2023-09-21 | 天体望遠鏡


 新たに中古望遠鏡を入手した。この望遠鏡で見る恒星像は、シャープすぎて滲みも極小のためか、今まで見てきたものと比較して、なんとなく物足りなく感じる時がある。星まつりで、メーカーの人にそのことを話すと、少し戸惑ったような表情を見せた後に、そのような事を言う人は初めてだということと、上位機種は更に鋭い像を見せてくれると教えてくれた。
 更に鋭い像があるということには、少々驚いたのだが、その望遠鏡を手にしたいという気持ちは起こらなかった。このことは、身の程を知るようになったからか、或は、その鏡筒は非常に重いという印象をかねてから持っていたことが、そうさせたのかは、自分でも定かではない。
 入手した望遠鏡は、天文台観察室にあるものと同じ種類の鏡筒である。何度か覗いて、良い望遠鏡だと実感したことが、今回の入手に至る契機となった。
 届いた当日はあいにくの天気だったが、翌日は晴れ間が見え出したので、急いで恒星を望むことにした。光軸は合っているようで、美しい星像だと判った。ただ焦点内像は整っているのだが、外像はやや乱れている。このことは、天文台のものも同じ傾向のように記憶している。その程度は、自分の鏡筒の方が少ないように感じたが、温度順応などの条件の違いによるものなのかもしれない。
 星像は、視野の端に行くに従って徐々に乱れていくのだが、フラットナーを入れることによって改善されるという。システムチャートを見ると、この部品は後方に充分な光路長を持ち、2インチ天頂ミラーを併用できるようだ。このことにも、望遠鏡の入手に際して、少なからず背中を押されたと思っている。

 

 フラットナーである。MADE IN JAPAN のシールも珍しい。
 憧れだった全面ピンポイントの視野が得られるか、空の暗いところで見るのが楽しみである。