ぽぉぽぉたんのお部屋

季節の移ろい、道ばたの草花、美味しい食べ物、映画や友人のこと、想いがいっぱいの毎日をお話します

「アフター・ヤン」

2022-10-26 | 映画のお話
AIロボットのヤンが動かなくなった
そのメモリにはヤンだけのまなざしと、ある秘密が残されていた。
近未来を舞台に記憶を通して紡がれる、切なく美しい物語

坂本龍一がオリジナルテーマを手がける
音楽もAska Matsumiyaと日本人がかかわっている作品

茶葉を売る小さなお店を営むジェイクと妻のカイラ、中国系の養女ミカ
ミカのベビーシッターとして中古で買ったヤンはまるでお兄さんだ。
普段は静かにつつましく暮らす4人の家族が踊るダンスシーンが衝撃的だった。
家族4人が激しいビートに合わせて、振りをそえながら踊りまくる動の世界
そうしてヤンはある日突然、動かなくなる・・・

近未来の設定の作品なのだが不思議と無機質なイメージはなかった。
自然や植物が豊かで、家の中の雰囲気も現在と変わらない
遠くに見える建物の外観やトンネルの中を行くような乗り物での移動だけが
未来を思わせる感じだ。
丼でラーメンを食べるシーンには大きな湯飲みが添えてあり
東洋の静かなイメージがずっと続いて流れているようだ。
白黒写真を思わせるような少し暗い画面の雰囲気
チロチロと跳ねる光、長く伸びる光の線、静かで寂しげで安らかな優しい光たち
光と影の世界は懐かしい小津安二郎の作品を思い起こさせる

お湯を加えられた茶葉が揺らいでだんだんに浸透してゆく様は何を表していたのだろうか

ヤンはAIロボット、テクノ、そうして住人にはクローンもいて一緒に暮らしている。

ヤンの記憶の断片の積み重ねを見ていく中で見つけた若い女性
彼女の働く店に足しげく通っていたというヤンの秘密
クローンの彼女の大叔母が昔のヤンの家族だった・・・
ヤンの体内のメモリに蓄積された記録は
記憶のように温かくあふれ出す



「木津安二郎の映画作品に出てくる余白というのは、空虚ではなくとても満たされるものになっていると感じる」という
小津安二郎監督の信奉者としても知られる韓国系アメリカ人のコゴナダ監督

「欧米諸国では、余白や空白というものは“何もない”ということを意味していて、
それは怖いものとして、意味すら見いだせないものとされている、
だが、小津作品の余白というものには逆に満たされるものがあって、意味があるという点が面白い」と重ねている。

作品はとても中国的で、監督もヤンも韓国系なのに不思議な感じがした。
アイルランド人の夫役、インドネシア系アメリカ人のミカ役、
ジャマイカ系イギリス人の妻役と何んとも多国籍

何か大きな出来事があって、人々が未来らしくなく、
古き良き時代に回帰して暮らしているような雰囲気が現実的だった。




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ジュイップ | トップ | 満州園 五目あんかけ焼きそば »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画のお話」カテゴリの最新記事