大倉草紙

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【京都】 特別展覧会 japan 蒔絵 宮殿を飾る 東洋の燦めき (京都国立博物館)

2008年11月01日 12時10分46秒 | 美術館・博物館・記念館・資料館
10月18日(土)
当日の行程:(阪急・西京極駅) → 【2008年高校野球秋季近畿地区大会・PL学園-塔南(西京極野球場)】 → (京都市バス・西京極運動公園前~清水坂) → 【研出し蒔絵の印籠 ~色彩が織り成す小宇宙(ミクロコスモス)~(清水三年坂美術館)】【豊国神社】【方広寺】【特別展覧会 japan 蒔絵 宮殿を飾る 東洋の燦めき(京都国立博物館)】 


          
   

京都国立博物館にて、特別展覧会「japan 蒔絵 宮殿を飾る 東洋の燦めき」を観る。

鎖国の時代にも、蒔絵がヨーロッパに輸出されていたとは知らなかった。
展覧会は、ヨーロッパの王侯貴族のコレクションや日本国内の国宝や重要文化財など約280点を、次の7つの章に分けて展示している。
第1章 中世までの日本の蒔絵
第2章 西洋人が出会った蒔絵:高台寺蒔絵
第3章 大航海時代が生み出した蒔絵:南蛮漆器
第4章 絶対王政の宮殿を飾った蒔絵:紅毛漆器
第5章 蒔絵の流行と東洋趣味
第6章 王侯のコレクションと京の店先
第7章 そして万国博覧会


   
      マザラン公爵家の櫃(江戸時代 1640年ごろ)
      イギリス:ヴィクトリア&アルバート美術館所蔵

これでもか、これでもか、というように、次から次へと素晴らしい蒔絵の作品が現れる。
なかでもとりわけ目を引く1点は、マザラン公爵家の櫃である。
展示場の中央に、1点だけガラスケースに入って置かれていたので、ぐるぐる周りながら眺めた。
正面には、源氏物語の「賢木」「蓬生」「胡蝶」などの絵物語の断片がちりばめられている。
左側面には、源氏物語の「野分」の留守模様。
右側面は、曽我物語の「富士の巻狩」。
背面は、狩野派の竹虎図。
4年がかりで修復をして、一般公開は初めてだという。


   
      ファン・ディーメンの箱(江戸時代 1636~39年)
      イギリス:ヴィクトリア&アルバート美術館所蔵

これは、アントニオ・ファン・ディーメンの妻・マリアのために特注されたもの。
蓋の裏側には、「MARiA,UAN,DiEMEN」と蒔絵で描かれている。
贈り主は、日本駐在の商館員だといわれる。
次々と夫に先立たれ、マリアは3度の結婚をしたのだという。
ちなみにアントニオは2度目の夫。
さぞかし魅力的な女性だったのだろう。
チェーホフの『可愛い女』を思い出した。


   
   宝相華迦陵頻伽蒔絵そく(「土」偏に「塞」)冊子箱
   (国宝・延喜19年〔919〕) 京都:仁和寺所蔵

空海が唐から持ち帰った経典を入れるために、空海の死後、醍醐天皇が作らせたものだという。
時代を経ているのに、それを感じさせない美しさだった。


   
  梅蒔絵結び文形香合(江戸時代 17世紀末~18世紀初頭)
  イギリス:ヴィクトリア&アルバート美術館所蔵

   
蒔絵鶏形小重箱(江戸時代 17世紀末~18世紀初頭 1789年以前)
フランス:ヴェルサイユ宮殿美術館

こんな風に、おもしろい形のものも。
ほかにも、六角形のなかに菱形が3つ納まった「楼閣山水蒔絵六角沈箱」(江戸時代 17世紀末~18世紀初頭 1789年以前 フランス:ギメ東洋美術館所蔵)や、
扇形のなかに扇形が4つ納まった「楼閣山水蒔絵扇形脚付き沈箱」(江戸時代 17世紀末~18世紀初頭 1789年以前 フランス:ヴェルサイユ宮殿美術館)や、
栗鼠が描かれた蓋を開けると、中には7つの林檎が納められている「夕顔栗鼠蒔絵六角籠形沈箱」(江戸時代 17世紀末~18世紀初頭 1789年以前 フランス:ヴェルサイユ宮殿美術館)など、凝った作りのもの、可愛らしいものもある。

そして、展示の一番最後にあった「伊勢物語蒔絵十種香箱および明治天皇親書」(江戸~明治時代 19世紀後半 デンマーク王立博物館)は、実に素晴らしい贈りものだ。


平常展示も充実していた。
『宝誌和尚立像』(西往寺蔵・重要文化財)は、強烈だ。
宝誌和尚は、実在した中国南北朝時代の僧侶。
梁の武帝に命じられ、絵師が宝誌和尚の絵を描こうとすると、和尚の顔が割れて中から出てくる菩薩がどんどん変化して、描くことができなかったという話が残っている。
『白梅図』『茄子図』『月下桜図』『岩上猿図』と、長沢蘆雪の作品がたくさんあって、嬉しくなる。
『鳥獣人物戯画』も観たかったけれど、これは11月6日からの展示(乙巻)。
博物館は、いつ来ても、いつまでいても飽きない。

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