大倉草紙

旅の記録 食の記録 日々の記録

【大阪】 ガレとジャポニスム (サントリーミュージアム「天保山」)

2008年05月23日 20時42分56秒 | 美術館・博物館・記念館・資料館
     


 サントリーミュージアム天保山で、『ガレとジャポニスム』展を観る。

 最初に目にする作品、花器「鯉」は、葛飾北斎の『北斎漫画』13編「魚濫観世音」の鯉を写したもの。すぐ隣のガラスケースには北斎の描いた鯉もあり、見比べてみる。なるほどそっくりだ。しかし、まったく別のものに仕上がっているところがガレの素晴らしさであろう。花器「鯉」のみならず、ガレの作品では極めて高いレベルでの換骨奪胎が見られた。

 ガレにおけるジャポニスムは、視覚的効果を狙ったモチーフの借用にとどまらない。この展覧会では、そのことがよくわかる構成になっている。日本美術との結びつきが強くなるにつれ、ガレの関心は二次元的な追求から三次元的な追求へと移行する。陶器の質感、「触れて愛でる感覚」(※この展覧会は4章から構成されており、その第二章のタイトルは、「身を潜めた日本美術…西洋的表現との融合、触れて愛でる感覚」である)に重点を置いた作品も多く展示されていた。
 
 ガレの作品は、「生と死」というテーマをさまざまなモチーフで表現していて、興味をひかれた。たとえば、有名な作品だと、たった一晩開くだけでその傘が溶けてしまうというひとよ茸をモチーフとしたランプ「ひとよ茸」(1902年頃)。そのほかにも、表側はカどぎついほどのピンク色のカトレアが咲き誇り、裏側は茶色く変色し、萎れているその花弁を付した花器「カトレア」(1900年)。カトレアという豪華な花ゆえに、萎れていく姿は一層哀れなものに感じられる。
 
 いくつかの作品の表現では、言葉の力も借りている。作品の可能性を限定してしまうのではないだろうかと疑問を抱く。フランス語を解さない私にとっては、文字も模様も変わりはないのだが。

 花器「蜉蝣」(1889~1900年、サントリー美術館・菊地コレクション)のような涼やかな作品が気に入った。
 ガレ自身よりも、万博とジャポニスムに興味を持って出かけたのだが、美術館を出るときには、ガレをもっと知りたくなっていた。

          

 そんなわけで、本を買ってみる。