土の音(食育のグリーンノート&土の音工房)

「食と健康セミナー」(食養料理教室や講演会)の開催中。
「土の音工房」で、オカリナ製作販売・演奏・教室(初心者~)を主宰

土の詩

2022-02-10 | 食と健康





あめつちの便り「土の音」🌺
《金沢アンダンテ》中【土の詩】(哀しい大地の悲鳴) 

    土は私に温かくやさしい
    土はきびしく私を鞭打つ
    土の中に眠っている「歌」は
    激しく私の心をゆさぶる
    大地はすばらしい---

    これは交響楽や宗教音楽などの作曲家、火山久 (1925〜1997)先生の遺筆だ。遠くはスカンディナビア半島まで土を求め、縄文時代から世界に散見される土の笛を研究・制作。

音響学的にも洗練された楽器の域に高め、土の音だけのアンサンブル創設など画期的な世界を開いた稀有の音楽家としても知られる。心血を注いだ弟子に、オカリナ奏者の宗次郎など逸材が名を連ねる。

    ハンガリー内乱時、他国の軍事介入で多くの市民が殺されたのを悼んだコダーイ・ゾルタンは「死者のための小ミサ」を作曲。義憤にもえた火山先生も芸術家らと介入国の大使館に抗議するほどの行動派だった。

    経済成長に浮かれる日本の各地に公害問題が噴出した頃、長年編み重ねた土の音を「土の詩」(71年にレコード化)で世に問うた。

平和を願うパブロ・カザルスがチェロで弾いた「鳥の歌」などを土笛用にアレンジした火山先生の演奏は崇高な祈りにも似て、透明なまでに美しく哀しい大地の悲鳴のようだ。

    晩年イタリア在住の牧師、沢田高氏の計らいで土の音の楽団を率い海外演奏旅行をするなど、奥様の献身のもと心臓障害を押して活躍された。

    私が1990年ごろから仲間と始めた海洋汚染調査・清掃や星空を守り「光害」を防ぐ活動の中で出会った『国が海に消えていく』(助安由吉著) に、沢田牧師が世界温暖化防止会議に集う各国首脳に献ずる際の辞を見つけたのは偶然と思えない。

土の音との出会いもそうだ。機械音渦巻く街中にあって私の琴線にふと懐かしく澄んだ旋律が同調した瞬間、心にいつかの海の輝きが広がった。

「ピュイーッ」。はるかなる太平洋に漂う小舟の板を通して聞こえてきた哀愁を誘いつつも明るく愛嬌たっぷりの音、見ると群れをなすイルカたち。生き物同士の連帯の声のように。

街中の旋律が土の音だと知るのは後のこと。思いがけず誕生日に贈られた土笛に息を入れた時、土の音は私の胸の奥で木霊するものを共振させ動かした。

    工房に遊びに来る子どもたちに土笛を作ってあげるとあたりはにぎやかなお祭りに一変、鳥たちも合唱する。 

土ひと握りが奏でる温かいハーモニーが魂を揺さぶる可能性を求め、ご恩を頂いた土の中の火山先生や心ある生きものと、私も大地への感謝を謳いつづけたい。(ナチュラリスト)
    (題字は五木寛之氏、朝日新聞2003.8.28)




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