毎日新聞 2014年06月15日 08時16分(最終更新 06月15日 11時15分)
「燃費が悪くなる」と敬遠されていた「ターボチャージャー搭載車(ターボ車)」が「復権」している。欧州の自動車メーカーが、エンジンを小型化し、不足した馬力をターボ技術で補う「ダウンサイジング」という手法で燃費改善に成功したからだ。燃費向上にしのぎを削る国内メーカーも相次いで市場に投入する。【山口知】
ターボチャージャーは、国内では日産自動車が1979年、「セドリック」「グロリア」に初搭載した。「馬力が強い」「走り心地が良い」と人気を集め、ホンダ「シティ」やトヨタ自動車「ソアラ」なども続々採用。バブル景気も追い風に「ターボブーム」が起こった。
ただ当時のターボ付きエンジンは、圧縮した空気が高温になり、「異常燃焼(ノッキング)」を起こしやすいという弱点があった。ノッキングは燃費悪化の原因。バブル崩壊や省エネ志向、環境意識の高まりで需要が激減し、90年代に入ってターボ車はほとんど姿を消した。
流れが変わったのは2005年以降。エンジン技術の向上でノッキングが解消されたことから、独フォルクスワーゲン(VW)などの欧州メーカーが、ターボを「ダウンサイジング」の切り札として使い始めた。たとえば、排気量1400ccのターボ車は、2000ccの非ターボ車と同等の出力がありながら燃費は2割ほど良い。ターボ車は「低燃費車」に様変わりした。
国内でもターボ車は 息を吹き返そうとしている。富士重工業は今月発売するスポーツワゴン「レヴォーグ」で、ターボを採用。前身の「レガシィツーリングワゴン」と同等の馬力 で、燃費を約2割改善させた。日産も今月、スカイラインとしては13年ぶりにターボ搭載モデルを発売した。2000ccで2500cc並みの馬力があると いう。両社は「ダウンサイジングによる低燃費化」を前面に打ち出し、「第2のターボブーム」を起こしたい考えだ。
低燃費といえば、エンジンと電気モーターを組み合わせるハイブリッド車(HV)が代表格だが、高度な技 術が必要で価格は割高。このため、新興国などでは「HVよりもターボによる燃費改善が中心になる」(住商アビーム自動車総合研究所の宋太賢ストラテジス ト)とみられている。
三菱重工業は、13年のターボ車(3・5トン以下)の世界販売台数が4年前の8割増に当たる2400万 台だったと推計。20年には4600万台になるとみて、米国での工場新設などを進める。国内向けでシェア6割を占めるIHIも、16年度までに生産能力を 現状より3割増やす計画だ。宋さんは「20年は世界販売の4割、国内でも3~4割がターボ車になる」と予測する。
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