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安倍談話は“先の大戦への反省”で

2015-01-08 22:40:21 | 政治・社会・経済問題
田中秀征の政権ウォッチ
>世界からの誤解を解けるか

DIAMOND online 2015年1月8日

■田中秀征:元経済企画庁長官、福山大学客員教授

戦後70年の節目の年、2015年が明けた。
 安倍晋三首相は1月5日の年頭会見で“戦後70年”に触れ、内外に向けて新たに安倍談話を発出する意欲を示した。
 戦後50年の「村山談話」、戦後60年の小泉談話に続く、3度目の歴史認識に関する首相談話となる。
 記者会見で安倍首相は本年8月の談話の基調を語っている。
 それによると、「村山談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を引き継いでいく」と明言。さらに「戦後70年の節目を迎え、安倍政権として、先の大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み」と語った上で、「今後アジア太平洋地域や世界のためにさらにどのような貢献を果たしていくのか」を談話に盛り込むことを強調した。要するに、談話を通じて安倍流の積極的平和主義を発信するというのだ。
 戦後70年はもちろん日本だけではなく、世界にとっても第二次世界大戦が終わってから70年を経た重要な年である。
 だから本年は世界でさまざまな記念行事が予定されているが、戦後に生まれ変わった旧枢軸国(日本、ドイツ、イタリア)などに配慮してそれなりに抑制されたものになるはずだ。
 だが、中国だけはどうやら別のようである。このときとばかり“戦後70年”を政治的に利用するつもりのように見える。
戦後70年の今こそ警戒すべき
中国の覇権主義
 中国、特に習近平国家主席は、戦後の世界秩序の形成過程に強いこだわりを持っている。
 中国では戦後の世界秩序(ヤルタ体制とも呼ばれる)は、戦勝国である国連の常任理事国5ヵ国による日本など旧枢軸国を封じ込める世界機構という認識が強すぎる。国連創設当時ならともかく、戦争に参加しなかった国や植民地から独立した国々が大勢を占める現在ではもはやそんな単純な構図にはなっていない。それに当時の中国は国民党政権であって現在の共産党政権でもなかった。
 中国は、声高に米国とは連合国としての同志であることを強調し、日本は共通の敵国であったことを想起させることに努めている。
 日中に亀裂を生み、さらに日米に亀裂を生むことに夢中になっている印象だ。
 日本は、安倍政権はこんな中国の意図にわざわざ口実を与えるべきではない。米国も当然同じような気持ちで心配している。
8月の安倍談話が
「集団的自衛権行使宣言」となる恐れも
 この点で、8月の安倍首相談話の「先の大戦への反省」は国際社会の誤解を解き、中国の覇権主義に水をかけるものと期待できよう。
 ただ、安倍首相の語る「積極的平和主義」は集団的自衛権行使と一体であろう。
 記者会見では「国際情勢が大きく激変する中で、国民の命と暮らしを守り抜くための新たな安全保障法制を整備する」として集団的自衛権行使に向かって進むことをあらためて語った。
 そうすると、8月の安倍談話は、世界に向かっての集団的自衛権の行使宣言と受け取られる恐れもある。そうなれば、国際社会は歓迎するというより戸惑いが先行することにもなりかねない。
 案の定というべきか。首相は総選挙での信任を拡大解釈している。
 集団的自衛権や原発再稼働問題についても「公約に掲げたことを実行していく責任を負っている」と断言。重要課題についての基本方針に国民が賛同したというのである。
 だが、本欄で指摘したように、安倍政権は4分の1の民意に支えられているに過ぎない。安倍流で言えば、それを「しっかりと」認識して必要な軌道修正をする必要があろう。


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