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社説:国保改革 経済弱者の医療守ろう

2015-01-10 09:32:31 | 医療と介護
毎日新聞 2015年01月09日 02時30分

 慢性的な赤字に陥っている国民健康保険(国保)について、政府は運営主体を市町村から都道府県へ移管し、計3400億円の公費を投入する改革案をまとめた。保険財政の弱い市町村を救済するためで、1961年の制度発足以来の大改革だ。後期高齢者の保険料軽減措置の縮小などとあわせて通常国会に関連法案を提出する。

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 無職や非正規雇用など収入の少ない人々が加入しているにもかかわらず、負担率は他の医療保険より重いのが国保だ。納付率は9割を下回っており、必要な医療が受けられない恐れのある困窮者は大勢いる。

 かつては農林水産業と自営業が加入者の約7割を占めていたが、2割を切るようになり、現在は無職と非正規雇用者が約8割を占める。1人当たりの所得は大企業の従業員らが加入する健保組合の半分以下だが、医療費は2倍を超える。医療費がかかる高齢者が多いためだ。

 国保には事業主負担がないため、加入者が保険料をすべて払わねばならず、家族の人数が多いほど負担も増える。また、保険料率は未納分を上乗せして算定されるため、未納者が増えるほど加入者1人当たりの保険料は重くなる。

 都道府県への移管で救われる市町村は多いが、給料からの源泉徴収ができないため保険料徴収は市町村が引き続き行う。高齢化や人口流出で800以上の自治体が将来は消滅の危機にあると言われており、いずれは徴収が困難になる自治体が続出する可能性がある。

 加入者の負担増と保険料徴収の困難さを改善するためには、非正規雇用者の健保組合や協会けんぽへの加入を進めるべきだ。事業主負担が増すことに反対する経営者は多いが、正社員に近い働き方をしているのに健保組合に加入できない人も多い。

 後期高齢者医療制度への各保険からの支援金を加入者の平均収入に応じて分担する「総報酬割り」が今回の医療保険改革で導入される。今でも支援金の多い健保組合の負担はさらに重くなる。多数の非正規雇用者の分を健保組合加入者が間接的に肩代わりするようなものだ。

 保険財政の安定や国民の公平感のために、雇用労働者は非正規であっても事業主負担のある保険に加入するのを原則とすべきだ。

 慢性疾患の予防が目的の特定健康診査・特定保健指導の実施率が低いのも国保の特徴だ。2013年から加入者の医療・介護情報を分析し、地域や疾患別の保健指導が可能になる「国保データベースシステム」の運用が始まっている。医療費抑制のためにも、きめ細かい保健指導で加入者の健康維持に努めるべきだ。














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