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一郎の従弟幸雄の恋

2015-07-06 20:13:06 | 創作欄

牛田一郎と従弟の幸雄は誕生日が1日違いであった。
歌人であった叔父の影響であろうか、高校生になってから2人は競うように短歌を作りだした。
短歌のレベルは残念ながら初心者のレベルの域に留まっていた。
師と仰ぐ人が身近にいたわけではないし、歌壇に残されている優れた歌人の歌集を読んでもいなかった。
ただ、指をおりながら5、7、5、7、7と言葉を並べて満足していた。
○ 夕闇の金木犀の香に想う君が面影文にどどめん
幸雄が下校途中の彼女と出会ったのは、材木町の街角であった。
秋は恋心が芽生えるような予感をさせる季節であった。
「一郎、俺、恋をした。一度、彼女のこと見てくれや」幸雄は高揚した気持ちを打ち明けた。
一郎は未だ恋いらしい恋の機会には巡り合っていなかったので、「羨ましいな、ユキが恋をしたんか。本気か」と確認した。
「出会って、不思議な気持ちになった。俺、彼女と結婚するよ」一郎の目は常になく真剣である。
「結婚、まだ早すぎるよ」一郎は呆れた。
「早くなんか、ないよ。姉やんは15歳で結婚した。俺は17歳、来年は18歳なるよ」一郎は語気を強めた。
「そうか、それではその彼女に1度会ってみよう」一郎は半信半疑であったが、どのような相手なのか興味も湧いてきた。
翌日、材木町で下校する沼田女子高等学校の生徒たちを2人は待っていた。
2人は沼田農業高校に通学していて、母親たちの母校の生徒に多少は親近感を抱いていた。
伯母の松子は沼田女子高等学校1期生、一郎の母は7期生、幸雄の母は5期生であった。
「おい、彼女が来たよ。3人連れの真ん中が彼女だよ」幸雄の声が高くなっていた。
一郎は幸雄が恋をした女子高生を認めた。
彼女の視線が幸雄に注がれていた。
彼女は笑顔になっていた。
だが、一郎は両側の女子高生と比べ彼女が見劣りすると思ったのだ。
面食いの一郎は右端の子を見て「何て可愛いのだ」と視線が釘付けとなっていた。
「一郎、彼女どうだ。可愛いだろう。気持ちも好きになれそうなんだ」
「あれが惚れた彼女か。そうなんだ」一郎は頷いたが拍子抜けがした。
幸雄は歌を添えて恋文を彼女に手渡した。
「これ、読んでくれや」幸雄は気持ちが高揚していた。
「ありがとう」彼女は恥じらいと多少の戸惑い期待感から笑顔を赤らめた。
彼女に気持ちが通じて幸雄は有頂天になった。
「こんなに、うまくいくんか」と幸雄は恋の勝利者の気分に染まっていく。
「後で読むからね」
姫木典子は渡された封筒を鞄に収めた。
2人は初めてのデートを楽しむように沼田城址へ向かって肩を並べ歩いて行く。

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実はこの創作は、午前11時ころ入力したが、何の間違いか消えてしまった。
さらに、パソコンがフリーズして復帰したのが午後6時である。
同じような文を再現した。
再現してからアップの段階でまたパソコンがフリーズする。
その間、囲碁、将棋で時間を潰す。













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