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ダン・ボーゲル「ジョセフ・スミス --- 預言者の素性」(英文)を読んで

2008-12-20 23:15:01 | モルモン教関連


本書はジョセフ・スミス生誕(1805年)200周年を記念して出版さ
れた何冊もの書籍の一冊で、リチャード・L・ブッシュマンの
「ジョセフ・スミス -- 荒削りの原石」(“Joseph Smith –
Rough Stone Rolling” 2005)と並んで双璧をなすものである。

ボーゲルのこの本は、モルモン書を19世紀の夥しい資料に照ら
して検証を試みた大部(本文557頁)の歴史的批評の書である。
ロバート・アンダーソンなど精神分析家の手法とは異なるが、
ジョセフ・スミスの生い立ちや財宝探しの活動がモルモン書に
反映していると見る点では共通している。ボーゲルもジョセフ・
スミスの心理的側面の分析をしばしば織り込んでいる。

結論を言えば、モルモン書はジョセフ・スミスの創作になるも
ので、ジョセフの置かれた境遇、家族内の人間関係、19世紀初
頭の社会情勢、キリスト教界への批判などが本文にまた行間に
反映されている、と主張する。聖書の偽典書が古代の預言者の
名を冠して著されているのと同様、モルモン書も偽典書に列す
るもので、書中に登場する数々の預言者の名を借りて当時の読
者に語りかけている、しかし、あくまで著者の意図はキリスト
教を改革・推進し、人々を救いに導こうとする善意に基づいて
いるという。

扱っている範囲は若い教会が漸くオハイオに向かおうとする1831
年までで、教会設立以前のジョセフ・スミス、モルモン書の成
立の過程、そしてモルモン書各部の批判的解説が主要な内容で
ある。真相を知ろうとする読者には、ジョセフ・スミスとモル
モン書の素性が明快に分かったと感じられるかもしれない、し
かし信じている教徒にとっては厳しい内容が続出し衝撃を受け
ることになるだろう。この書は、聖書に対して高等批評が与え
た影響に類似した影響をモルモン書の読者に与えるように思わ
れた。

D・マイケル・クインもジョセフ・スミスと魔術の関係を扱った
本を出しているが、ボーゲルの方が魔術に対して厳しい見方を
とっており、時日の確定などの点で多くの新しい資料に基づい
てクインの記述を批判している。ボーゲルのこの本の特徴は、
膨大な資料(著者自身が編纂した「初期モルモン関連文書」な
ど)をもとに大変詳細に照合の作業を行っているという点であ
る。なお、本書は2004年ジョン・ホイットマー歴史学会(「キ
リストの共同体」系)から最優秀書籍として、また2005年モル
モン歴史学会から最も優れた伝記として受賞している。

注 「初期モルモン関連文書」Dan Vogel, ed., “Early Mormon
Documents” 5 vols. Signature Books, 1996-2003.


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8 コメント

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ドグマ解体の先にあるものは (ワサッチ(徒手空拳ではない))
2008-12-24 13:13:35
>信じている教徒にとっては厳しい内容が続出し衝撃を受けることになるだろう。

聖書の高等批評に対してキリスト教徒がどのように取り組んだか(取り組んでいるか)豊富な先例に学ぼうとせっせと読書にいそしんでいます。(笑)

>D・マイケル・クインもジョセフ・スミスと魔術の関係を扱った

ついこの間この本を購入したのですが、その分厚さに読書欲も減退…面白そうなところだけ摘み食いしてみようかな(邪道かな)
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翻訳して下されば。 (オムナイ)
2009-01-23 17:54:22
購入したいです。(^^;
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大部すぎて・・ (NJ(本当に?))
2009-01-24 08:07:14
多分ペーパーバックが出ています。また、インターネットで中古が安く買えます。

今、私はボーゲル書と双璧をなすブッシュマンのJS伝記を読み始めています。

英語はボーゲルの方がずっと読みやすいです。ブッシュマンの方は語彙が豊富、少し骨が折れます。
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はい(^^) (オムナイ)
2009-01-24 22:17:03
>本当に?

ええ、本当に読みたいです。
ただし誰かが翻訳してくだされば(笑)

別にモルモン書創作説派に寝返る気は無いのですが、
多様な考え方は末日聖徒の本来の姿らしいですね。

http://www.nauvoo.com/library/japanese/the-problem-of-evil-in-fiction.html
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時間があればゆっくり読みたい (NJ(オリジナルは))
2009-01-26 08:15:27
上のサイト、行って見ました。フィクション、悪などのテーマが扱われていて興味がありましたが、誰が書いたのか、原題は何であったのか知りたいところです。長文の邦訳ですね。
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文章の作者は・・・ (トゥゲザー)
2009-01-26 11:44:30
SF作家のオルソン・スコット・カード(モルモン会員)の文章だということになっています。
ウソかホントかは保証できませんが。
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ありがとうございます。 (NJ(thanks))
2009-01-26 13:44:07
なるほど、考えられる線ですね。1980年というのが古い感じがしますが。時間があれば確認してみたいと思います。彼のコメントに注目したいところです。
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長文過ぎました。m(__)m (オムナイ)
2009-01-26 19:12:31
長文でしたね。失礼しました。
興味があったのは以下の箇所です。

私は最近『現代モルモニズムのルーツ Roots of Modern Mormonism』という題の本を読みました。人類学者である作者のマーク・レオンは注意深い公平な目で、私たちが 主張する事ではなく、私たちの実際の行動を観察しながら、アリゾナ東部のワードをいくつか研究しました。その見解はなかなかおもしろいものでした。

しかし、その見識の中の一つに、私は驚かされました。レオンはモルモンの教えは固い教義がとても少ない、つまり、モルモン教会内での信仰は大変幅があり、モルモン教徒は、神から明らかにされた全ての真理を持っていると納得しているのに、実はそれが、全体的に信じられている事を信じていないというのです。
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しかし、教会は時代が経つにつれて多様になるだけではありません。どの時代をとっても、多様な聖徒が見られます。この部屋の中にも、進化論は完全に福音と調和すると信じておられる善良な末日聖徒がいらっしゃる事と思います。そして、 進化論は聖典に全く反するものだと信じておられる、同じぐらい善良な聖徒がいらっしゃいます。

しかし、意見の相違は一般の末日聖徒間だけのものではありません。意見の相違は教会の最高幹部の間でも常に存在しました。たとえば、デイビッド・オー・マッケイは、地学的時間の原則を固く信じていました。ですから、BYUでのスピーチで生徒達に、地球が作られるのに費やされた何億年を含めて、沢山の事を勉強する様に勧めました。しかし、ジョセフ・フィールディング・スミス大管長は全く反対の意見を持っていました。 教会の大学であるBYUの、イヤリング・サイエンス・センターで教授がデイビッド・オー・マッケイを引用しながら、進化論を教える傍ら、道を挟んだ向かいにあるジョセフ・スミス・ビルディングでは、他の幹部の引用を控え壁にしながら、地球は6千年間の間で作られたと言う考えを教える光景に出くわすのは偶然ではありません。この不均等さは、実は公に知られています。ジョセフ・エフ・スミス大管長は今世紀のはじめに、どのような方法をとられたにせよ、神が地球と人間を創造されたという、正式な声明を出しました。私たちが、詳細について同意する必要はないのです。
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http://www.nauvoo.com/library/
こちらに翻訳されたリストがあります。

あとこちらも紹介の書籍と違った考えで興味深かったです。
http://www.nauvoo.com/library/japanese/bookofmormon.html
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