[閑話休題]
現在教会では福音の教義クラスで「教義と聖約」を読んでいる。
最近132章が終わった。永遠の結婚がテーマであるが、ずっ
と昔なら「一夫多妻」がテーマとして読まれたはずである。
現在でも来世では一夫多妻の制度が生きている、とモルモン教会
では受けとめられている。それは、男性が永遠の結婚をして、妻
に先立たれて夫が新しく別の女性と永遠の結婚をすれば、来世で
ふたりともその男性の妻であるから、という理屈である。最近で
も幾人もの教会幹部が高齢になって再婚した例がある。

それに対して、ユージン・イングランドはそろそろ教会はこの考
え方を捨てるべきではないか、と言う。お互いに複数の連れ合い
と永遠の結婚をしている場合は、それぞれが選んで合意した一人
と最終的に永遠の夫婦となり、他の結び固めは解消される、と彼
は解釈する。(マッケイ大管長時に女性が複数の男性と結び固め
られるようになったことの帰結として。)私はその考えを読んで、
大変勇気のある発言であり、理にかなった考えであると思った。
男女平等の今日的で自然な考え方である。しかし、教会の中で彼
の考えが注目されているとは言えない。・・原理主義的モルモン
宗派が若い末日聖徒の女性をかどわかして誘拐することが続発し
ているのは、多妻教義の残滓が残っているのをてこに使っている
ことに注目すべきである。
イングランドの論法はこうである。
「来世で一夫多妻の状態になるのではないかというモルモ
ンの予想について、聖典には明確な記載がなく、またはっきりし
た公的な教義は存在しない。私はこの一般的な考え方を再考し、
一夫一婦制の結婚について改めて考えるのが有益ではないかと提
案したい。多妻制は神に制定された一時的な例外的慣行である
が、やはり神によって恒久的に廃止されたのである。」
「来世で多妻ではないかと予期するとき、あるいはそのような
冗談を言うとき、いわば前倒しになって愛情や忠誠が妻からそれ、
他の女性に心が向かっていく。今暮している結婚生活で十分責任
を果たさないことになってしまう。」
「夫婦間の貞潔の理想は、将来来世で一夫多妻になるのではと
いう期待があると、崩れる恐れがある。」
「日の光栄の結婚のひな形はどのようなものであろうか。至高
の天について詳細は知らされていないが、聖典は「対等のパート
ナー同士の絶対的な貞潔」を結婚生活の幸福の基盤であると明確
に記している。(I コリ 11:11、創 2:23-24、 IINe 26:33)。」
「日の光栄の結婚は昇栄を得る重要な要件であって、自己の発見
と向上に不可欠な熟達は、夫婦という全く対等で、対局にありな
がら相互補完的な個人と個人の統合によって初めて可能である。
モルモン神学はそう教えている。」
「エデンで確立され末日聖徒の最も神聖な儀式で確認されている
最高の結婚のひな形は、一夫一婦制で相互の高い貞潔を前提とし
ている。」
神権に関連して人種差別が撤廃されたように、次は男女平等・
対等の問題が浮上している。この問題は彼がここに挙げた重要な
問題とかかわってくる。私は故イングランド教授の柔軟にして深
い思考と慧眼を尊敬し、ここに重要な警鐘を紹介した次第である。
--- --- ---
[注]
ユージン・イングランド・・スタンフォードに学び学位を得、ミ
ネソタ州で教育に携わった後、BYUに移り24年教鞭を取り、晩年は
ユタバレ-大学(UVSC)で教えた。大変クリスチャン的な考え方を
する、柔軟でリベラルな学者、思想家。会員の間で信頼の厚い、
評判の著者。ダイアログ誌創設者。現アイリング使徒の信頼が厚
かった人。2001年没。
[Sources]
Eugene England, “Fidelity, Polygamy, and Celestial Marriage” in
Brent Corcoran, ed., “Multiply and Replenish, -- Mormon Essays
on Sex and Family” Signature Books, 1994
http://en.wikipedia.org/wiki/Eugene_England
http://mormonlit.lib.byu.edu/lit_author.php?a_id=85
[付] モルモンフォーラム誌を立ち上げようとしていたころ、広島
を訪れたアイリング長老に会って相談した。アイリング使徒は奨
励も思いとどまるようにも言わない、ただジーン・イングランド
の線で行って欲しい、と言われたことが思い出される。
現在教会では福音の教義クラスで「教義と聖約」を読んでいる。
最近132章が終わった。永遠の結婚がテーマであるが、ずっ
と昔なら「一夫多妻」がテーマとして読まれたはずである。
現在でも来世では一夫多妻の制度が生きている、とモルモン教会
では受けとめられている。それは、男性が永遠の結婚をして、妻
に先立たれて夫が新しく別の女性と永遠の結婚をすれば、来世で
ふたりともその男性の妻であるから、という理屈である。最近で
も幾人もの教会幹部が高齢になって再婚した例がある。

それに対して、ユージン・イングランドはそろそろ教会はこの考
え方を捨てるべきではないか、と言う。お互いに複数の連れ合い
と永遠の結婚をしている場合は、それぞれが選んで合意した一人
と最終的に永遠の夫婦となり、他の結び固めは解消される、と彼
は解釈する。(マッケイ大管長時に女性が複数の男性と結び固め
られるようになったことの帰結として。)私はその考えを読んで、
大変勇気のある発言であり、理にかなった考えであると思った。
男女平等の今日的で自然な考え方である。しかし、教会の中で彼
の考えが注目されているとは言えない。・・原理主義的モルモン
宗派が若い末日聖徒の女性をかどわかして誘拐することが続発し
ているのは、多妻教義の残滓が残っているのをてこに使っている
ことに注目すべきである。
イングランドの論法はこうである。
「来世で一夫多妻の状態になるのではないかというモルモ
ンの予想について、聖典には明確な記載がなく、またはっきりし
た公的な教義は存在しない。私はこの一般的な考え方を再考し、
一夫一婦制の結婚について改めて考えるのが有益ではないかと提
案したい。多妻制は神に制定された一時的な例外的慣行である
が、やはり神によって恒久的に廃止されたのである。」
「来世で多妻ではないかと予期するとき、あるいはそのような
冗談を言うとき、いわば前倒しになって愛情や忠誠が妻からそれ、
他の女性に心が向かっていく。今暮している結婚生活で十分責任
を果たさないことになってしまう。」
「夫婦間の貞潔の理想は、将来来世で一夫多妻になるのではと
いう期待があると、崩れる恐れがある。」
「日の光栄の結婚のひな形はどのようなものであろうか。至高
の天について詳細は知らされていないが、聖典は「対等のパート
ナー同士の絶対的な貞潔」を結婚生活の幸福の基盤であると明確
に記している。(I コリ 11:11、創 2:23-24、 IINe 26:33)。」
「日の光栄の結婚は昇栄を得る重要な要件であって、自己の発見
と向上に不可欠な熟達は、夫婦という全く対等で、対局にありな
がら相互補完的な個人と個人の統合によって初めて可能である。
モルモン神学はそう教えている。」
「エデンで確立され末日聖徒の最も神聖な儀式で確認されている
最高の結婚のひな形は、一夫一婦制で相互の高い貞潔を前提とし
ている。」
神権に関連して人種差別が撤廃されたように、次は男女平等・
対等の問題が浮上している。この問題は彼がここに挙げた重要な
問題とかかわってくる。私は故イングランド教授の柔軟にして深
い思考と慧眼を尊敬し、ここに重要な警鐘を紹介した次第である。
--- --- ---
[注]
ユージン・イングランド・・スタンフォードに学び学位を得、ミ
ネソタ州で教育に携わった後、BYUに移り24年教鞭を取り、晩年は
ユタバレ-大学(UVSC)で教えた。大変クリスチャン的な考え方を
する、柔軟でリベラルな学者、思想家。会員の間で信頼の厚い、
評判の著者。ダイアログ誌創設者。現アイリング使徒の信頼が厚
かった人。2001年没。
[Sources]
Eugene England, “Fidelity, Polygamy, and Celestial Marriage” in
Brent Corcoran, ed., “Multiply and Replenish, -- Mormon Essays
on Sex and Family” Signature Books, 1994
http://en.wikipedia.org/wiki/Eugene_England
http://mormonlit.lib.byu.edu/lit_author.php?a_id=85
[付] モルモンフォーラム誌を立ち上げようとしていたころ、広島
を訪れたアイリング長老に会って相談した。アイリング使徒は奨
励も思いとどまるようにも言わない、ただジーン・イングランド
の線で行って欲しい、と言われたことが思い出される。
捨てる物が多すぎて・・・整理がつかないんでしょう。
いっそのこと全部捨てたら??
イングランドの言おうとしているのは、本当はこのように解決されているべきものであった、という著者の解釈です(過去にすでに廃止されたものについて今日的解釈を改めて施している)。
日本において、例えば豚さん自身は来世で多妻を予期していますか。多くの日本の会員はほとんどそのような考えを持っていないと思います。日本の会員はこの伝統(慣習)にとらわれていません。いわば後なる者が先になっている例だと言えるのではないでしょうか。