LDS教会は1960年以来収入と支出の決算を公表していない。それで米のメディアが時々推測値を特集したりしてきた。
今年2017年に入って、D.マイケル・クインが「モルモンの指導組織:その富と企業的資力」(“The Mormon Hierarchy: Wealth & Corporate Power” の仮訳)で、米以外の資料からいくつか重要な興味深い情報を発表している。イギリス、カナダ、フィリピンなどにおいて法律で求められて一部情報が得られているからである。
先ずクインは1960-2010年の什分の一による収入の増加を、幾つかの得られた情報をもとに毎年平均12.9%の伸びと推測している。1960年の7千8百万ドルから2010年の337億ドルに伸びている。着実な、大きな増加である。
そして教会がかかわる企業群があげる収益と資産運用がもたらす利益がある。教会は1960年頃から教会外の企業、例えばシアーズ、ウエスティングハウス、ジェネラル・エレクトリック社などの株を保有し始めている。それに教会傘下の諸企業が収益をあげている。
什分の一の額とその他の収入の比率であるが、暫く什分の一が教会の収入の90%を占めると伝えられてきた(1997年バートン監督)。しかし、近年商業活動から得られる収入の比率は40-45%かそれ以上に達していると考えられる(クインp. 139)。
教会は今日豊かな富を持つ組織となっている。その際、LDS教会は神の国を地上に築き、広めることを主眼に置いている、とクインは見る。一つの転換点は1982年、全世界で礼拝堂の建築に一般会計から支出し始めたことであった。地元会員が建物維持や他の予算を払っていたのを廃止し、教会本部が払うことになった。
上の方針にのっとって、途上国のLDS教会には多額の補助金が米国の教会本部から支給されている。例えばトンガには収入の80%(2006-10)、フィリピンにはほぼ90%(2002-10)、ニュージーランドでも40-50%がソルトレークから来ている。英国では20%前後(この数字は沼野がp.130の表から概算)、カナダはほとんど受け取っていない優等生である。日本で礼拝堂が近年驚く程立派なものが建てられていることや、札幌を始め目を見張るような神殿が建っていることを考えると教会が大変豊かになったためであることと負担をどこが持つか方針が変更されたことが背景にあることが分かる。
Source: D.Michael Quinn, “The Mormon Hierarchy: Wealth and Corporate Power.” Signature Books 2017
*著者クインは2016年 モルモン歴史学会(Mormon History Association)からモルモン史について傑出した貢献をしたとしてL.J.アリントン賞を与えられている。
この場合正確には、アメリカの物価上昇を計算に入れる必要が有ります。
1980年のアメリカ消費者物価指数は75ぐらいで、2016年には230ぐらいに推移しています。
什分の一は、会員の所得が上がれば自然に上がります。
物価上昇に伴う所得の上昇は、実質的には増加ではありません。
日本でも、1960年の所得水準と2016年の所得水準では私の推測ですが、20倍ぐらいにはなているのでは無いですか?
給料が上がったって喜んでも、それ以上に物価が上がれば実質マイナスですから。
ケネディーが大統領に成った年ですね。
このころのアメリカは経済絶好調で、GNPは30%増加、国民所得も20%以上増加していました。
特に白人の中産階級は裕福になった時代です。
所得が20%以上上昇すれば、当然什分の一も、20%以上増加します。
アメリカだけを見れば、モルモン教会は会員数が現状維持でも、什分の一は、確実に20%以上増加するわけです。
クインさんは、調査の上で、什分の一と言う数値を提示しただけだと思います。
その数値を見て、どう判断するかは、もっと多くの情報を考慮しないと、判断を間違います。
豚は真珠には興味は無いですが、金にはうるさい(笑)