聖餐会（モルモン教会）も退屈？

　宗教関連の評論家ジャナ・リエス(lds)が「モルモン教会の集会はなぜこんなに退屈なのか」という文を投稿した。私自身は末日聖徒の聖餐会が司会から、聖餐式、説教まで平信徒によって行なわれるので未熟なところがあるものの、教会員が信仰によって支えられている様子が分かって感動を覚えることがある。特に他のワードを訪問したときなど新鮮な気持ちで参加するときによく感じる。それで聖餐会を積極的に受けとめている。しかし、正直言ってつい船を漕いでしまうことも少なくない。

　宗教歴史家であるリエスは今日の聖餐会が決まった手順を追う退屈な集会になっていることについて長年なぜなのか考えてきた。その結果五つの理由をあげている。末日聖徒のメッセージは内輪だけのものではないはずであると考える教徒として、現状を変えていく必要性を訴えている。

１） 我々はもはや霊的な顕現を期待していない。敬虔な会員をも退屈に感じさせる第一の理由は、アメリカのモルモンが「暖かい、しかしそれほど鮮明でも激しくもない」形でしか聖霊の現れを期待しなくなっていることにある。アメリカのモルモンと言ったのは、世界の他所ではモルモンは今も初期の聖徒と同様に聖霊の現れを、あるいはみたまに撃たれることや異言を語ることなどを祈り求めているからである。こういったことは現代のアメリカのモルモンは敬遠してかかわりを持たない。新約聖書を直接引き継ぐと自負する教派にしては、宗教的な経験が少ない。しかも最初の百年に生きた信者から見れば認められない程度のものでしかない。われわれが本当に神の顕現を期待しないのであれば、神が姿を現されなくても無理からぬことである。

２） 聖餐会に出席するのは主として神について学ぶためであって、神を礼拝するためだと思っていない。聖餐会で毎週聖餐をとるのはよいことである。（ldsが一貫して行なっている正しいことの一つ）。ただ教徒になぜ出席するのかとアンケートを取れば、「神を礼拝する」という答えは上位五位に入ってこないだろう。

３） 音楽が十分活用されておらず、時に湿っぽい。一般に「幸福な人々」と考えられるモルモン教徒は本来礼拝に伴うはずの喜びの大事な要素を欠いている。我々は聖餐会で3曲歌う。それはそれで素晴らしい。しかし、それ以上にいかない。世界が継承してきた豊かな音楽の遺産を、特に絢爛たる宗教音楽を無視している。教団内の作品重視からか無知からか分からない。しかし、大勢の人々を魅了する美しいモルモンタバナクル合唱団とワード部レベルに見られる生気のない貧相な音楽の大きな落差は悲しい。ワードレベルでは様々な楽器や音楽の種類、作曲家が禁じられている。

４） 説教が下手。このことについてずっと繰り返し言ってきたが、状況は改善されるように見えない。モルモンは皆教会で定期的に話すように期待されているにもかかわらず、どのように話すかについては訓練が全くなされない。これは理解できない。（聖餐会に出て下手な話を聞くたびに、私たちは的外れの平凡な話でもよいと教わっているようなものである。）全ての会員が話すというのは素晴らしいことである。それで話の優劣に大きな違いが生じるのはごく自然なことである。しかし、内容と話し方の面で少し指導があれば改善が見られるであろう。

５） 改善のビジョンを持った者の不在。ビジョンがない時、民は滅びる。われわれの指導者は毎週の礼拝を最優先事項としてこなかった。教会員になって17年になるが、その間目にした変更は練習の賛美歌をやめたこと、宣教師の歓送会をやめたことである。それでは十分ではない。私たちの教会には神学的に訓練された人、礼拝とは何を達成すべき時間かを理解している人を必要としている。また聖典や教会史に通じて日曜日を充実したものにする例を引き出せる人が必要である。そのような指導者がいれば、説教の改善、礼拝を助ける音楽を容認するなど詳細な改革が可能となるだろう。

　以上がリエスの記事である。私の意見を加えると、１の霊的な現れについては日本の末日聖徒の感覚も世俗化の進んだ先進国の住民であるので、アメリカのモルモンと同じである。（アメリカによく学んでいる。）激しい霊的な雰囲気は時に感動するものの、一般的には敬遠気味で、淡白な集会の雰囲気である。（モルモン教はカルト呼ばわりされることがあるが、およそカルトらしからぬ大人しい教会であると思う。）
　２の聖餐会は礼拝というより神について学ぶ場と思っている、という点について。同感である。カトリック教会では礼拝堂に入って着席する前に跪いて祈ったり、主の祈りや聖句などを唱和することがあるのに対し、ldsの場合はすわって聞く時間がほとんどである。神（教会の教え）について学ぶ、という表現が当たっていると感じられる。それで足を組んですわる（壇上のひな壇でも。さすがに日本人の幹部はそうしない）ことはもちろん、アメリカ人は若い夫婦が腕を肩にまわしていたりする。日本人までがそれを真似るのは残念である。礼拝の場ですよ、とよほど言ってあげようかと思う。愛情表現だと弁明するかも知れないが、劇場やスポーツ観戦ではないのだと言いたい。
　３の音楽について。少し比較が特殊かも知れないが、韓国や中国の一般のキリスト教会では賛美歌を歌う熱意が格段に異なる。指揮者も表情をこめて大きな声でリードし、会衆も朗々と歌う。賛美歌を歌う頻度もずっと多い。それにしても日本では、音楽の発表が少なく、アメリカに比べてそれだけ聖餐会がますます単調になっている。　
　４の説教の稚拙さについては言わずもがなである。冒頭に書いたように好意的にみたいと思っているがその気持ちが裏切られることが多い。もちろん、信仰にあふれ、あるいは会員のことをよく考えて優れた説教をする人がいるが比率から言えば、残念ながら多くない。

Source: http://blog.beliefnet.com/flunkingsainthood/　Jana Riess, ‘Why Are Mormon Church Meetings So Dull’ (July 19, 2010)