お題でエッセイ、です。
今回のお題は、「時よ、止まれ」です。
これは、三年前の夏にやったお芝居の時に、チラシに掲載した文章です。
過去に綴ったモノは、時が経てばどんどんと埋もれて忘れていってしまうなあと思い、掘り起こし。
実はその三年前の作品を、今夏再演するものですから、この機会にチラシの文章も、再掲。
ちなみに、本日5/16 午前10時からチケット予約開始。
よろしければ是非、見に来てくださいませ。
天幕旅団 ♯10
「僕の中にある静けさに降る、騒がしくて眩しくて赤くて紅い雪」
2015/7/9(木)~7/13(月) @SPACE雑遊
ご予約は、https://ticket.corich.jp/apply/65213/002/
それでは、どうぞ。
*********************************************
♯3「時よ、止まれ」
天幕旅団を旗揚げる前、劇団をやっていた。
大学の劇研の同期で結成した団体で、2010年の活動休止まで丸十年、
僕らは稽古場で、劇場で、共に時を過ごし、色んな作品作りをした。
まだ学生の時分、旗揚げ公演の初日。
準備も整い、外では受付も始まっていた。時間になればお客さんが入場を開始する。
刻一刻と近づく本番。ここから全てが始まるのだ、というある種気負いのようなもの。
その高揚感はとてつもなく大きく、僕らはいつまでも楽屋に戻ろうとはせず、
走りこみをしたり、台詞を暗誦したり、舞台と客席をうろうろしていた。
僕らは、緊張していた。というか、緊張しすぎて舞い上がっていた。
その曲をかけたのは、ホントに偶然だった。
舞台の仕込をしながら聞いていたCDが、たまたま残っていたから。
THE BLUE HEARTSの水色のジャケット。
音響ブースに駆け上がって、プレイボタンを押した。
身体の中からこみ上げてくるこの抑えようのない熱のようなものを、
とにかく一度発散しておかないと、本番前にショートしてしまうのではないか、
そんな気がしていたのだ。
「永遠なのか、本当か、時の流れは続くのか?」
スピーカーから流れる歌声に合わせて、声の限り僕らは歌った。
外で並んでいるお客さんにも絶対聞こえているような、大音量だった。
以来、僕らは本番前にその曲を聴くのが決まりごとのようになった。
劇場の中を大音量で満たし、そして、歌う。
準備が遅れて開場直前までリハーサルをやっていたりした時を除いて、
劇団の公演ではほぼ全ステージ、僕らはその曲を聴いた。
初めて参加する客演さんは、それを見て驚き、まるで儀式のようだ、と形容した。
確かにそれは、僕らの中でもはや儀式と読んでもいいような、
欠かすことのできない特別な意味合いを持っていた。
2010年の夏、活動休止公演の時も、僕らは変わらずその曲を聴いていた。
この曲が終われば、お客さんが入場し、そして、本番が始まる。
やがて、幕が下り、舞台セットをバラし、なにもなくなる。
僕らが過ごした時は、泡沫の夢のように消えるのだ。
身体の中が、芯から熱くなっていくようだった。
劇場の中には大音量で、聴き慣れた歌声が響いていた。
声を合わせて大声で歌う者、ストレッチをする者、小道具を確認する者、
各々が開演前の時を過ごす。全てはいつも通りの風景だった。
スピーカーの向こうの美しくて真っ直ぐな声は歌い続ける。
この曲がいつまでも終わらなければいいのに、僕はそう願い続けた。
「いつまで経っても変わらない、そんなモノあるだろうか?」
変わらないモノを求めて、終わらないモノを求めて、永遠を求めて、
僕は今も、そんな風に思いながら、作品を作っている。
今回のお題は、「時よ、止まれ」です。
これは、三年前の夏にやったお芝居の時に、チラシに掲載した文章です。
過去に綴ったモノは、時が経てばどんどんと埋もれて忘れていってしまうなあと思い、掘り起こし。
実はその三年前の作品を、今夏再演するものですから、この機会にチラシの文章も、再掲。
ちなみに、本日5/16 午前10時からチケット予約開始。
よろしければ是非、見に来てくださいませ。
天幕旅団 ♯10
「僕の中にある静けさに降る、騒がしくて眩しくて赤くて紅い雪」
2015/7/9(木)~7/13(月) @SPACE雑遊
ご予約は、https://ticket.corich.jp/apply/65213/002/
それでは、どうぞ。
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♯3「時よ、止まれ」
天幕旅団を旗揚げる前、劇団をやっていた。
大学の劇研の同期で結成した団体で、2010年の活動休止まで丸十年、
僕らは稽古場で、劇場で、共に時を過ごし、色んな作品作りをした。
まだ学生の時分、旗揚げ公演の初日。
準備も整い、外では受付も始まっていた。時間になればお客さんが入場を開始する。
刻一刻と近づく本番。ここから全てが始まるのだ、というある種気負いのようなもの。
その高揚感はとてつもなく大きく、僕らはいつまでも楽屋に戻ろうとはせず、
走りこみをしたり、台詞を暗誦したり、舞台と客席をうろうろしていた。
僕らは、緊張していた。というか、緊張しすぎて舞い上がっていた。
その曲をかけたのは、ホントに偶然だった。
舞台の仕込をしながら聞いていたCDが、たまたま残っていたから。
THE BLUE HEARTSの水色のジャケット。
音響ブースに駆け上がって、プレイボタンを押した。
身体の中からこみ上げてくるこの抑えようのない熱のようなものを、
とにかく一度発散しておかないと、本番前にショートしてしまうのではないか、
そんな気がしていたのだ。
「永遠なのか、本当か、時の流れは続くのか?」
スピーカーから流れる歌声に合わせて、声の限り僕らは歌った。
外で並んでいるお客さんにも絶対聞こえているような、大音量だった。
以来、僕らは本番前にその曲を聴くのが決まりごとのようになった。
劇場の中を大音量で満たし、そして、歌う。
準備が遅れて開場直前までリハーサルをやっていたりした時を除いて、
劇団の公演ではほぼ全ステージ、僕らはその曲を聴いた。
初めて参加する客演さんは、それを見て驚き、まるで儀式のようだ、と形容した。
確かにそれは、僕らの中でもはや儀式と読んでもいいような、
欠かすことのできない特別な意味合いを持っていた。
2010年の夏、活動休止公演の時も、僕らは変わらずその曲を聴いていた。
この曲が終われば、お客さんが入場し、そして、本番が始まる。
やがて、幕が下り、舞台セットをバラし、なにもなくなる。
僕らが過ごした時は、泡沫の夢のように消えるのだ。
身体の中が、芯から熱くなっていくようだった。
劇場の中には大音量で、聴き慣れた歌声が響いていた。
声を合わせて大声で歌う者、ストレッチをする者、小道具を確認する者、
各々が開演前の時を過ごす。全てはいつも通りの風景だった。
スピーカーの向こうの美しくて真っ直ぐな声は歌い続ける。
この曲がいつまでも終わらなければいいのに、僕はそう願い続けた。
「いつまで経っても変わらない、そんなモノあるだろうか?」
変わらないモノを求めて、終わらないモノを求めて、永遠を求めて、
僕は今も、そんな風に思いながら、作品を作っている。