情熱の薔薇

天幕旅団主宰:渡辺望が傾ける様々な情熱。

「ガラスの向こうへ」の情熱

2012-04-24 03:32:00 | Weblog
三月から関わっていた空想が全日程終了。

今回は、宮沢賢治。
どうやら演劇界的に、「銀河鉄道の夜」モチーフの作品が流行っているみたいで、
今年に入ってから、結構見た気がする。

原作モノって、その作品が好きで世界観を使いたい、というところから出発することが圧倒的に多いので、わりと、盲目的になってしまうことがよくある。
元々原作を好きな人には受け入れられるけど、さほど知らない人にとっては、どこまでが原文で、とこからがオリジナルかすらわからなくなってしまう。

けれど、毎回思うことだけれど、ほさか氏はそういう原典への愛情を感じさせない。多分、それを封じて、ドライに原典を枠組としてだけ使用する。
だから、見ている側に疎外感を与えることがないのだ。

今回は、星空を旅して、海の底に潜る物語。
多くの場合の演劇は、いかにして想像の世界を具現化するかに尽力する。
けれど、ほさか氏のそれは本物の夜空や深海ではなくて、プラネタリウムであり、水族館なのだ。
ガラス一枚隔てた向こう側の、作り物であり、結局のところ、それはとても遠い。
代わりに、体感するのはガラスのこちら側であり、つまりは、現実だ。
だからこそ、重くのしかかってくる。

作品作りに関わるのも三回目。
関わるたびに、「自分がやりたいこと」がクリアになっていくというか。
ファンタジーという冠はありつつ、ほさか氏が描くのは何処までも現実。
僕は、逆に、舞台上から現実を消したいと思っている。
ガラスの向こう側に、深海に、本当に潜っていきたいと思うのだ。

素敵な作品に関われて、今回も楽しかった。
さて、夏に向けて、準備準備。


キャストのとかげちゃんにもらった、プレゼント。
手作りの、ボタン。
離れている二つを繋ぎとめるモノ。
つまりこれが、「関係」そのものなのかもしれない。
まさに、作品のテーマではないか。
舞台に立つことを心から楽しんでいる感じがして、ホント、いい子だなあと思った。