ホテルに帰ると、私はロビーに設けられたカフェーでコーヒーを飲んで冷えた体を温めた。そして部屋に戻り、何度も時計を見ながら踊る心をもてあましていた。
テレビをつけても流れる映像にさしたる興味が起きるわけでもなく、思いはいつも里依子の面影に帰ってくる。するともう部屋の時計に目が向くのだ。ほんの数分動いただけの時計を恨めしく思いながら、私はベッドに座ったり寝転んだり、備え付けの机の引き出しを開けたり閉めたりした。
6時を大きく回って、7時に近かった。部屋の電話が鳴った。わざと数回ベルの音を数えて、受話器を取ると、その向こうに懐かしい声がいくらか緊張気味に聞こえてきた。里依子だった。
「今ホテルのロビーに来ています。」それは鈴の音のように聞こえた。
私は部屋に鍵をかけるのももどかしく、部屋を飛び出した。里依子はフロントの前のソファーに腰をおろしていて、私の姿を認めるとツッと立ってきた。
HPのしてんてん
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