のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

スケールマシン(スケール号の冒険)

2019-09-21 | 5次元宇宙に生きる(一人旅通信)

 二十 エピローグ(博士の回想)

 

 宴たけなわの頃、スケール号の隊員たちは、神ひと様の街を案内してもらうことになった。すっかり打ち解けた神ひと様の子供たちと隊員たちは、大はしゃぎで、案内の奥様について行った。

 偶然、あの岸辺の足跡の謎が解き明かされた。

 湖から続いていた足跡が、立ち止まったまま消えていたのだが、奥様に従って付いてきた隊員たちは、そこから奇妙な乗り物に乗せられたのだ。

 透明の乗り物と言ったらいいのだろうか。まっすぐ見つめたら何も見えないのに、ちょっと目をそらせるとそこに絨毯のようなものが見える。

 子供たちは躊躇なくその上に乗って、手招きをしている。

 「さあ、乗ってください。みなさん。」

 「でも、よく見えないでヤす。」

 「どこからどうすればいいのだスか。」

 「何なら、私は自分で飛んでいけますが。」

 「どこに足を乗せていいのかわからないのです。」

 隊員たちの口はひっきりなしに動いても、足が出ないのだった。

 「さあ、ここに足を。」

 そう言って奥様は皆の足をとって、やっとのことで乗り込ませることが出来た。不思議な乗り心地で、皆興奮して舞い上がっているのだ。最後にスケール号が飛び乗った。気の毒にスケール号は、神ひと様の子供達の引っ張りだこになっている。

 「さあ、行きますよ。」

 透明の絨毯は音もなく飛び上がった。座っているその座席は完全に透明で、もこりんなどは、遊園地の乗り物に乗った気分になって、いつの間にか大はしゃぎだった。

 皆が去った後に、足跡と静寂だけが残っていた。

 

 ☆ ☆ ☆ ☆

 「やっと静かになったようじゃな、博士。」

 「神ひと様。まるで夢のようですが、私たちの思いが本当に実願したのですね。」

 「実に喜ばしいことじゃ。」

 神ひと様は新しい茶を入れて博士にわたし、自分も一口含んで目を閉じた。しばらく意識を舌の上に集めて、茶の味を味わい尽くしているようだ。

 博士も同じように、そのオレンジの液体を口に流し込んだ。一瞬渋みが口の中を支配したが、意識を集中させると、その渋みが己の苦悩とつながるように思えた。

 神ゆえの苦悩。口の中の渋みが、先ほどの神ひと様の言葉に融合していく。博士も同じことを考えていた。それは一言一句たがわないもののように思われた。何も目的を持たされていないものの苦悩。完全なる自由が生み出す苦悩。それがすべての原因だと博士は思うのだった。

 舌の上の渋みから逃げないでさらに深く、味孔にある微繊毛を刺激して、その一本一本の感覚をながめた。まるでそれは、意識の塊だった。肉体は消えて、味孔そのものが博士の苦悩を癒すように微繊毛を揺らせているのがわかった。

 神ひと様が、深い呼吸をして、再び茶を口に入れた。その味覚を博士の味孔がとらえているのだ。博士は感じるままに意識をとぎ澄ませる。不思議という思いはなかった。受け入れないから不思議なのだと、はじけるような理解が沸き起こった。

 博士は深く息を吸い、その味覚を神ひと様に送るように気を吐き出した。今度は博士がオレンジの茶を口に流し込んだ。

 神ひと様が顎を突き出すようにして、茶を味わい尽くそうとしているのがわかる。その感覚は博士の感覚であり、同時に神ひと様の意識でもあるのだ。

 神ゆえの苦悩が、喜びに変わる瞬間を、博士は自分の味覚の中に見ていた。神ひと様がゆっくりと目を開け、二人は見つめ合った。神ひと様の顔に歓喜の色が見えた。

 「私たちは二つではなかったのですな。」

 「いかにも。」

 二人の間に言葉はいらなかった。二つのこの身体は、ひとつの意識でつながっていたのだ。

 「空は我等をひとつにしてくれるのじゃ。」

 「スケールの世界は、この、たった一つの空間が生み出しているのですね。」

 「我らは一つなのじゃ。」

 「あるのは、スケールの隔たりだけです。スケールのために互いの目に見えないだけで、こうして意識をつなげばひとつだということがよくわかります。」

 「ひとつという事が、これほど至福を与えてくれようとはの。」

 長い沈黙があった。

 茶を味わう二人の姿は、美しい風景の中に溶け込んでいる。

 博士の味孔が渋味を味わい尽くすと、無尽蔵に広がる味覚の世界が見えた。どんな小さな一点でも、神とつながっている。そう思ったら、まとわりついていた苦悩の色が消えた。

 「今苦悩が消えてゆきました。」

 「わしもじゃ。」

 二人はしばらく無言のままでいたが、互いをねぎらうように、誰からともなく肩を抱き合った。

 「私が神ひと様に会いたいと思ったのは、なぜこの世から戦いがなくならないのかを知りたいと思ったからでしたが。」

 博士が自然に湧き上がる思いを口にした。

 「神であるゆえの、苦悩を消せばいいのじゃの。」

 「そうです、神ひと様、苦悩を消す方法さえ見つければ、我々ヒト族は、争いをやめるでしょう。そのためにヒト族が見失った生きる目的を手に入れねばならないのです。」

 「空であるという意識がそれを実現させてくれるのじゃな。」

 「吾は空なり。意識をひっくり返せばよかったのです。神ひと様と、お茶を御一緒させていただいて、はっきり理解できました。」

 「わしとて同じじゃ、博士。吾は物だという思い込みからヒト族を解放しようではないか。空こそ己と理解すれば、わしらはは一つじゃ。」

 博士と神ひと様は、もはや対話という域を超えていた。言葉が意識の中に埋没して、意識だけが研ぎ澄まされ、共有が始まっていた。

 「つながりとはなんとよきものじゃのう。我らに目的がなかったのではない。」

 「そうです。大いなる神としてつながらねばならないという、この尊い目的があったのですね。」

 「太陽族が黙々と定めをこなすように、我らヒト族はスケールを超えてひとつの神とならねばならぬ。そこに我らに与えられた目的があったのじゃの。めでたいことじゃ。」

 「どう生きねばならないのか。それがわかれば苦悩は消える。」

 「そうじゃ。」

 「始まりも終わりもない存在に。」

 そう言って博士は、コップを空にかざし、残りの茶を飲み干した。神ひと様が共にその茶を味わい尽くすように瞑目した。

 「空として生きる我らのために。」

 神ひと様がコップを天にかざして茶を飲み干した。その味わいが博士の意識に流れ込んでくる。その余韻はスケールの軸に沿って、どこまでも続いて行くようだった。

 

 静かな時間が流れた。

 

 観光に出た子供たちが帰ってくるまでの至福の時だった。それが一時間だったのか数時間だったのかは定かではない。

 

  

 

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宇宙の小径 2019.9.21

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宗教を越える神

 

五次元(スケール)は

人間の持ちうる最大の道具だ

それは時間を越える概念であり

瞬間の中にある

宇宙の壮大な真実を

我々にイメージさせてくれるのだ

 

四次元(時間)は

宇宙に生きる人間に

変化を理解する道具として役立ってきた

しかし

今この瞬間という

動かない時間の領域を

イメージさせてはくれなかったのだ

 

それゆえに

様々な宗教が生まれ

時間を越えた世界に

救いを求めようとしたのではないだろうか

 

スケールの概念は

今私たちが呼吸する空気そのものが

神の意識に他ならないというイメージをうみだしてくれるのだ

空間の中には極大から極小まで無限の波長が存在する

神の波長も人間の波長も

同じ空間の中に同時に存在するという意味だ

 

つまり五次元は

科学的に時間を受け入れると同時に

神と共存する己の姿を

唯一無二の宇宙として

科学的に

理解するための道具となる

 

人類の持ちうる

五番目の概念

それを手に入れることは

進化ともいえるだろう

 

そこには

宗教を越える神の姿が現れる

宗教を持てない人々をも含めたすべての人間が

共有する神のイメージを語り合える

そんな可能性があるということだ

 

人類はともに

神と共存する自分の姿を

語り合うことが出来る

 

科学の進歩と

宇宙の研究が

神と出逢うための

大いなる旅であったのだと

やがて気付く時が

来る

 

 

 

 

 

長いあいだスケール号の冒険に

お付き合いいただきありがとうございました

 宇宙の小径は

その折々の冒険から触発されて書いた

即興の散文でしたが

いかがでしたでしょうか。

少しでも

五次元(スケール)の概念に

興味を持っていただければ幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 


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