
私達の3度目のクリスマスは彼女が職場で手に入れたというホテルのディナーショーを観ながらの食事だった。
途中私の好きな歌手の歌と語りで1時間ほど楽しんだ。要するに芹里奈からのクリスマスプレゼントだったのだ。
ゆったりとした食事のあと、私達は凛とした夜の街に出た。
にぎやかなネオンサインの洪水の中を無言で通り抜け、静かな街灯の下で私は小さな箱を手渡した。芹里奈の誕生石の質素な指輪だった。
「ありがとう、サンタさん」
芹里奈はおどけて礼を言い、それを指にはめて見せた。
「おれはサンタになりたいんじゃないよ」
芹里奈は怪訝そうに私を見た。
「サンタのソリになりたいんだ」
「ソリって、何よそれ」芹里奈は可笑しそうなしぐさで吹き出した。
「あなたの重荷を全部乗せて走りたいんだ」
芹里奈が瞬間固くなるのが分かった。とても長い沈黙のように思えた。芹里奈の涙だけが動いていた。
突然芹里奈は私に抱きつき唇を合わせてきた。私は全身にしびれを覚え、そのまま芹里奈を受け入れた。そして私はその何倍もの抱擁をこの愛おしきものの上に返した。
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