里依子の細い食を気にしながら、出された料理は残らず食べてしまうのが常である私もまた皿の上に大半を残していた。
「もしかしたら会って頂けないのかも知れないと思っていました。」
堪えきれずに、私はここに来ようと心に決めて以来ずっと持ち続けてきた不安を打ち明けた。
「いやだったら会っていませんでした。」
小さな声で俯いたまま里依子は答えた。その声は辺りの騒音に消されてしまって「いやだったら」と言ったのか「本当は」と言ったのかよくわからなかった。そしてそれを聞きなおす勇気が私にはなかった。
こんな話を二度も彼女に言わせることが辛いようにも思われ、しばらくの間彼女の言ったことを詮索しながら笑いでごまかしてしまった。そしてそんな自分を恥じた。
あるいはまた、彼女は自分の人生を正面からとらえて、幾多の悩みを抱えていた。それは私の知っている苦悩の類ではあったのだが、そんな話をするたびに深刻になっていく姿に戸惑いを感じないわけにはいかなかった。
里依子のそんな真剣な姿は、ある意味で私の心と共有出来るような喜びの残片もないわけではなかったが、こうして自分の人生に思い悩みながらどんどん沈んでいく彼女はどこか間違っていると思った。
HPのしてんてん
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます