起業会計

公認会計士による仙台TEOの起業支援活動、会計トピック、監査トピックの解説

粉飾決算をなくす方法  (その2)

2006-02-10 01:28:17 | 監査
(前回のエントリーの続きです。)


それでは、粉飾をなくすにはどうすればよいでしょうか?

・・・その前に、果たして世の中は粉飾を本当に悪だと思っているのでしょうか?
時々根本的な疑問が沸いてくることがあります。

①税法について
税法の規定には粉飾を容認するような規定がたくさんあります。
えっ?と思われる方もいると思いますが、事実です。
例えば、固定資産の減価償却は、法人税法上は任意償却です。つまり、法人税法上認められる範囲で償却をすればよいことになっています。
したがって、今年は利益があまり出ないから「減価償却はやめておこう」という粉飾がまかり通っています。
税法では、納税者が不利になる会計処理にはあまり目くじらを立てていません。減価償却をしなければ、課税所得も増えるし、いっぱい税金を払ってくれることになるからでしょう。

減価償却だけではありません。
債権の貸倒処理にしても、陳腐化した(売り物にならない)棚卸資産の評価損の計上にしてもそうです。
会計上は必ず計上しなければならない損失(損金)の計上のほとんどは任意になっています。

公開会社はさすがに法人税法に従った処理は認められません。
というよりも、公認会計士が監査報告書に適正意見を書いている会社はそんなことはしていないと思います。
しかし、それ以外の多くの会社(監査を受けていない会社)は法人税に基づいた会計処理を行っており、会社の状況を正しく表示している会社は少ないかもしれません。
知り合いに公認会計士がいたら聞いてみてください。

退職給付会計や税効果会計などなじみのない項目ならまだしも、減価償却や貸倒、売れそうにない棚卸資産の評価損の計上すらやっていない会社は、粉飾決算を堂々とやっているということを自覚しておく必要があります。


②銀行について
「赤字になってしまうと銀行がお金を貸してくれなくなってしまうから・・・。」
というのが、「法人税にしたがって減価償却をしない会社」の言い訳です。
実際には銀行は粉飾された決算書ではなく、修正後の決算書に基づいて稟議書を作っているはずですから、そんなことはないはずなんですが・・・。
しかし、このような考えの経営者が結構いるのは、銀行がキチンと決算書を修正する作業をしてないことの裏返しではないでしょうか?
そんなこといったって、銀行員は会計の専門家じゃないから・・・。というのなら、公認会計士に監査をしてもらえばいいのです(ちょっと会計士のPRしてみました)。
もちろん会計士が粉飾を見逃してしまったら損害賠償請求をお忘れなく。



粉飾って上場会社のことだけかと思っている方もいるかもしれませんが、結局日本のほとんどの会社は非上場会社な訳ですから、大多数の会社が粉飾をやむなしとか無意識のうちにやっている間は、世の中、粉飾をなくすのに本気なのかな?と疑問に思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?



‥‥そんなワケで(きっこの日記風)、前置きが長くなってしまいましたが、粉飾を本気でなくすならどうするべきか考えてみました。

<中小企業の粉飾対策>
実は上場会社の粉飾対策よりも中小企業の粉飾対策の方が大事だと思っています。
なぜなら、世の中のコンセンサスとして粉飾は悪だということを啓蒙しておく必要があるからです。
そのためには、日本のそのほとんどを占める中小企業の粉飾対策に力を入れる必要があります。

具体的には、
①法人税法の整備
固定資産の任意償却制度など、会計の考え方と根本的に相容れない粉飾決算を認める規定を廃止すること。
一時的に納税額が減るかもしれないが、繰越欠損の期限切れが早期に発生するなど納税額が必ずしも減るとは限らないと思います。
また、早期償却による設備投資の増加など景気対策効果が見込めることからこれも納税額が必ずしも減る要因にはならないと思われます。

②銀行融資制度
銀行の融資先企業に公認会計士による監査を義務付けること。あるいは、監査済みの決算書を提出する融資先に金利を優遇すること。
監査となると費用がかなりかかってしまう可能性がありますから、レビューあるいはコンピレーションでも良いかもしれません。
これだけでもかなりの効果があると思います。少なくとも、任意償却、不良債権・不良在庫の評価は適正に行われるでしょう。


<上場企業の粉飾対策>
公認会計士の監査をもっと厳格にさせるようにという方もいますが、これだけでは効果的ではありません。
結局公認会計士の監査は、強制調査権を持ちませんし、報酬もクライアントからもらっています。

③調査制度について
そこで、粉飾調査専門家による調査制度を設けるのはどうでしょうか?
つまり、粉飾をしてそうな会社に当たりをつけて強制調査を行うのです。
ちょうど、国税の調査の会計調査版です。
それは監査ではありませんから、粉飾(の意図)を見つけるのが目的です。
過激なことをいえば、会社の帳簿、E-mailなどの調査も含みます。
E-mailの調査は、実際にはどうかと思いますが、ライブドアが風説の流布の容疑をかけられて、粉飾の摘発のためにE-mailも全てコピーして持っていかれたことを考えるとそんなことも可能なのかな?と思ってしまいます。

もちろん、粉飾があれば上場廃止、監査人は業務停止。
二度と証券市場には戻ってこさせないという決意が必要かもしれません。(アメリカでは当然になっていますが、日本ではできるか?)



コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 粉飾決算をなくす方法  (そ... | トップ | 監査法人の交代 »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (wada)
2006-02-10 21:07:58
はじめまして。和田といいます。

仕事は、求人サイト「デジ!」http://deji.jp/の運営をしています。



先日、こちらを訪問させていただいて、

とても勉強になるブログだなと思いました。



もしよろしければ、「デジ!」と相互リンクしませんか?

リンクしていただけるようであれば、デジ!の

このページからリンクさせていただきます!



↓こちらです!

http://osusume.deji.jp/



これからも更新、楽しみにしています!

書き込み、失礼しました~
Re:はじめまして (norio)
2006-02-12 11:23:27
WebSite拝見しました。

相互リンク構いませんので、よろしくお願いします。

これからもよろしくお願いします。
ありがとうございます (wada)
2006-02-13 18:03:05
相互リンクの件、ありがとうございます!

早速デジ!のおすすめキャリアブログからリンクを貼らせていただきました。



今後とも、よろしくお願いいたします。

コメントを投稿

監査」カテゴリの最新記事