起業会計

公認会計士による仙台TEOの起業支援活動、会計トピック、監査トピックの解説

監査法人の交代

2006-02-14 22:14:38 | 監査
監査法人の交代(変更)が最近は頻繁に起こるようになりました。

ライブドアの監査をやっていた港陽監査法人から他の監査法人への変更

トレンドマイクロの監査法人変更

両者はともに監査法人の変更ではありますが、前者の港陽監査法人からの変更はほとんどの会社が監査契約を断られているようです。
一方では、トレンドマイクロは5年ごとに監査法人を変更すると言っています。

港陽からの変更は、3月決算にもかかわらず2月に変更(決算日まで1ヶ月ぐらいしかない)、トレンドマイクロは12月決算という違いはあるものの、新聞を読んだ方には何でこんなことに?と疑問に思われた方もいらっしゃると思います。

asahi.comによれば、
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 ある大手監査法人代表社員は「急に問題が起きたから大手に頼む、といわれても身勝手ではないか。監査法人だけで160もあり、個人事務所もある」と話す。ただ、別の大手監査法人の幹部は「今はリスクが高いので、ライブドアや港陽監査法人絡みの案件が来ても断るよう指示している」と認める。
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と、リスクが高いので断るように指示しているとありますが、多分余り正確ではありません(それだけではないと思います)。
中には監査法人の変更ができている会社もありますが、現時点で監査を引き受けることには、いくつか難しい問題があると考えられます(決してできないわけではないと思います)。

*契約リスクの評価
監査を実施するためには、監査が実施できる体制にある会社でなければいけません。
つまり、監査は強制捜査を行うわけではありませんから、経営者が監査に協力しなければ監査が実施不可能です。
また、監査は試査(すべての取引を検証するわけではない)で決算書の適正性を判断します。したがって、会社の内部統制(不正や誤りを防止・発見する仕組み)が機能していなければ監査ができません。
→ このような監査を実施する前提が会社にあるかどうかを評価してから監査契約を行わなければ、監査をやっている途中で、やっぱり監査不可能です・・・ということになりかねません。

この点に関して、上場会社だったわけだから監査を実施する前提ぐらいあるよ! というかもしれませんが、仮にそうだとしても、監査の前提があるかどうかの評価をどのようにして実施し、その結果どうだったかを文書化しなければいけません。
もちろん、実施するのは監査を行う前ですからタイムリミットが近づいています。

*前任監査人からの引継
監査人が交代すると、前任監査人から前回実施した監査の引継ぎを行わなくてはいけません。
これは、監査に必要な手続として、細かく必要な手続が規定されています。(監査基準委員会報告書第33号「監査人の交代」など)
港陽監査法人が強制捜査でそんな時間が無いのだとすると、必要な手続が実施できなくなる可能性があります。
引継がうまくできなかった場合には、前期以前の決算書が適正かどうか分からないわけですから、引継いだ期の期首剰余金の金額が間違っている可能性があります。誤った期首剰余金を引継いでしまうと、当然に期末の剰余金も間違ってしまうわけですから、監査によって財務諸表の適正性を保証することはできません。

*監査手続
監査は大雑把には次のような手続を行いますが、今からこれを実施するとなるとかなり大変な手間になります。
・会社のビジネスの理解
・リスクの特定
・内部統制の評価
・実証手続の実施
・総括的吟味

リスクがあるから・・といっても、それは単に危ない会社(粉飾しているかも)だからという意味ではないと思います。
結局必要な手続をとる時間がないので、監査契約ができないのかもしれません。
ただ、エイジアやインタートレードは監査法人を変更することができていますから、ひょっとして別の理由があるのかもしれませんが・・・。
監査法人の変更の際には色々とやらないといけない手続があるわけですから、監査法人のキャパシティに余裕が無ければ、問題の無い会社も監査を断られてしまうかもしれません。

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