起業会計

公認会計士による仙台TEOの起業支援活動、会計トピック、監査トピックの解説

減資による欠損填補

2006-04-14 01:21:21 | 商法
会社は、利益剰余金がマイナス(資本の欠損(*1))の状態だと、基本的には配当が出来ません。
したがって、利益が出る体質になっても欠損金の額が巨額のままでは何年も配当が出来ないという状態が起こりえます。
株主は、「利益が出てるのに配当しないなんてとんでもない会社だなぁ」と思うに違いありません。
そこで、資本金を減少して利益剰余金のマイナスに補填して、早期に配当できる体質に持って行きたいというニーズが出てきます。
いうなれば、会社を「キレイなカラダ」にしてフレッシュスタートを切りたいというわけです。

しかし、資本金を自由に減少できるとすれば、資本金に相当する財産が会社に確保されていると信じている債権者を害することになります。
そこで、減資を行う際には、厳格な手続きが求められることとなります(*2)。

なお、会計の基本原則に資本と利益の区分の原則というものがあります。
この原則によれば、資本(株主の拠出)を利益に含めてはいけないことになります。
ただし、欠損填補のための資本の振替は、この原則には反しないという考え方が一般的です。
しかし、欠損填補を超えて減資を行う際には、その超過額は、その他の資本剰余金として、資本の部類に属するようにしなければいけ無いことになります(*3)。


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(*1)資本の欠損
資本の欠損は、会社の純資産額(資本の部合計)から資産の時価評価による評価差額金を控除した金額が、資本金、資本準備金および利益準備金の合計を下回った場合、その差額をいい、貸借対照表の注記事項になります(商施規92)。これは会社の純資産はプラスではあるが、未処理損失が資本金と法定準備金に食い込んでいる状態をいいます。


債務超過
債務超過とは、未処理損失が資本金および法定準備金の合計額を上回り、資本の部がマイナスになった状態をいいます。


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(*2)減資による欠損填補の手続
①株主総会の特別決議で「資本減少案」の承認
②債権者保護手続


減資による欠損填補の会計処理
資本減少の効力が発生したとき、損益計算書の末尾に「資本減少による欠損填補額」などの名称で前期繰越損失の次に記載します。


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(*3)減資差益
減資差益は、従来、資本準備金として積立てが要求されましたが、平成13年の改正により、「その他資本剰余金」に「資本金減少差益」として計上することになりました。
これは、すでに総会の特別決議と債権者保護手続という厳格な手続を経ているため、法定準備金として使用の制限をする必要がないので、配当財源に含めるという理屈です。


会社法関係の法務省令について

2006-02-05 22:06:44 | 商法
新会社法は、多くの部分を法務省令に委任しています。
ということで、法務省令の特徴を簡単にまとめてみました。

2005年11月29日 計算省令案 公表
2005年12月28日まで 意見募集
2006年2月初旬 確定予定

省令案の種類
①会社法施行規則(本体省令)
②株主総会等に関する法務省令(総会省令)
③株式会社の業務の適正を確保する体制に関する法務省令(内部統制省令)
④株式会社の計算に関する法務省令(計算省令)
⑤株式会社の監査に関する法務省令(監査省令)

⑥株式会社特別清算に関する法務省令(特別清算省令)
⑦持分会社に関する法務省令(持分会社省令)
⑧組織再編行為に関する法務省令(組織再編省令)
⑨電子公告に関する法務省令(電子公告省令)

特徴
・これら9つの省令は、会社法の本文に匹敵するほど膨大なボリュームになっている。
・①本体省令は、商法施行規則とは中身が全然違う(名称が変わっただけではないので要注意)
・①本体省令が全体を総括(他の省令のガイドラインになっている)
・営業報告書は、「事業報告」となり、④計算書類に入らなくなっている
・「事業報告」は④計算省令ではなく、①本体省令で規定されている。

会社法における計算書類
①貸借対照表
②損益計算書
③株主資本等変動計算書
④個別注記表


「営業報告書」→「事業報告」
「利益処分案」→ 廃止
役員賞与 → 役員報酬等 として株主総会決議事項
配当 → 随時可能

連結計算書類
①連結貸借対照表
②連結損益計算書
③連結株主資本等変動計算書
④連結注記表



<感想>

新会社法のボリュームも大変なものでしたが、省令関係もすごいボリュームになっていますね。
そろそろ2月なので、省令が確定する頃です。
省令の中でも、本体省令・内部統制省令・計算省令・監査省令が会計士にとっては特に重要です。
今まで親しんできた(?)営業報告書は、事業報告に変わってしまうんですね。
また、利益処分計算書もなくなってしまうし、だいぶ変わりましたね。
連結計算書類も今まではB/S、P/Lだけだったのに開示項目が多くなって大変です。

<追記:2/12>
その後、省令が確定しました。
9本の省令が3本にまとめられるなど、結構変更があるようです。
詳細が分かり次第、またエントリーします。

資本金ゼロ円の会社

2006-02-01 22:40:55 | 商法
新しい会社法では、資本金の金額を自由に決めることが可能となりました。
今でも確認株式会社は資本金1円で設立することはできますが、これは例外です。
今までは、株式会社は1,000万円、有限会社は300万円の資本金が必要でした。

新しい会社法では、この制限がなくなり、資本金の額はいくらでも可能になります。


会計的に新しいのは、ここからです。

資本金の金額は、払込金額と創立費を相殺することが可能となりました。
したがって、株主が100万円を払い込んでも創立費が100万円かかってしまったら資本金をゼロとすることが可能です。
資本金をゼロにするメリットはあまり感じませんが、資本金ゼロでも会社は設立することができるようになりました。

ちなみに、株主の払込金より創立費の方が多くなって、相殺するとマイナスになってしまっても資本金はゼロです(計算省令10条)。
残念ながら?資本金マイナスの会社は設立できません・・・。



*1 確認会社とは、新事業創出促進法により、商法の最低資本金制度を適用しない会社のことです。
*2 創立費とは、会社設立に要した費用のことです。具体的には、発起人の報酬、定款の認証費用、払込取扱銀行の手数料、設立登記の登録免許税などです。

未払の配当を請求されたら?

2005-09-30 00:32:16 | 商法
株主が増えてくると、所在不明の株主が現れ、中には配当金の受取りを何年もしない株主が出てくることがあります。
それでは、何年も配当を受取っていない株主から過去の配当を支払うように要求されたら、何年まで支払う必要があるのでしょうか?


突然思い出したように配当を受取る株主はあまりいませんが、こんな例がありました。
何年も配当を受取っていない株主がいましたが、この株主(法人)が倒産してしまいました。破産管財人が配当を何年も受取っていないことに気づいて配当を支払うように要求してきたケース。
会社は、未払を3年分計上していましたが、3年経過して支払を請求する株主はほとんどなかったので雑益として処理していました。


基本的には、民法上の債権の消滅時効は10年なので、最高10年分支払う必要があります。
しかし、10年も未払配当を管理しておくのは大変です。
そこで、定款で除斥期間を定めておくという方法があります。

定款で除斥期間を定めていれば、それまでの配当のみ支払えばOKです。
定めがなければ、10年分です。
定めをしていない会社は、定款に記載しておきましょう。



(参考)
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<民法167条(債権等の消滅時効)>
1 債権は、10年間行使しないときは、消滅する。


<定款の記載例> 
第XX条 利益配当金が支払開始の日から満3年を経過しても受領されないときは、当会社はその支払義務を免れるものとする。利益配当金には利息をつけない。

<株主への通知の記載例>
当社は定款により、配当金のお支払期限を支払開始から3年としており、支払開始から3年以上経過した配当金については除斥期間を経過したものとして、ご請求いただいてもお支払いすることができません。配当金はお支払い開始後お早めにお受け取りください。 それぞれの配当金の支払期限は、株主様にお届けする「郵便振替支払通知書」の裏面に記載しております。


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「募集株式の発行」って?

2005-08-16 23:55:14 | 商法
新会社法を読んでいると、見慣れない言葉が時々出てきます。
「募集株式の発行」もその一つです。

「募集株式の発行」とは、今まで新株発行・自己株式の処分と呼ばれていた(呼ばれている)ものです。


新会社法を読んでいると、今までの商法とはがらっと変わっているので、新株発行に関することがどこにあるのかなかなか分かりにくくなっています。
新しく変わったので、読んでおかないといけないなと、思っていると、かなり読みづらいので、ちょっとげんなりです。

会社法を読まないといけないと思っている方々もきっと苦労しているんじゃないでしょうか。


株式の譲渡

2005-08-14 22:16:22 | 商法
商法が改正され、新しい会社法では、株式の譲渡の方法が変わるようです。



時系列としては、次のように変わります。

株券交付
 ↓
株券不発行(例外) 株主名簿の名義書換
 ↓
株券不発行(原則) 株主名簿の名義書換



<旧商法(現行の商法)>では、
①株式を譲渡するには、株券を渡す必要がありました。
もし、株券を発行していないため、手元に株券がない場合には、会社に株券を発行してもらってから株券を譲渡する必要があります。

また、株式の譲渡を会社に認めてもらうためには、株主名簿の名義を書き換えてもらう必要がありました。


②なお、平成16年の商法改正で、「株券の不発行制度」が導入されて、定款で株券の不発行の定めをすることができるようになりました。

保管振替(ほふり)制度を利用している株式公開会社は、平成16年6月9日から5年内の政令で定める日において、株券不発行の定款変更決議をしたものとみなされ、株券は廃止されます。

ほふり制度を利用している会社はそのままです。
それ以外の「株券廃止会社」の場合、株式譲渡をするためには、株主名簿の名義を書き換えてもらう必要があります。
株主名簿の名義書換は、共同で行います。
そのため、会社に対して株主名簿に記載された事項の証明書の交付を請求できます。



<新会社法>では、
①株券不発行が原則となります。
定款で株券発行の定めがあると、株券を発行できます。
なお、株券譲渡制限会社では、株主から発行請求がない限り株券を発行する必要がありません。