前回に引続き、mixiネタです。
今回は、まじめにⅠの部(*1)を読んで分析してみたいと思います。
*会社名
平成18年2月にイー・マーキュリーからミクシィに変更しています。
*売上
第3期から第7期にかけて売上が毎年倍々に増えています。(M:百万円)
71M → 144M → 303M → 739M → 1,893M
*経常利益
第5期から黒字化したようです。
売上高経常利益率は、3% → 22% → 48% と超優良会社になっています。
*当期純利益
経常利益と同様、第5期から黒字化しています。直近(第7期)は576Mです。
売上高当期純利益率は、2% → 13% → 30% と、こちらも言うことがありません。
*総資産
毎年倍々に増えてきます。現在は、13億円です。
*自己資本比率
57% B/Sを見ると、無借金経営でした。
*自己資本利益率
直近(第7期)で119%というとんでもない利益を稼いでいます。
100%を超えているので、自己資本より利益の方が多かったことになります。
なお、計算式は、当期利益÷((期首純資産+期末純資産)÷2)です。
*営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動からキャッシュを594M稼いでいます。当期純利益とほぼ同額です。
稼いだ利益をきっちり現金で回収しているということです。
*期末キャッシュ残高
710Mあります。規模の割りにかなりのキャッシュリッチな会社です。
純資産とほぼ同額ですから、稼いだお金をほとんど分配していないことが分かります。
これからは、貯めたキャッシュをどう使うかが課題になりそうです。
*従業員数
直近で、正社員39名、アルバイト等18名と、かなり少ない人数で会社を運営していることが分かります。
4年前はなんと、従業員は1名(アルバイト6名)だったようです。
*会社の沿革
もともと社長が始めた「Find Job!」というIT系求人情報サイトを有限会社化し(平成11年)、その後「@Press」というニュースリリース配信代行事業を開始。平成16年に「mixi」の運営を開始し、現在に至っています。
なお、「@Press」は平成17年に営業譲渡しています。
*事業内容
①mixi
広告枠の販売、プレミア会員サービス
②Find Job!
Web掲載料収入
*従業員
平均年収454万円、平均勤続年数1.2年、平均年齢28歳です。
従業員のほとんどは入社間もないようです。勤続年数の短さは、仕事がきつくてやめていっているというより、今まで少ない人数で運営していたが、最近人が増えてきたと見るべきでしょう。
従業員が増えてきてはいますが、まだまだ少人数で効率的に運営していることが分かります。
*事業別業績
mixiの売上高は、640M、Find Job!の売上は、1,221Mです。
売上比率は、1:2ぐらいの割合です。
伸び率は、mixiが47倍(!)、Find Job!が1.7倍ですから、売上比率は近づいてくることが予想されます。
*@Pressについて
17年8月に1億円で営業譲渡しています。
売価がそのまま譲渡益になっているので、権利(営業権)を売却したのではないかと予想されます。
直近の売上が5ヶ月で3千万ほどだったので、人件費がどれぐらいあるか分かりませんが、すぐに回収できる気がします。
なお、売却先はネットエイジキャピタルパートナーズという取締役の西川氏の会社です。
関連当事者の注記に記載していますが、取引価格が妥当だったのか(安値で馴れ合いの売却をしていないか)気になるところです。
公開直前のこのような関連会社の取引は、不要な憶測をされてしまうので、本当は控えた方が良かったのではないかと思われます。
証券会社や取引所の審査でも根掘り葉掘り聞かれて、問題が無かったことを信じるしかありません。
*mixi事業の懸念材料
月間閲覧数が60億PV(ページビュー)となっているので、Yahoo!の約5分の1、ライブドアの10倍ぐらいの閲覧数です。
閲覧数の伸びが今後の収益向上のキーとなっていると考えられます。
また、現在は広告収入が収益のほとんどを占めていますので、収益モデルの多様化も課題でしょう。
新たな収益モデルができれば、売上・利益が更に伸びる可能性があります。新たな収益源のプレスリリースに注目です。
サイトの健全性の維持を図ることも重要なようです。信頼性の向上が会員獲得につながるからです。したがって、mixi内でのトラブルにも気をつける必要があるでしょう。
*システム上の懸念材料
会員増加に伴うアクセス数の急激な伸びは、システムを不安定にさせる要因になります。したがって、システム安定にどのような施策をとっているか気になるところです。
時々このようなシステム運用の安定性を強調するプレスをして安心してもらうことも必要ですね。http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060330/233820/
*事業等のリスク
「事業等のリスク」という項目に32項目リスクを挙げています。
ちょっと気になったのは次のことがあります。
・SNS人口・・・平成19年3月末に1042万人になるらしいです(ホント?)
・Yahoo!等経由の利用者・・・4割ぐらいるので、SEO等の対策をしているらしいです。mixiみたいな有名サイトもSEOやっているんですね。
・今後の人材戦略・・・今後の急速な事業拡大に応じて採用をしていくらしいです。
・mixi内の検索機能・・・gooの検索エンジンを使っているらしいです。
・SNSの法規制・・・「インターネット異性紹介事業」に該当しないと判断しているとしています。そもそも、「インターネット異性紹介事業」っていうものがあったんですね。
・特許紛争・・・平成18年7月に特許侵害を理由にシステム利用停止を求められているらしいです。今後の動向が心配です。
・米国SNS業者の特許取得・・・特許に抵触するとなると影響が予想されます。
・資金調達の使途・・・設備投資とは書かれていますが、設備投資計画を見るとまだまだカネ余りとなりそうです。資金の有効活用が課題ですね。
・配当政策・・・内部留保を優先させると書いています。今まで配当はしたことが無いようです。資金使途がないなら、今後は配当を検討するべきなのでしょうね。
*本社
渋谷マークシティにあるようですが、3倍に増床しています。月30千円/坪で借りているようです。
渋谷ですと25千円ぐらいが相場みたいなので、まとまって広いところを借りている分ちょっと割高のようです。
予定としては、平成21年3月までにあと3倍ぐらいに増床する予定のようです。
*株主
株主は6名しかいません。
社長の笠原氏と取締役のバタラ氏、ネットエイジ関係2社、サイバーエイジェント関係2社です。
*取締役の報酬
34M(6名)です。利益の割りに遠慮気味ですね。
*貸倒引当金
2から3%ほど積んでいます。「投資その他の資産」の「その他」に対して全額引き当てを行っています。意外にこの業界は貸倒があるのかもしれません。
*従業員特別精算金
裁量労働制部分の精算だそうです。最近労働基準監督署がうるさいので、将来のリスクを無くす目的で精算したと思われます。
公開審査の項目で裁量労働はチェックされるのかもしれません。
*売掛金の回収期間
41日のようです。末締め翌10日払いぐらいで回収していると思われます。
全体的に概括すると、毎期売上の伸びが倍々と順調に伸び、当期純利益率も30%と高水準、計上した利益をほとんどキャッシュで回収して蓄えていることが分かります。
ここまで良いと果たして公開する必要があったのかな?と思えてきます(ネットエイジの公開に絡んでると深読みしてしまいそうです)。
設備投資では使い切れないと思われます。今後、資金の使途が課題になってくるのかなと思います。
*1 正確には、「上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」といいます。内容はほぼ有価証券報告書と同じですが、特別情報と株式公開情報が追加されています。特別情報は、何か特別なことが記載されているわけではなく、過去3期分(直前5~3期)の財務諸表が記載されているだけです(監査は通常されていません)。
今回は、まじめにⅠの部(*1)を読んで分析してみたいと思います。
*会社名
平成18年2月にイー・マーキュリーからミクシィに変更しています。
*売上
第3期から第7期にかけて売上が毎年倍々に増えています。(M:百万円)
71M → 144M → 303M → 739M → 1,893M
*経常利益
第5期から黒字化したようです。
売上高経常利益率は、3% → 22% → 48% と超優良会社になっています。
*当期純利益
経常利益と同様、第5期から黒字化しています。直近(第7期)は576Mです。
売上高当期純利益率は、2% → 13% → 30% と、こちらも言うことがありません。
*総資産
毎年倍々に増えてきます。現在は、13億円です。
*自己資本比率
57% B/Sを見ると、無借金経営でした。
*自己資本利益率
直近(第7期)で119%というとんでもない利益を稼いでいます。
100%を超えているので、自己資本より利益の方が多かったことになります。
なお、計算式は、当期利益÷((期首純資産+期末純資産)÷2)です。
*営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動からキャッシュを594M稼いでいます。当期純利益とほぼ同額です。
稼いだ利益をきっちり現金で回収しているということです。
*期末キャッシュ残高
710Mあります。規模の割りにかなりのキャッシュリッチな会社です。
純資産とほぼ同額ですから、稼いだお金をほとんど分配していないことが分かります。
これからは、貯めたキャッシュをどう使うかが課題になりそうです。
*従業員数
直近で、正社員39名、アルバイト等18名と、かなり少ない人数で会社を運営していることが分かります。
4年前はなんと、従業員は1名(アルバイト6名)だったようです。
*会社の沿革
もともと社長が始めた「Find Job!」というIT系求人情報サイトを有限会社化し(平成11年)、その後「@Press」というニュースリリース配信代行事業を開始。平成16年に「mixi」の運営を開始し、現在に至っています。
なお、「@Press」は平成17年に営業譲渡しています。
*事業内容
①mixi
広告枠の販売、プレミア会員サービス
②Find Job!
Web掲載料収入
*従業員
平均年収454万円、平均勤続年数1.2年、平均年齢28歳です。
従業員のほとんどは入社間もないようです。勤続年数の短さは、仕事がきつくてやめていっているというより、今まで少ない人数で運営していたが、最近人が増えてきたと見るべきでしょう。
従業員が増えてきてはいますが、まだまだ少人数で効率的に運営していることが分かります。
*事業別業績
mixiの売上高は、640M、Find Job!の売上は、1,221Mです。
売上比率は、1:2ぐらいの割合です。
伸び率は、mixiが47倍(!)、Find Job!が1.7倍ですから、売上比率は近づいてくることが予想されます。
*@Pressについて
17年8月に1億円で営業譲渡しています。
売価がそのまま譲渡益になっているので、権利(営業権)を売却したのではないかと予想されます。
直近の売上が5ヶ月で3千万ほどだったので、人件費がどれぐらいあるか分かりませんが、すぐに回収できる気がします。
なお、売却先はネットエイジキャピタルパートナーズという取締役の西川氏の会社です。
関連当事者の注記に記載していますが、取引価格が妥当だったのか(安値で馴れ合いの売却をしていないか)気になるところです。
公開直前のこのような関連会社の取引は、不要な憶測をされてしまうので、本当は控えた方が良かったのではないかと思われます。
証券会社や取引所の審査でも根掘り葉掘り聞かれて、問題が無かったことを信じるしかありません。
*mixi事業の懸念材料
月間閲覧数が60億PV(ページビュー)となっているので、Yahoo!の約5分の1、ライブドアの10倍ぐらいの閲覧数です。
閲覧数の伸びが今後の収益向上のキーとなっていると考えられます。
また、現在は広告収入が収益のほとんどを占めていますので、収益モデルの多様化も課題でしょう。
新たな収益モデルができれば、売上・利益が更に伸びる可能性があります。新たな収益源のプレスリリースに注目です。
サイトの健全性の維持を図ることも重要なようです。信頼性の向上が会員獲得につながるからです。したがって、mixi内でのトラブルにも気をつける必要があるでしょう。
*システム上の懸念材料
会員増加に伴うアクセス数の急激な伸びは、システムを不安定にさせる要因になります。したがって、システム安定にどのような施策をとっているか気になるところです。
時々このようなシステム運用の安定性を強調するプレスをして安心してもらうことも必要ですね。http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060330/233820/
*事業等のリスク
「事業等のリスク」という項目に32項目リスクを挙げています。
ちょっと気になったのは次のことがあります。
・SNS人口・・・平成19年3月末に1042万人になるらしいです(ホント?)
・Yahoo!等経由の利用者・・・4割ぐらいるので、SEO等の対策をしているらしいです。mixiみたいな有名サイトもSEOやっているんですね。
・今後の人材戦略・・・今後の急速な事業拡大に応じて採用をしていくらしいです。
・mixi内の検索機能・・・gooの検索エンジンを使っているらしいです。
・SNSの法規制・・・「インターネット異性紹介事業」に該当しないと判断しているとしています。そもそも、「インターネット異性紹介事業」っていうものがあったんですね。
・特許紛争・・・平成18年7月に特許侵害を理由にシステム利用停止を求められているらしいです。今後の動向が心配です。
・米国SNS業者の特許取得・・・特許に抵触するとなると影響が予想されます。
・資金調達の使途・・・設備投資とは書かれていますが、設備投資計画を見るとまだまだカネ余りとなりそうです。資金の有効活用が課題ですね。
・配当政策・・・内部留保を優先させると書いています。今まで配当はしたことが無いようです。資金使途がないなら、今後は配当を検討するべきなのでしょうね。
*本社
渋谷マークシティにあるようですが、3倍に増床しています。月30千円/坪で借りているようです。
渋谷ですと25千円ぐらいが相場みたいなので、まとまって広いところを借りている分ちょっと割高のようです。
予定としては、平成21年3月までにあと3倍ぐらいに増床する予定のようです。
*株主
株主は6名しかいません。
社長の笠原氏と取締役のバタラ氏、ネットエイジ関係2社、サイバーエイジェント関係2社です。
*取締役の報酬
34M(6名)です。利益の割りに遠慮気味ですね。
*貸倒引当金
2から3%ほど積んでいます。「投資その他の資産」の「その他」に対して全額引き当てを行っています。意外にこの業界は貸倒があるのかもしれません。
*従業員特別精算金
裁量労働制部分の精算だそうです。最近労働基準監督署がうるさいので、将来のリスクを無くす目的で精算したと思われます。
公開審査の項目で裁量労働はチェックされるのかもしれません。
*売掛金の回収期間
41日のようです。末締め翌10日払いぐらいで回収していると思われます。
全体的に概括すると、毎期売上の伸びが倍々と順調に伸び、当期純利益率も30%と高水準、計上した利益をほとんどキャッシュで回収して蓄えていることが分かります。
ここまで良いと果たして公開する必要があったのかな?と思えてきます(ネットエイジの公開に絡んでると深読みしてしまいそうです)。
設備投資では使い切れないと思われます。今後、資金の使途が課題になってくるのかなと思います。
*1 正確には、「上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」といいます。内容はほぼ有価証券報告書と同じですが、特別情報と株式公開情報が追加されています。特別情報は、何か特別なことが記載されているわけではなく、過去3期分(直前5~3期)の財務諸表が記載されているだけです(監査は通常されていません)。