世態迷想・・抽斗の書き溜め

虫メガネのようであり、潜望鏡のようでも・・解も掴めず、整わず、抜け道も見つからず

残像(13)小学校・木造校舎の中3階

2018-03-19 | 記憶の切れ端

 

学校には、威厳を感じさせる堂々とした講堂が別建てであった。

 

上級生になると講堂の隣校舎2階の教室に移った。

2階への階段が校舎両端にあって、彫刻が施された手すりが、

踊り場のところで流れるような曲線になっていて、

子供の目にもその形は気持ちよく、撫でながら上り下りしていた。

この校舎の両端に中3階に半ば倉庫化していたが、

西洋風な雰囲気で秘密に独占したくなる小部屋もあった。

 

講堂の舞台裏探検

古くて貫禄のあるどっしりとした講堂だった。

入り口の厚い木の扉さえ、威厳を現していた。中へ入ると、

ぴかぴかの板張り床がどこまでも広くて感じられ、壇上は遠くに見えた。

窓際も壁際も四方は腰高の板張りになっていて、

そこさえもよく磨かれ光りを放っている。

教室全員で、わーっと一斉に雑巾がけをしていた光景が目に浮かんでくる。

 

この堂々とした講堂に、

僕らが発見した秘密の冒険ルートがあった。

舞台の裏廊下には出演者用の控え室が数室並んでいて、行事でも予定されてない限り、

そこに人が入って来る事は滅多になかった。 

あるとき、僕らはその裏廊下と舞台の背景壁の間に、

細身の子供の身体がやっと入るような隙間があることを発見した。

体をよじってそこから潜り込むと、

そこは天井裏などにも通じる吹き抜け状になっていた。

その先にこそ、先生たちが気づいていない未開の探索エリアがあったのである。

縦横に走った構造材をよじ登る秘密っぽさ、登りきると講堂の天井裏が広がっていた。

控え室や講堂の広い天井裏を匍匐で這った。迷路なればこそ心を騒がせてくれる。

僕は軽業的な動きを好み、こうした冒険には臆することなく参加していた。 

こうして僕らは、この堂々とした講堂の裏の姿を知ることになったのだ。

そこは、荒削りの材木が様々に走っている、埃臭いばかりのがらんどうであった。

放課後などに、

数人で秘密を共有し、飽きずに忍者のごとく蠢き回って面白がっていた

天井板が破れたら落下して大けがしたに違いない。

僕たちにはそういう注意力より、冒険心がはるかに勝っていた。

今の時代、父兄たちに気づかれでもしたら、

目くじらを立てて学校を責めるに違いない。

時がどうあれ、少年少女は秘密の探検エリアを目指すべきだ。

 

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