学校には、威厳を感じさせる堂々とした講堂が別建てであった。
上級生になると講堂の隣校舎2階の教室に移った。
2階への階段が校舎両端にあって、彫刻が施された手すりが、
踊り場のところで流れるような曲線になっていて、
子供の目にもその形は気持ちよく、撫でながら上り下りしていた。
この校舎の両端に中3階に半ば倉庫化していたが、
西洋風な雰囲気で秘密に独占したくなる小部屋もあった。
講堂の舞台裏探検
古くて貫禄のあるどっしりとした講堂だった。
入り口の厚い木の扉さえ、威厳を現していた。中へ入ると、
ぴかぴかの板張り床がどこまでも広くて感じられ、壇上は遠くに見えた。
窓際も壁際も四方は腰高の板張りになっていて、
そこさえもよく磨かれ光りを放っている。
教室全員で、わーっと一斉に雑巾がけをしていた光景が目に浮かんでくる。
この堂々とした講堂に、
僕らが発見した秘密の冒険ルートがあった。
舞台の裏廊下には出演者用の控え室が数室並んでいて、行事でも予定されてない限り、
そこに人が入って来る事は滅多になかった。
あるとき、僕らはその裏廊下と舞台の背景壁の間に、
細身の子供の身体がやっと入るような隙間があることを発見した。
体をよじってそこから潜り込むと、
そこは天井裏などにも通じる吹き抜け状になっていた。
その先にこそ、先生たちが気づいていない未開の探索エリアがあったのである。
縦横に走った構造材をよじ登る秘密っぽさ、登りきると講堂の天井裏が広がっていた。
控え室や講堂の広い天井裏を匍匐で這った。迷路なればこそ心を騒がせてくれる。
僕は軽業的な動きを好み、こうした冒険には臆することなく参加していた。
こうして僕らは、この堂々とした講堂の裏の姿を知ることになったのだ。
そこは、荒削りの材木が様々に走っている、埃臭いばかりのがらんどうであった。
放課後などに、
数人で秘密を共有し、飽きずに忍者のごとく蠢き回って面白がっていた。
天井板が破れたら落下して大けがしたに違いない。
僕たちにはそういう注意力より、冒険心がはるかに勝っていた。
今の時代、父兄たちに気づかれでもしたら、
目くじらを立てて学校を責めるに違いない。
時がどうあれ、少年少女は秘密の探検エリアを目指すべきだ。
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