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世界はやがてジャパネスクの時代を迎える(非公式)

上海で今、何が動いているのか(2)

2015-05-27 | 民間外交・論調・出張報告

原田武夫@上海復旦、です。
間も無く出発!
その前に…またまた公式ブログにてコラムをアップしました(^^)
どうぞご覧下さいませ!
http://haradatakeo.com/?p=58527

さ~てと!
帰るぞ~


https://www.facebook.com/iisia.jp/photos/a.778319942239229.1073741829.497706833633876/871605689577320/?type=1



2015年05月25日

上海で今、何が動いているのか(2) (連載「パックス・ジャポニカへの道」)

 

当地で25日まで中国・上海にある復旦大学で開催されている「上海フォーラム」において24日、「日中関係とアジア金融協力」と題し、我が国財務省の山崎達雄財務官が特別講演を行った。私自身、22日から上海入りしており、これに出席してきた。

元来が「オフレコ」という扱いでの講演であったので、そこで同財務官が語った内容の全てを明らかにするわけにはいかないが、(真に国益を深刻な形で損ねないという意味で)差しさわりが無い範囲内であり、かつ興味深いと思われた点を挙げるならば以下のとおりであった:

 

―一般には「寝耳に水」と思われているかもしれないアジアインフラ投資銀行(AIIB)について、中国の財務当局から我が方に対して働きかけがあったのは昨年(2014年)の早い段階からであった。その後も事務レヴェルでの協議は続けてきている

―そうした中国側からの再三再四の働きかけを踏まえた上でも大きな疑問として残るのが、「なぜアジア開発銀行(ADB)ではダメなのか」という点である。アジアにおいて今、巨大なインフラ投資需要があることは確かだが、既存の枠組みの中で対処しようとすれば出来ないことはないのである。これに対して中国側からは「米州開発銀行や欧州復興開発銀行といった”老舗”以外にもそれぞれの地域に開発銀行は存在しており、日本側の主張は肯んずることが出来ない」との反応が繰り返されるばかりである

―そもそも常設理事会すら予定されていないアジアインフラ投資銀行(AIIB)が、様々な課題を抱えることになる投資案件に適切な対処が出来るのかが疑問である。とりわけ投資案件を見つけるというそもそもの作業、さらには見つけたとしても民間資金をそこに呼び込むようにした後に万が一にも不測の事態が生じないよう、対象国政府に保証をさせるといった作業がこの新しい銀行に出来るのかが疑わしい。そもそも全世界に事務所も未だないわけであり、とりわけ前者の作業(「適当な投資案件の発掘」)について、アジア開発銀行(ADB)がこれまでの知見を踏まえ、きっちりとサポートしていく体制を創るのが涵養である

―ちなみに我が国マスメディアではしばしば、「米国の顔色を見ながら、我が国政府はアジアインフラ投資銀行(AIIB)入りの可否を考えている」と報じられているが、そんなことは決してない。以上述べたとおり、アジアインフラ投資銀行(AIIB)には専門家の観点からすると余りにも詰まっていない点が数多くあるのであって、これらを見極めながら我が国としては判断すべきだ

 

この様に山崎達雄財務官が述べる中、席上では我が国の外務省・財務省・経済産業省・国土交通省の連名によるペーパー「質の高いインフラパートナーシップ ~アジアの未来への投資~」が配布された。英訳はされているものの、図やグラフの一つも入っていない、霞が関エリートたちの手によることが明らかなテキストである。

孤軍奮闘されている山崎達雄財務官の姿を拝見しながら、「財務官」という職責が実に大変なものであるのかをあらためて痛感した次第である。無論、財務省の国際畑の者たちが総出でとりかかっている問題とはいえ、結局のところ、恒常的にこのことについて”喧伝“してまわらなければならないのは「財務官」だからだ。しかし何せ相手は中国なのである。物量は遥かに我が国を上回っており、しかも国家をあげてのメディア・インターネット戦略を巧みに駆使している。そうした事情も考えながら、単に霞が関の「誰が責任を負うべきなのか」などという内向きな議論に例によって入り込むのではなく、この苦境から最適解を如何にして導き出すのか。―――このことに我が国に生きる私たち日本人全員が専心すべきだと物事が音を立てて動いている現場・上海にて改めて感じた次第だ。

今回の「上海フォーラム」における論調では、現在、世界都市ランキングで上海は11位。ちなみにニューヨーク、ロンドン、パリに次いで4位を占めるのが東京なのだという。しかし10年前には100位以下であったことを考えるならば、この「魔都」上海の復活ぶりは目覚ましいものがあるのだ。しかも香港やシンガポールとした先達とでもいうべき地域からは「上海フォーラム」に都市開発という観点から多数の専門家たちが参加し、この地の知的エリートたちに対して「都市国家建設の要諦」をインプットしていたことも印象深い。要するに「新しい龍はここにいる」というわけなのである。

さらに巨視的観点から見るならば、そもそも「中華人民共和国」とは一体何だったのであろうか。現在の米欧勢が中心である世界秩序の根本において金融資本主義のシステムを創り上げたのはユダヤ勢=セファラディ勢+アシュケナージ勢である、だが、そうした彼・彼女らにも唯一の対抗勢力がいた。それが華僑・華人ネットワークだったのである。

「敵は中国にあり」

そう理解するや否や、ユダヤ勢が一斉に華僑・華人ネットワークの切り崩しにかかったとしても全く不思議ではないのである。いや、そう考えることによってこそ、「なぜ大英帝国は清朝をアヘン漬けにしようとしたのか」「米欧帝国主義列強はなぜ我が国の明治維新を許し、日清戦争、そして日中戦争を行わせたのか」さらに言えば「蒋介石や毛沢東の傍らには常に米欧人が付き従い、アドヴァイスをしていたのか」など全てが理解出来るのである。そして極め付けがマルクスの「資本論」という原典からは全く該当しない状況に置かれていた中国において赤い星(毛沢東)による「共産主義革命」が起きるように仕向け、かつこれをあえて放置したことだったのではないだろうか。ようやく経済的に立ち直りかけたところで、ここ上海において(そう「上海」から(!))破滅的な「文化大革命」が始まり、全てを破壊しつくしたのである。

しかし全てが無くなったはずの中国は「華僑・華人ネットワークの全て」では無いのである。ほんのわずかばかり残った種が再び芽吹くよう、どこからともなく同法の手が差し伸べられ、やがてはバブルへと至るまで「龍」は生き返ったのである。無論、そのことを一番知っているのはユダヤ勢のはずである。それではなぜあえて、この「新しい龍」を許しているのか。慈悲なのか?それとも徹底した無慈悲さが故に、遂には破滅にまで華僑・華人ネットワークを導こうという巨大な戦略によるものなのか??

焦点は来年(2016年)にもはや主戦場としての地位をほしいままにしつつあるG20の議長国を他ならぬ中華人民共和国がつとめるところから始まる。「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」を巡るストーリーはそれに向けた大流のほんの一端に過ぎない。

そうした今正に始まった世界史の激流の中で、あらためて激突し始めた牛(ユダヤ勢)と龍(華僑・華人ネットワーク)の狭間をかいくぐり、最後は全てが破裂した後に残るのが他ならぬ我が国であるということを確保するために、私たち日本人自身が一体何を考え、どのようにして前に進めば良いのか。時代精神(Zeitgeist)は私たちにそのことを問いかけ始めている。


2015年5月25日 上海・復旦にて

原田 武夫記す


上海で今、何が動いているのか(2) (連載「パックス・ジャポニカへの道」)

http://haradatakeo.com/?p=58527


 

上海で今、何が動いているのか(1)

http://blog.goo.ne.jp/nobody-loves-you/e/a30dcfe1f2caf5c2c0ce248e89eaeb17

 

今日は復旦大学における上海フォーラムの初日。

http://blog.goo.ne.jp/nobody-loves-you/e/8abca5d37a4ce0609da218dc5d3dd4d3

 


 

Especially in Shanghai, I felt a breeze of “Zeitgeist”, since infrastructure in many fields are obviously standards which manage to satisfy the westerners. It was 1999 when I stepped in this city for the first time, which was once called “city of enigma (魔都)” before WWII. There was indeed only few infrastructure, for example, only one subway line, which you could make use of at that time. The famous landscape of “BUND” was being reconstructed, and you could find only an oddly shaped television tower beyond the Hangpu River. Nevertheless, “Time flies like an arrow”, and the new economic zone “Pudong” is full of skyscrapers. There, nobody believes in the end of China’s prosperity. Having fully forgot shadow of the Cultural Revolution in 1960s and 70s, which was originally started in Shanghai, everybody simply keeps “China dream”. “At least for four or five years, China’s economic development will continue and its strength will be shown to all over the world”, says one of young and talented Chinese lawyers I met this time.

 

Warning! Bloody Christmas Eve Is Approaching.

http://takeoharada.com/2014/12/13/warning-bloody-christmas-eve-is-approaching/


上海で今、何が動いているのか(1)

2015-05-27 | 民間外交・論調・出張報告

原田武夫@上海、です。おはようございます。
今日も引き続き上海フォーラム出席です。元気に行って参ります!
昨日の会合に関する所感をまとめてみました。どうぞ下記をクリックして公式ブログよりご覧下さいませ!
http://haradatakeo.com/?p=58515

 

https://www.facebook.com/iisia.jp/photos/a.778319942239229.1073741829.497706833633876/871140699623819/?type=1


 

2015年05月24日

上海で今、何が動いているのか(1) (連載「パックス・ジャポニカへの道」)

 

2015年5月23日より中国・上海を再訪し、この地にある中国第3位のランキングを誇る復旦大学が主催する「上海フォーラム(Shanghai Forum)」に出席している。会合そのものは同25日まで続くが、いくつかの重大な進展があったのでこの場に記しておきたい。

そもそもこの「上海フォーラム」は例えば世界経済フォーラム(WEF、ダボス会議)等に比べると未だ我が国において認知度が低いイヴェントだ。しかしこのフォーラムは2005年に初回が開催されて以来、10周年を誇るものだ。主催は上述のとおり復旦大学(1905年創立。名前の由来は再び朝が訪れ、輝きを取り戻すという趣旨の漢詩にあり、清朝末期に追い詰められた中国人の知的エリートたちが祖国の再興のために設けた教育機関が原型である)だが、そのための資金をサポートしているのは韓国屈指の企業集団の一つであるSKグループである。つまり「中韓合作」の企画なのであって、これに後述のとおり、米欧勢の専門家たちが集い、議論をする場になっているのである。東アジアにおいて今、何が語られ、何が本当のところ動かされそうになっているのかを知るには絶好の機会であることはすぐにお分かりになるのではないかと思う。

そこで気になるのは我が国からの出席者なのであるが、例によってかなり寂しいものであった。政治レヴェルでは越智隆雄・内閣府大臣政務官が招かれており、また行政という点では山崎達雄・財務省財務官が出席している。しかしそれ以外には出席者はほぼ皆無であり、我が国が未だに「対中関係」という国家関係の変動に囚われる余り、”ここ一番“という今のタイミングであるにもかかわらず、実に皮相な対応に終始していることが明らかだった。

主催者側もこの点について大いに不満に感じていると現地において聴いている。確かに政治及び官僚レヴェルでの出席はあるものの、実際のところ現在の中国においては「学術研究」は限りなく「情報機関」とも密接な世界のものであり、元来は静かに、そして継続して行っていくべきものなのである。中国側の意図としては、名門・復旦大学というブランドを用いつつ、こうしたことの「意味」が分かる“専門家”たちを寄り集わせることが本来の目的であったようなのであるが、そもそもインテリジェンスの「イ」の字を理解せずして育てられている我が国の学術研究者の多くはそのことを全く理解出来ないようなのである。

それ以上に、中国、とりわけかつて「魔都」とまで呼ばれた上海はもはや「中国第2位の都市」にとどまる存在ではない。グローバル・マクロ(国際的な資金循環)の本拠地の一つでもあり、そこに国家としての中華人民共和国が主導している「一帯一路(One Belt One Road)」政策が重なってきているのである。その分だけ全体像を理解するのは極めて難しくなっている一方、実に興味深い展開になっていることは言うまでもない。しかし哀しいかな、我が国の「中国研究者」はかつての意味での共産中国の延長線上でどうしても物事をとらえる癖があるため、世界中の華僑・華人ネットワーク、さらにはユダヤ勢=アシュケナージ勢の意図が渦巻く中で今、ここ上海で大きく動いているうねりをとらえることが出来ないのだ。「上海フォーラム」に研究費を捻出してでも来ようとする研究者が我が国から皆無であるのは、我が方の側におけるそうした完全に出遅れた姿勢があることによるのは火を見るよりも明らかであった。

会合の席上における議論は現下の東アジア情勢を如実に反映しており、グローバル・マクロ(国際的な資金循環)をベースにグローバル社会の全体像と未来を把握し続けることを営みとしている私にとっては実に興味深いものである。たとえばスポンサーである韓国勢であるが、昨今の経済不況を反映してか、旗色は悪く、遠慮がちな感が否めない。かつてのように「韓国が、韓国が!」といった調子ではない一方、分相応な仲介役としての役割を大国間で最低限確保して行こうという国家戦略をベースに席上の出席者全員が動いていた。

一方、「主催者」である中国勢は正に破竹の勢いといった感じである。我が国ではほとんど開催されることのないこの手の国際会議であるが、これを継続して運営し続けることには実に多くの困難が伴う。そうした中で今回の「上海フォーラム」は10回目を数えたわけであり、そうした実績を踏まえ「中国こそが東アジアの未来を担う主導役である」という自負が如実に感じられた(そうした様子を見るにつけ、過去10年にわたり、さらに「内向き」の対応ばかりに終始し、こうした国際会議を大学機関をベースに国家戦略として展開するというアイデアなど全く湧く余地のなかった我が国が嘆かわしく感じられてたまらない)。

そしてそうした中国勢が会合の席上、繰り返し述べているのが「一帯一路(One Belt One Road)」政策、すなわち「新しいシルクロード作り」である。アジアインフラ投資銀行(AIIB)も正にその実現のためのファイナンスを担う機関として構想されたわけであり、中国勢はそうした一連の動きが低迷するグローバル経済全体のためであるということを仕切りに繰り返していたのが印象深かった。

そうしたトーン・セッティングの上にありながら、各国からの「専門家」としての出席者たちは自らの国家戦略を説明し、これを正にこの現場で形成されつつある“論調・文脈(narrative)”の中に巧みに取り込もうとしている。フォーラムとは中国語でいうと「論壇」と呼ばれるが、「論壇」とは正にそうしたメタ・レヴェルでの知的闘争の現場なのである。一方的に物事を言っても聞く耳を持たれないのであって、相手の発信しようとする文脈を巧みにとらえつつ、そこに柔道の技をかけるような形で巧みにこちらのメッセージを折り重ねていく。そうした形で更に次の文脈を創り上げていくのがこうした場で行うことなのである。政策担当者が一方的にスピーチを行えばそれで良いというわけでは全くないのである。

たとえば今回、ロシア勢からはウラジミル=ヤクーニン・ロシア鉄道総裁が出席していたが、その基調演説の中でロシア勢が「鉄道」と「地の利」を巧みに用いて、全方位外交を展開しようとしていることを、実に巧みな英語で説明しているのが大変印象的であった。旧ソ連時代であればいずれも全く想像だに出来なかったことである。

そして極め付けは、こうしたロシア勢が専心し、中国勢が「一帯一路」政策として推し進めようとする大規模鉄道整備計画のファイナンスを行うべく創られているアジアインフラ投資銀行について、「あくまでも個人的な考えではあるが」と言いつつ、こう述べていたのが大変気になった。

「アジアインフラ投資銀行は実に有意義なプロジェクトだ。しかし、一つ解せないことがある。それはこの銀行の準備通貨が米ドル建てとされていることである。米国勢の力が明らかに衰えている中、米ドルに依存する体制を最初から構築してしまって良いのだろうか。むしろ複数の通貨により全く新しい仕組みを創り上げるべきだと考える」

要するにロシア勢は、中国勢が実のところこのアジアインフラ投資銀行というプロジェクトを通じて米国勢と裏では結託しているということを見抜いているというわけなのだ。表向き米国勢はこのプロジェクトとは反目しているかのように装っているが、そこで用いられる通貨があくまでも米ドル建てというのであれば、最後の最後にこの銀行そのものの手綱を握っているのは米国勢ということになるのである。ちなみに今回の「上海フォーラム」において最大のゲストはバーナンキ元米連邦準備制度理事会(FRB)議長である。このことからも中国勢が米国勢と、少なくとも超国家的な(=グローバルな)ツールとしての通貨という次元では蜜月の関係にあることが分かるのである(逆に言うと、このことに不満なロシア勢とは、我が国としても特段の対応を行うことによって有益な関係を創ることが出来る余地があると考えるべきである)。

また現在、ロンドン・スクール・オブ・エコニミクス(LSE)で教鞭をとりつつ、米ピーターソン研究所の客員研究員でもあるサコマニ元イタリア財務大臣が非常に弁舌さわやかにこう述べていたのも大変気になった。

「国家間と言う意味でのグローバル金融の調整は今後、エマージング・マーケットの雄を含めた議論の場であるG20をメインとすべきである。同時に国際通貨基金(IMF)を中心とした全く新しい枠組みを創り、G20はこれをサポートすべきである」

さっと述べた下りであったが、これを聴いて私は脳天に落雷を受けたかのような感覚すら受けた。我が国において根拠なく様々な「陰謀論(conspiracy theory)」を語る向きが絶えないわけであるが、他方で現実問題としては、ロンドン・シティ(City of London)やその実際の主である大陸欧州勢の金融エリートたちは着実に「次」に向けて全く現在とは異なる仕組みを考えていることがこれで明らかになったからだ。しかもイタリア勢の口を用いつつ、この古くて新しい「魔都」上海でそのことを分かる者には分かるように露呈するあたりが、非常に心憎いというわけなのである。

それと同時に私自身、G20を支えるB20のメンバーとしてこうした大きな渦の中に関わっているだけに、自らの責任の重さを痛感せざるを得なかった。G20及びB20の議長国を来年(2016年)務めるのは中国勢である。密かな戦略を胸にしまい込みつつ、彼ら欧州勢が中国勢、とりわけ「上海」という場を使うことによって壮大なプランを実行していくことは間違いないと感じた。

私自身は今回、日中韓の自由貿易協定(FTA)について議論を行うセッション(Reshaping East Asia through FTAs: Visions, Challenges and Strategies)にパネリストとして出席した。もっともこうしたセッションのタイトルを読んで読者は必ずや大きな違和感を受けたのではないかとも思う。なぜならば我が国においては円高によって交易条件が悪化したかつてならまだしも、円安誘導を旨とする「アベノミクス」が始まって以降、我が国は米国勢との実質的な交渉である環太平洋経済連携協定(TPP)を除くと、この手の通商交渉に力を入れてきているとはおよそ言えない状況が続いているからだ。

席上展開された議論はその意味で実に興味深かった。52か国もの世界各国との間で自由貿易協定(FTA)を結んだと自負する韓国勢は、確かにテクニカルな部分においてこの分野で知見を誰よりも積んできていることが明らかだった。しかし環太平洋経済連携協定(TPP)については、自らのこうした努力が水泡に帰すということからあえて言及を避けていたように見受けられたのと共に、実際には自国の経済が崩壊の危機に瀕していることを御首にも出そうとしないあたりが気になった次第である。

他方、中国勢はというと、「日中FTA」あるいは「日中韓FTA」についてこれまで何度となく我が国に対して水を向けているにもかかわらず、全くもって本気で動こうとしないことにいら立ちを隠せない様子であった。しかも今回のパネリストたちはいずれも日本研究者たちであったことからも分かるとおり、中国勢の狙いは我が国であり、可哀想なことにこの問題について最も深い関心を寄せる韓国勢は蚊帳の外といった感じだったのである。そもそも「上海フォーラム」といった企画についてあえてスポンサーシップを引き受け、中国勢との関係において何とか命脈を保とうと韓国勢が務めているのと同じ苦しい状況がここでもうかがわれた次第である。

もっともこの手の「通商協定の専門家」たちが忘れている重大事が一つある。それは微に入り、細に入る協定テキスト文案に没頭する余り、「なぜそもそも自由貿易協定や経済連携協定が必要なのか。特定の地域を超えて、グローバル社会全体にとってそれはいかなる形で喫緊の意味を持つのか」という“話のそもそも論”を忘れてしまうという点なのだ。そこで私からは、「外交交渉の現場で受けた印象と知見に基づき、最も根本的なことを確認しておきたい」として、概略次のように述べておいた:

 

―「太陽活動の異変が気候変動を招き、とりわけ北半球の主要部で寒冷化を招く中、人体の免疫力が下がるからこそ、デフレ縮小化が不可逆的に進む」という新しい現実にグローバル社会は直面している。だからこそ、それを食い止めるために包括的な通商協定づくりを急ぐ必要があるのだ。それ以上でもそれ以下でもないことをまずは確認すべきだ

―他方で現下の問題は15~18世紀に前回生じた「寒冷化(小氷河期)」の中で過剰な経済活動を行うのを是とせざるを得なかった(そしてそれによって当時の経済縮小化を防ごうとした)米欧勢がそのままこれを続け、結果として生まれた金融資本主義が出口を失っているという点にある。「過剰な資本主義(excessive capitalism)」の問題である

―したがってそうした現状を踏まえる限り、最も重要なのは追い求めるべきは「過剰さ」ではなく、“一方で作用を加えれば他方で必ず反作用が生じるため、全ては全体の中で補いあっている”という意味での「相補性(complemantarity)」に他ならない。つまり復元力の原則に基づいてグローバル経済を整序していく必然性があるのであって、これを「陰陽」という形で古来、発想として受け継いできている東アジア(日中韓)はこれを前面に掲げ、その精神に基づいた新通商秩序の構築に励むべきである

―「相補性」はグローバル社会全体で考えるべきものであり、東アジアだけが地域的な取り組みを進めれば良いわけではない点にも留意しなければならない。ただし伝統として「陰陽」という発想を知っている東アジア勢が今後の取り組みをリードする余地は十二分にあると考えられる

―加えて言うと、通商交渉で最終的に常に課題となるのが国内世論の納得をどのように得るのかである。この点、「陰陽」と言う形で人口に膾炙した論理でもある「相補性」の原理を前面に出すことは、最終的に国内における世論形成に大いに役立つという観点で通商政策担当者が積極的に打ち出すべき施策の一つととらえるべきだ。難しい通商協定特有の概念をいくら並べ立てたところで、世論は反発するだけであり、ましてや韓国にせよ、中国にせよ、我が国は領土問題という別の次元での紛争を抱えているため、とかくそうした観点で情動的な方向へと議論が流れやすいことを食い止める必要がある

 

以上の私の議論を聴いて、普段は複雑怪奇な概念が並ぶ通商協定のテキストばかりを読んでいるであろう他のパネリストたちは正直、ほとんど理解出来なかったようだ。ましてやここ中国では戦後、「陰陽」は迷信・俗信の類と整理され、公的には淘汰されてきた歴史があるため、参加者たちは一様に複雑な表情を見せていたことも印象的であった。しかし、そうした中でグローバル・マクロを投資貿易の観点からウォッチしているパネリストの一人からは「大いに賛同したい」との発言があった他、現地有力経済メディアの記者からも「大変興味深いスピーチであった」と名刺交換を求められた。分かる人には分かる話、しかし全員がピンとくる話なのかというとそうではない「世界の重大事」であったようだ(ちなみに今回のスピーチ内容を敷衍させた論文は後日、「上海フォーラム」事務局より刊行される論文集に掲載予定である)。

躍動を続ける「魔都」上海。とかく「対中関係」という枠組みでだけ語られることの多いこの地であるが、グローバル・マクロという巨大な“龍”が大きくこの場で再びうねり始めたことも確かなのである。その手綱を握ることになるのは最終的に誰なのか、そしてその時、私たち日本人は如何なる役割を担うことになるのか。引き続き「魔都」の動きから目が離せない。

 

2015年5月24日 中国・上海にて

原田 武夫記す

 

上海で今、何が動いているのか(1) (連載「パックス・ジャポニカへの道」)

http://haradatakeo.com/?p=58515



 

原田武夫@上海、です。
上海フォーラムの続き。午前は山崎財務官の講演を拝聴。
大変そうだな~…(^_^;)

 

https://www.facebook.com/iisia.jp/posts/871207166283839


 

 


 

原田武夫@上海、です。
引き続き上海フォーラム。
大気汚染の統計値。紫がやばく、黄色から要注意。いやはや、まずいよ、これは…(^_^;)

 

https://www.facebook.com/iisia.jp/photos/a.778319942239229.1073741829.497706833633876/871255979612291/?type=1


 

 


 

上海で今、何が動いているのか(2)

http://blog.goo.ne.jp/nobody-loves-you/e/09d065349d7805552ebc19f48531c2d1

 

今日は復旦大学における上海フォーラムの初日。

http://blog.goo.ne.jp/nobody-loves-you/e/8abca5d37a4ce0609da218dc5d3dd4d3

 


 

カザフスタンが「第2のシリア」になる日

http://blog.goo.ne.jp/nobody-loves-you/e/c3c2b3c2d272559d7d5176d9f5659082

 

「崩壊し、新生するアメリカ??」 (Whiteboard Seminar vol.24)

http://blog.goo.ne.jp/nobody-loves-you/e/7ace2817a85dc0bf7f82f0fb0222af77

 

日本人が知らない「ダボス会議の時代の終わり」

http://blog.goo.ne.jp/nobody-loves-you/e/b46ed533971af136e2922b1935aad3d0


今日は復旦大学における上海フォーラムの初日。

2015-05-27 | 民間外交・論調・出張報告

原田武夫@上海です。おはようございます。
今日は復旦大学における上海フォーラムの初日。それに先駆けて、まずは英語ブログで私の考えをまとめてみました
是非ご覧ください!
では…初日、頑張ります

http://haradatakeo.com/?p=58504

 

https://www.facebook.com/iisia.jp/photos/a.778319942239229.1073741829.497706833633876/870559193015303/?type=1


 

2015年05月23日

Capitalism Never Stops.

 


 

 



 

原田武夫です。
上海フォーラム、間も無く始まります!
この会議、10年もやってきたんですよね…
その間、日本は何をしてきたんだろう?アジア的責任…とは?(^^)

 

https://www.facebook.com/iisia.jp/posts/870590903012132


 

 


 

原田武夫@上海、です。
ロシア鉄道総裁がロシアの地政学的戦略を説明。世界経済の回復のためには、新しいSilk Roadが必要だ、と。
なぜ我が国は、Silk Roadの東端は我が国だと戦略的に言わないのか?

日本の未来が危ない。
なんとかしなければ。

 

https://www.facebook.com/iisia.jp/photos/a.778319942239229.1073741829.497706833633876/870627726341783/?type=1


 

 


 

原田武夫@上海です。
上海フォーラム続行中。
周恩来の通訳を1970年代頭から務めた、呉建民大使が熱弁。
周恩来の発言に繰り返し言及。歴史を感じます。
しかも周恩来…
深い深い華僑の何かがあります。

 

https://www.facebook.com/iisia.jp/posts/870645593006663


 

 


 

原田武夫@上海、です。
私がスピーカーを務める日中韓FTAセッション始まってます。
中国側からこんな発言が…
「経済的に見て不可欠な日中FTAを政治案件化し、拒んでいる日本はおかしい」
おい!言って良いことと悪いことがあるぞ(≧∇≦)発言します!

 

https://www.facebook.com/iisia.jp/posts/870737162997506


 

 


 

上海で今、何が動いているのか(1)

http://blog.goo.ne.jp/nobody-loves-you/e/a30dcfe1f2caf5c2c0ce248e89eaeb17

 

上海で今、何が動いているのか(2)

http://blog.goo.ne.jp/nobody-loves-you/e/09d065349d7805552ebc19f48531c2d1

 


 

美の世界は・・・本当に素敵ですね(^^)/

http://blog.goo.ne.jp/nobody-loves-you/e/d8abc2665f72be1fa4b553c4e96da54b

 

「今、目の前で起きている世界の構造変化とは?」 (Whiteboard Seminar vol.23)

http://blog.goo.ne.jp/nobody-loves-you/e/c1f71915b36e8905da4462e319dd1b62

 

原田武夫Whiteboard Seminar vol.23 < 6:59~ >

https://youtu.be/JKpI8kcUkx4?t=6m59s

 


 

Once this will happen, money will seeks a safe haven and be squeezed to Shanghai, I suppose. Will the PRC be the ultimate winner of this end game? I would say, “NO”. Why? You can find the answer when you remember the ridiculous visit of Xi Jinping not to the US President but to the Japanese Emperor Akihito just before his inauguration to State President of the PRC. Or you may remember the fact that wealthy Chinese investors und families have been rushing for JPY by selling Renminbi massively. The more highly the PRC’s economy is developing, the more JPY will be needed and stored by the Chinese. Unless China’s economy will be backed by the Japanese, nobody including the Chinese themselves will believe in its future.

 

Warning! Bloody Christmas Eve Is Approaching.

http://takeoharada.com/2014/12/13/warning-bloody-christmas-eve-is-approaching/


旧朝鮮総連施設を真言宗僧侶が購入表明

2015-05-27 | 北朝鮮

 □■□ IISIA代表・原田武夫からの〈メッセージ〉 □■□
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●「今日の焦点!」
 ~これを読めばマーケットとそれを取り巻く国内外情勢のツボが分かる~
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⇒“今日の焦点”はズバリ:

 「旧朝鮮総連施設を真言宗僧侶が購入表明」です。


⇒その理由は……:

 ─国際情勢を見ていて難しいのは表面的な動きだけでは必ずしも未来は
  分からないということです。さりとてコツが無いわけではありません。

 ─例えば一つ言えるのは「好意的な対応を示すこと」が次のステップ、具体
  的には交渉開始につながるといった点です。些細な動きですが重要です。

 ─このことは非常に“気難しい国家”について特にあてはまります。
  相手が一筋縄でいかないからこそ、少しずつ詰めていくのです。

 ─北朝鮮という国がその一例です。表向き発する言葉とは別にいわば
  「メタ言語」でやりとりをする外交のスタイルを示す国です。

 ─もっともこうした「行間を読む」といったこと自体は、東西冷戦時代には
  当然でした。それが「ベルリンの壁崩壊」以来、無くなったわけです。

大切なことは今回の「購入表明」が意味している本当のところです。
問題となっている僧侶は安倍晋三総理大臣と深いつながりを持っています。

他方で、北朝鮮は今、明らかに手詰まりです。
米国勢が度重なる「民間レヴェル」での交渉によっても動かないからです。

そのような中、我が国の側は我が国の側で「参院選」が迫っています。
経済カードが色あせる中、「外交カード」を為政者が使うという手はあります。

このように両者の利益が一致するのであれば、これまで全く動かなかった日朝
関係は一気に動き始めるはずなのです。正に青天の霹靂、として。

「何と酔狂な人物がいるものだ」と考えている暇はありません。
明らかに“今”の動きは“近未来”に続いています。

この動きから……目をそらしては、なりません。

 

(メールマガジン 2013年3月27日号 より)

http://archive.mag2.com/0000228369/index.html


 

– IT’S THE MONEY BURIED UNDER THE BUILDING OF THE GENERAL ASSOCIATION OF KOREAN RESIDENTS IN JAPAN THAT MATTERS. DPRK still holds a huge amount of money under this building, which was once successfully bidded by a Japanese company called MARUNAKA HLD. Before Japanese treasure hunters, the National Tax Agency, will come to find it, DPRK urgently needs to get it back and dispatch to Pyongyang. For that, a sea route from Niigata by the legendary“Mangyongbong-92″ must be reopened with official permission of the Japanese authority. As long as the transfer will continue, DPRK is willingly to talk with Japan. When it will be finished, the North Koreans will surely refuse to move forward. So, it’s only money that matters.

 

“Moment of the Truth” Has Come in Pyongyang?

http://takeoharada.com/2014/06/28/moment-of-the-truth-has-come-in-pyongyang/


 

(※拡散希望!) テーマはずばり「日朝交渉はどうなるのか?」

http://blog.goo.ne.jp/nobody-loves-you/e/17a7bcf535f4882646d8cb51248d87b8

 

今回のテーマは・・・北朝鮮。 「なぜ?今??」 

http://blog.goo.ne.jp/nobody-loves-you/e/30c9474939c252390065d8915bc893c7

 

ミサイルを飛ばす北朝鮮と日本は本当に交渉できるのか? 動き始めた「日朝交渉」の行方をあらかじめ考える

http://blog.goo.ne.jp/nobody-loves-you/e/68201f2e7919b3ac9cab8625019f691d

 

原田武夫 北朝鮮 万景峰号でお宝を移動 < 2:16~ >

https://youtu.be/PtQaOZgM7SM?t=2m16s

 

朝鮮総聯本部ビル売却問題

http://ja.wikipedia.org/wiki/朝鮮総連本部ビル売却問題

 

池口恵観

http://ja.wikipedia.org/wiki/池口恵観