あらためてまして・・・おはようございます!原田武夫です。
今朝も元気に・・・恒例のYahoo!ニュースでのコラム、アップ致しました。
「ロシア」に対するイメージ、是非刷新されてください。
私たちのイメージを大きく打破する現実が動いています。
誰があの国による金融支配を考えているでしょうか。。
是非下記よりご覧ください!
(※そしていつもと同様、Yahoo!画面上で「シェア」頂くか、是非tweet頂ければ幸いです。常日頃、誠にありがとうございます!!)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/haradatakeo/20140707-00037118/
https://www.facebook.com/iisia.jp/posts/690937997644091
サンクトペテルブルクで行われる「国際銀行会議」に出席してきた
今月1日から2日まで、ロシアの中央銀行である「ロシア銀行」の主催による会議「国際銀行会議(International Banking Congress, IBC)」に招かれ、出席してきた。我が国からの出席者は日本人という意味では私1人だけであった。
ロシアというと、その「専門家」として我が国で活躍している方々の多くが旧ソ連時代からこの国を取り扱っている人たちばかりであるせいか、どうもある種のバイアスがかかった論調が多い。実際、よく分からない国柄であることも事実であり、かつ世界最大級の軍事・インテリジェンス国家でもあるので隣国である我が国として油断がならないことは事実だ。だが、そうした観点から悪戯に「ロシア脅威論」「ロシア神秘論」ばかりを語るのはどうなのか。
例えば「北方領土問題」についてもそうだ。この問題は我が国固有の領土の問題であるので、どうしても我が国の立ち位置、あるいは極東という視点で見てしまう。だが、ロシアは実に広大な国家だ。その中に踏み入れてみればすぐ分かるが、政治的・経済的な意思決定は全てモスクワとサンクトペテルブルクという西部で行われており、これがシベリア・極東にて執行されるか否かが問題、というのが実態なのである。
それではそうしたロシアの頭脳である西部は一体どの様に動かすことが出来るのかというと、実はその梃子はモスクワではなく、サンクトペテルブルクにある。なぜならばこの街はロシアの台所であり、現在のプーチン大統領がその権力の座に就くにあたって必要な「財政基盤」を築き上げた場だからだ。したがって「北方領土問題」一つとってもこの梃子をどう動かすべきなのかという発想が第一に必要なのだが、悲しいかなそういう議論をする専門家がメディアでも、はたまた政界・官界・金融界でもほぼ皆無なのが我が国の実態なのである。
それではそのサンクトペテルブルクにおける金融利権の根本に何があるのかというと、何のことはない、ドイツに辿りつくのである。公的には事実関係が「否定」されているが、プーチン大統領は人的に見てもドイツ、しかも旧東ドイツの諜報機関「国家安全保障省(Staatssicherheit, Stasi)」やドイツを代表する金融機関との関係性が極めて深いことで知られている。すなわちドイツ、そしてそれをビスマルクの昔から突き動かしている国際金融資本の論理をお決まりのイデオロギー色を抜きにして知っていることが、本当のロシアを動かすためには必要なのである。そのことを知っている者が我が国の各界のリーダー層には余りにも少なすぎるのが大問題なのだ。
そうしたドイツを筆頭とする西欧流の金融資本主義を吸収しようと、ロシアが窓口として1992年から始めた国際会議。これが今回出席した「国際銀行会議(IBC)」なのである。国際金融との関係というと、どうしても「1998年に債務危機に陥ったロシア」というイメージが付きまとうが、昨今のウクライナ紛争を巡って西側各国からまたぞろ金融制裁をかけられても結局は倒れることがなかったことから分かるとおり、その力は既に図りしえないものになっている。それではそのロシア金融が一体どこに向かおうとしているのか。―――これが今回で第23回目を迎える「国際銀行会議(IBC)」のメインテーマなのであった。
並み居る「金融資本主義の主」たちは何を語ったのか?
我が国の金融機関、あるいは専門家たちの意識には全く上っていないこの会議だが、これが国際金融の本流という文脈(narratives)から見て既に確固たる地位を築いていることは、ジェイコブ・フレンケルJPモルガン・チェース・インターナショナル会長や、ハイメ・カルアナ国際決済銀行(BIS)総支配人らが忙しい日程をわざわざ割いて出席していたことからもよく分かる。そしてそこでの議論は「ロシアがどうするのか」ということもさることながら、その大前提として「金融資本主義はこれからどうなっていくのか」について詳細に語り合われていたのが極めて印象的であった。
細かな論点はともかく、大ぐくりで言うとそこでの論調は「ややネガティヴ(slightly negative)」なものであったといえる。どうしても楽観論を語らざるを得ない立場におかれている政治家や、リテール向けの特定の金融商品に紐づけられている評論家たち、あるいはえてして小難しい理論を振りかざす学者たちとは異なり、銀行家であるプロ同士の会話は実に現実主義的だ。個別のディールはともかく、理性と理性をすり合わせ、議論をする中で「現状はこうであり、今後はこうなる」という共通認識をこういった国際会議での出席を通じて創り上げていく。細かなディールに拘泥することなく、金融資本主義そのものの鼓動にも相当する、この意味での「論調(narratives)」づくりに積極的に参加しているという意味での国際的な銀行家(バンカー)を日本の銀行セクターにおける現役幹部の中でほとんど知らない。
なぜこれら国際的な銀行家たちが「ややネガティヴ」な言葉ばかりを語るのかといえば、彼らには「これから何が起きるのか」がよく分かっているからである。ちょうどロシアが深刻な債務危機に陥った1990年代末、米欧の主要国を中心に各国は深刻なインフレに見舞われた。そこで導入されたのが「インフレ目標(inflation targeting)」であり、「ディスインフレーション政策」だったのである。政策金利を通じた為替レートの誘導でその後確かに深刻なインフレは姿を消すに至った。
だが、問題はそうした下降トレンドが今度は止まらなくなってしまったという点なのである。マーケットでは多くの国々の中央銀行がインフレ目標を設定しており、ディスインフレーション政策をとっていることを知っている。そして現状では低めのインフレ(ラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事の言葉を借りるならば「ローインフレ(low inflation)」を維持しようとしているため、政策金利はいずれの国でもかなり低め、あるいは場合によって「マイナス金利」すら導入されているのだ。そのため、要するにカネが借り易くなっているので投資主体たちは安易にレヴァレッジをかけては過大なリスク・テイクを繰り返している。その結果、資産バブルが世界のあらゆるところで発生し、止まらなくなっているのだ。だが、バブルは必ずはじける。現に直近では2008年に「リーマン・ショック」という形で全世界的に大変なことになったばかりなのだ。
ところがこうした金融資本主義における基本構造はその後、何も変わっていないのである。いや、正確にいうと銀行家たちはこれを変えることが出来ないのである。なぜならばマーケットでうごめく投資主体たちは、仮に中央銀行がこの政策を止めた場合、「これからはインフレに動く」とばかりに様々な形で相場を張り始めるからだ。その結果、これまで15年近くも続けてきた「ディスインフレーション政策」が水泡に帰してしまうのである。そのためこれを止めるわけにはいかないのであって、その結果、これからまた新たな悲劇が生まれるのを戦々恐々としながら待つしかないということになる。―――そう、実は国際的な銀行家たちは「程なくして世界的な資産バブルの崩壊局面が到来する」と信じてやまないのである。
もはや状況は一国主義的な「アベノミクス」どころではない
さて、気になるのは我が国の「アベノミクス」に対する彼らの評価である。ちなみに我が国では5日、政府の産業競争力会議議員でもある竹中平蔵慶応大学教授が「新成長戦略は海外メディアでの受けがとても良い」と発言したと報じられた。
だが、実際には全くそんなことはないのである。我が国政府が頭を下げて行ったパブリック・ディプロマシーの成果はともかく、金融資本主義の最前線にいる国際銀行家たちのアベノミクスに対する評価は実に辛口であった。簡単に言えば「やっていることが意味不明であり、論理的に矛盾している」というのである。つまりアベノミクスというと何といっても日銀による異次元緩和なのであるが、「そんなことをやるよりも前にやるべきことがあるだろう。なぜそれをやらないのか」というわけなのである。確かに彼らの議論を聞いているとアベノミクスとして称して我が国がやっていることはどうにも合点がいかないということがよく分かる。表面的にはあたかも米欧流の金融資本主義の論理に則った動きをしているようにも見えるが、その実、全く違うことをやっているのが今の安倍晋三政権による経済・金融政策なのである。そしてちなみにこの竹中平蔵慶応大学教授が今年の2月、「海外投資家はアベノミクスに失望感」と発言するのと相前後してどういうわけか日本株は大幅に下がり始めたのである。ちなみにそこから大量の日本株を手放していたのは海外投資家とそれにつられて耐えられなくなった我が国の「個人」であることがその後の統計で分かっている。今回は真逆のことを言い出した「竹中発言」によって何がこれから起きるのかは誰の目にも明らかなのである。
だが、大切なのはそうした「官製バブル」への誘導という親方日の丸的な議論ではないのである。国際銀行家たちは明らかにこれまでのシステムではもはややっていけないことを熟知しており、しかもそのことをかつて国際共産主義の中心であったロシアで語り合っていたというわけなのだ。明らかに今後は成り立たないシステムの「脱出口」の一つがロシアに求められているのかは余りにも明らかだったのである。一時のバブルに酔いしれる我が国をよそに、次のシステムとして何が適当なのか、その枠組みを提示するという作業においてこそ、我が国はより人財を投入し、リーダーシップを発揮していくべきなのである。サンクトペテルブルクから出されたメッセージは、その必要性をはっきりと示していた次第である。
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)代表取締役
http://bylines.news.yahoo.co.jp/haradatakeo/20140707-00037118/
サンクトペテルブルクで語られた「世界同時株安」へのシナリオ (連載「パックス・ジャポニカへの道」)
http://blog.goo.ne.jp/shiome/e/473fa1132ef4d3bf741c00c256719501