さくらんひめ東文章

指折って駄句をひねって夜が明けて

九月文楽公演 夜の部

2010年09月11日 | 劇♪場♪
白玉か何ぞと人の咎めなば 露と答へて消えなまし物を思ひの恋衣、それは昔の芥川 
これは桂の川水に浮名を流すうたかたの 泡と消えゆく信濃屋のお半を背なに長右衛門
逢瀬そぐはぬ仇枕 結ぶ帯屋の軒も早 今宵限りに月影の流れに連れて行く身には
妻にも名残押小路 哀れは後に遠ざかる…

「桂川連理柵」の桐竹勘十郎さんの遣う長右衛門が実に良かった。
親への想い、妻への想い、そしてお半への想い
様々な想いの中で揺れ動く分別ある大人の男の苦悩が切ないほど心に迫った。
蓑助さんのお半は本当にいじらしくて可愛くて、
紋壽さんの大人の女として振舞うお絹がまた哀れであった。

チャリ場の帯屋の段は嶋大夫さんが客席を沸かせてくれ、
「勢州阿漕浦」の平治住家の段では住大夫さんがしみじみと語ってくれた。

昨晩もつくづく文楽はいいなぁと思った。
歌舞伎座がなくなってから、なんとなく歌舞伎を拝見しても
なにか足りないような心持がする昨今。

文楽にその心の隙間をうずめてもらっているのかもしれない。