これまでナノ粒子を用いた癌の治療・診断方法をいくつか述べて来た。ここでまとめておこう。治療には、薬剤を癌細胞にデリバーする(癌細胞に直接付着させる)方法と、金のナノ粒子(金ナノ粒子は人体に無害である)を癌細胞に付着させレーザー光を照射し加熱する方法とがある(11/13参照)。また、診断には癌細胞に量子ドット付着させこれにレーザー光を照射し発する蛍光を観測する方法があることを述べた(9/27,28,10/30参照)。
最近新しい方法が報じられている。
アメリカとイスラエルの共同グループは、金のナノ粒子が肺癌患者の吐く息に含まれる特有の分子を検出出来ることを見つけた。単に肺癌病巣の有無だけではなく、その進行状態についての知見も得られるという。すでに治験の前段階の研究が終了しているという。
これは診断法とは言えないが、アメリカのミシガン大学の研究者は、癌細胞が如何に広がるかを明らかにするのに役立つ新しい技術を生み出した。この技術を用いると液体の中に浮かんでいる癌細胞を個々に観測することが出来、これによって医学者が癌の転移の機構を明らかに出来ると期待されている。
また薬剤の開発にも期待が持てる。癌腫瘍のなかの癌細胞はすべて同じDNAを持っているとは限らない。したがって、1種類の薬剤で治療してもすべての癌細胞が除去されたとは限らないからである。個々の癌細胞を取り出し観測することが必要とされていた。
その手法とは、溶液中の癌細胞にスピンを持ったナノ粒子をくっつける。この溶液を磁場の中に入れるとスピンの速さが識別出来る。これによって個々の癌細胞を区別することが出来る。
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