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にっぽにあにっぽん日本語&日本語言語文化

日本語・日本語言語文化・日本語教育

日本語音声学基礎1-14

2011-10-07 22:50:00 | 日本語学
2006/05/04 木
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本語ってどんな言語?まずは発音から(1)教科書は自分の耳自分の口

 新学期、授業の参考書のひとつとして金田一春彦の岩波新書『日本語 上下』を紹介しました。
 「日本語に関する参考書は、いろいろありますが、これは、新書本で一番手に入りやすいのでおすすめします。私は古本屋で上下あわせて200円で買いました。まず、古本屋をさがして、なかったら岩波新書を扱っている書店を探してください。上下買っても千円ちょっとだから」と、学生たちに言っておきました。
 
 1年生のAさんは、高校の教科書のように考えて、メールをよこしました。

「 先生!!遅くにすみません★月曜4限目、日本言語学概論のクラスの1年、Aです♪
 先生が先週言っていたテキスト「日本語」の本の上下がまだ見つかっていません。

 簡単に見つけられると思っていたのですが古本にも普通の本屋サンにも売ってないんです。それで今取り寄せてもらっている最中なのですが月曜日までには間に合わないみたいなんです。

 先生、テキストを持っていくの次の週からでもいいですか?? 」

 だから、テキストじゃないんだったら。
 参考書なんだから、買うのも買わないのも自由。「買って読んでおけば、私の講義がより分りやすく聴けるよ」って紹介したのだけれど、新入生は、授業とはまずテキストがあって、それを読んで暗記し、先生が板書したことを逐一ノートに書き取ることが勉強だと思いこんでいる。

 そうじゃないんです。参考書は参考にするために読む。大学の勉強は、まず、自分の頭で「なぜ?」という疑問を導き出すこと。なぜ?の疑問を解明するために、自分の脳をフル回転させて、考えてみる。そこからスタートしたいのに、こんな基本的なことが、今時の学生にはなかなかわかってもらえない。

 「日本語と他の言語の発音の違いを復習しましょう」
 なんて、言っただけでは、学生はなかなか自分の頭で考えようとはしない。日本語音声学の基本を講義しても、眠くなるだけ。
 そこで、私の授業は、自分で声をだし、体を動かすことからはじめます。

 「日本語の外来語の発音と英語の発音を比べてみましょう。英語と日本語のように、系統の異なる言語を比べる学問を対照言語学っていいます。文法や語彙、発音、言語のいろんな面を照らし合わせて見ていきます。」

 「日本語学概論」の授業、日本語の発音と他の言語の発音のちがいを聞き分けるゲームからスタートします。

<つづく>

10:01 コメント(2) 編集 ページのトップへ
2006年05月05日


ぽかぽか春庭「新学期、右へ左へウロウロと」
2006/05/05 金
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本語ってどんな言語?まずは発音から(2)新学期、右へ左へウロウロと

 「大学1年生は、中学3年高校3年、6年間英語を学んで大学に入学してきましたね。2年生はさらにもう1年勉強している。英語と日本語の照らしあわせ、大丈夫かどうか、ちょっとチェックしてみましょう」

 英語の得意な学生は、自信満々で教師のことばを待ち受ける。ちょっぴり不安そうな、英語苦手の学生も。私も、ずっと、英語苦手でした。

 じゃ、いくよ。野球の守備位置で、真ん中はセンター、左側は?」
「レフト!」
「そうですよね。じゃ、右側は?」
「ライト!」
「その通り。日本語でもライト、レフトって、外来語で通じてますね。みんな世界野球、応援しましたねっ!」
「はーい!」
 このへんまで、学生も勢いがいい。

 「みんな、大リーガーになっても、ライトとレフト区別できそうだねっ。
 でも、松井やイチローじゃなくて、アメリカ生まれの大リーガーになったつもりでゲームやってみてね」

 ネイティブ大リーガーになったつもりで、右と左と区別できるか、やってみよう!私が右っていったら、右手あげてね、左って言ったら左手あげてね」
 新学期は右手左手あげさげゲームから始まりました。

 「いい、みなさんは、大リーガーなんだからね。ひっかかっちゃだめですよ。ちゃんと聞き分けてね.。左leftって言ったら左手だよね。右rightって言ってないときに、右手あげちゃだめですよ。

 大リーガーなんだから、たかが右手あげるくらいでダルそうに重そうに、あげないでよ。大丈夫だね。軽々とあげてね。私が軽いって言ったとき、重そうに右手上げないでね」
 
 「ライト、レフト、レフト、ライト、ライト」学生たち、右手と左手を上げ下げする。
 「ほう、みんな、調子いいね。じゃ、もう少し続けましょう。ライト、レフト、らいと、らいと、らいと、らいと、、、、、」

 「あれ?、みんな続けて右手あげてるけど、みなさん、今は大リーガーなんだよ。日本の学生じゃないんだよ。そんなに軽々と右手あげちゃっていいのかな。みんな、ひっかかってるよ」
 学生たち、「???」

 種あかし。
 「私は、右right、左left、軽いlight、軽いlight、軽い、軽い、と言いました。私がlight軽いって言っても、みんなは右手あげたよ」

 「な~んだ」と、学生。
 「先生のトリックにひっかかった」と悔しがるところから、「音声のちがい」に目をむけさせる。いや、耳をかたむかせる、かな。

 「英語から入った日本語外来語は多いけれど、lightとright、日本語外来語になると、どちらもライトで、同じ発音になります。
 英語耳にはまったく別の語にきこえるのに、日本語耳には、どちらも同じ音。どうして?」

<つづく>
11:16 コメント(3) 編集 ページのトップへ
2006年05月06日


ポカポカ春庭「ライスを食べたり虱を食べたり」
2006/05/06 土
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本語ってどんな言語?まずは発音から(3)ライスを食べたり虱を食べたり

 日本語ではRとLの発音を区別して使い分けることはありません。巻き舌でライスと言っても、舌を口蓋にくっつけてからはじいてライスと言っても、聞く人は同じように「ラ」と聞きます。

 日本語では洋食レストランで「ライスひとつ」と、注文したら、それが英語話者の耳に「lice(しらみ)」と聞こえたとしても、「rice(ごはん)」がちゃんとお皿にのって出てきます。日本語の外来語に「ライス=虱」なんてありません。

 もっとも、英語圏のレストランだとしても、「虱くださいlice please」と、注文してほんとに虱を食わせる店があるとは思えません。あえて、「ゲテモノ食堂」などに入ってみたなら別ですが。
 日本人が「ライス」と発音した場合、たいていシラミのほうのライスになっているのですが、たぶん、riceがお皿にのって出てくるだろうと思います。(lice はlouse の複数形)

 この話を学生にしたときの、最近の問題点。学生がシラミを知らないこと。猫や犬を飼っている家では、蚤を知っているのですが、頭につくシラミを直接見たことある人、少ないです。

 「みなさん、ネイティブ大リーガー耳になれなかったみたい。耳は日本語母語話者のままでしたね。じゃ、英語でスペル書き分けてみて」
 学生、ちゃんとritght と、light が、書ける。「right、右、権利」「light、灯、電気、明るい、軽い」

 「ほら、スペリングではちゃんと書き分けているのに、耳で聞いたとき、ネィティブ大リーガーになって、って言われても、日本語の耳できいてしまったね。なぜでしょう?
 英語の発音では、right とlight はまったく別の単語として区別されているのに、日本語外来語では、ライトとライト、同音異義語になります。英語耳で聞いてねって念をおされても、耳は外来語を聞く耳になっているんです」

 「スペリングだったら間違えないのに、耳では聞き分けができない。日本語の発音には、RとLを区別がないから。英語のRとLの発音の区別を習っても、聞き分けができるようになるのはむずかしいね」

 日本語を母語とする学生たち、英語のRとLの区別がむずかしいことを、納得しました。
 つぎに、日本語を母語としないで育った日本語学習者にとって、日本語の発音のどんなところが難しいのかってところを推察していきます。

 この推察、簡単にはできません。日本語母語話者にとって日本語の発音は簡単で、だれにもできて、難しいことなどひとつもないからです。
 
 あえて、母語話者にとっても発音の出来にくい点をあげておけば。一部の幼児、「ダ」の発音が「ラ」になってしまったり、「し」の発音が「ち」になって、「抱っこして」のつもりで「らっこちて」なんて発音することがある。まだ、調音のしくみが身についていない幼児には、調音点が同じ「だ」と「ら」、「ち」と「し」の区別はむずかしい。

 幼児の場合は「かわいらしい」とみなされるのに、大の大人がこのように発音したら「子どもっぽい」とみなされる。

RとLが、自分たちには聞き分けられなかったことを納得させてからでないと、有声音と無声音(濁音と清音)の聞き分けが難しい学習者もいることに、気づけない学生が多いのです。

 自分たちのできないことを知ってはじめて、他の言語の母語話者の中には、「パン」と「バン」、「タニ」と「ダニ」の区別が難しいという人たちもいることが納得できます。

 短母音と長母音の区別「おばさん」と「おばあさん」「地図」と「チーズ」の区別が難しい人たちもいるのです。
 病院と美容院の区別がなかなかできない学習者もいます。

<つづく>
10:05 コメント(5) 編集 ページのトップへ
2006年05月07日


ぽかぽか春庭「わたしはあなたをこすります」
2006/05/07 日
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本語ってどんな言語?まずは発音から(4)わたしはあなたをこすります

 RとLの聞き分け、c************さんから、発音するときの留意点をbbsにいただきました。ありがとうございます。
 発音できるようになると、聞き分けもできるようになる学生もいます。しかし、自分が発音できるようになっても、耳での聞き分けは難しいって人も多い。私も、口での発音区別はできても、なかなか耳での聞き分けができないうちの一人。

 bbsへの返信から
 『 よほど注意深く耳をそばだてても、I love youと言われたのか、I rub you と言われたのか、区別つきません。
 「日本人をからかうのに、一番いい方法」として「私はあなたをこすります」と、言ってやると、ほとんどの日本人は、うれしそうにはにかむ、っていう冗談があります。
 私は、あまりこすられたくないのだけれど、たぶん、I rub you と言われると、うれしがっちゃいますね。』

 「I rub you 私はあなたをこすります」とささやかれたら、私には「I love you」と、愛の告白にきこえてしまう。
 日本人には同じに聞こえる「アイラブユー」。RとLの聞き分けプラス、BとVの聞き分け。「あなたをこすります」と言われても「あなたを愛してます」と言われても、どっちがどっちやら、同じにきこえてしまいます。

 「私はあなたを愛してます」はうれしいけれど、むくつけき男に「わたしはあなたをこすります」って言われたら、気色悪いかも。
 RとL、BとVのように、自分の母語に区別がない音を聞き分けることはむずかしいんです。

 同じことばのなかであっても、自分の生まれたときに覚えた発音にない音は、練習しないとできません。方言などの差が大きい場合です。

 英語の中にも、さまざまな方言があり、同じロンドンで暮らしていても、昔は、下町の庶民のことばと上流階級のことばには、歴然とした差がありました。

 映画「マイフェアレディ」の中で、オードリー・ヘプバーンが博士に命じられてやっていたのは、ろうそくの炎をゆらす練習。これは、有気音の「H」を練習しているシーンでした。

 「H」の音、息を外に出して発音すると炎がゆれる。「H音」が弱いと、「ヘイ」が「エイ」になり、「ヒー」が「イー」に聞こえる。
 オードリー扮するイライザは、コックニーなまり(ロンドン下町なまり)の発音矯正から始め、H音の習得いっしょうけんめいやりました。蝋燭の炎で前髪をこがしそうになるくらい。

 母語(生まれてから数年で自然に身につけた言語)の発音がしっかり身についている人にとって、他の言語の発音を習うのは、そんなに簡単なことじゃありません。でも、やってできないことでもない。

<つづく>
09:40 コメント(6) 編集 ページのトップへ
2006年05月08日


ぽかぽか春庭「今朝もパン、おひるもぱん」
2006/05/08 月
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本語ってどんな言語?まずは発音から(5)今朝もパン、おひるもぱん

 イライザが生まれながらの下町なまりから練習の末、上流階級の英語(クィーンズ・イングリッシュ)を身につけることができたように、日本語にない音の区別も、日本語学習者が、一生懸命練習すれば、できます。

 日本語母語話者が外国語を習うとき、難しい発音のひとつ。有気音(息を出す音)と、無気音(息を出さない音)の区別があります。

 「じゃ、次、わたしが、何を食べたか、聞き分けてください」
 「けさ、パンを食べました。おひるに、ぱんを食べました」
 「今朝、何を食べた?」
 「パン」
 「その通り」
 「お昼ごはんは?」
 「パン」

 「朝も、お昼もパン?そう、みんなの耳には、朝も、昼も同じパンを食べたって聞こえたよね。
 でもね、私たちの耳には同じライトって聞こえても、英語母語話者の耳には、right とlightは別の単語に聞こえるのと同じように、パンと息を前に出して言ったときと、ぱんと息を前に出さないようにして言ったときでは、まったく違う単語に聞こえる言語もあります。

 この違いを有気音と無気音のちがいと言います。日本語は、息を出す音と出さない音、すなわち有気音と無気音の区別をしない言語です。だから、パンと息を出しても、ぱんと息をださずに言っても、同じ発音に聞こえます。
 でも、息を出す音と出さない音を区別してことばを作っている言語の人には、息を出すパンと息をださないぱんは、まったく違う音に聞こえているんですよ」

 まだ有気音と無気音の区別がよくわからない学生もいる。そりゃそうです。
 耳で聞いただけでは同じ音にしか聞こえないのが、日本語母語話者です。

 ティッシュペーパーを一枚とりだし、顔の前へ。ペーパーの下端が口の前にくるように、顔の前にぶらさげる。

 息を出して「パン」と言う。ペーパーは、息の風でゆれる。
 つぎに息を外にださないようにして「ぱん」。ペーパーはゆれない。

 学生にもペーパーを口の前にださせて、ペーパーを揺らさずに「ぱん」と言わせる練習。
 慣れればできるようになるのだが、最初のうちは息を吐き出さないで「ぱん」と言うことは、日本語母語話者にはむずかしい。

 「ばん」と言ったときは、息が「ぱん」ほど外に出ていかないことを確認させる。(パンとバンの違いは、無声音と有声音の違い)
 韓国語を履修した学生は、無気音をやってみて、「濃音だね」と、納得している。

 「パン」と言うと、たいてい息が口から勢いよく出てしまう日本語母語話者、テイッシュペーパーをゆらさずに「ぱん」と言ったつもりでも、ペーパーは、かすかながらゆれる。

 でも、そのうち、「できた!」と、言う学生もでてくる。全員ができるようにならなくとも、ここらで無気音の練習はおわり。

<つづく>
07:51 コメント(4) 編集 ページのトップへ
2006年05月10日


ぽかぽか春庭「「ん」にもいろいろ異音の話」
2006/05/10 水
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本語ってどんな言語?まずは発音から(6)「ん」にもいろいろ異音の話

 日本語には、有気音と無気音の区別がないが、有声音と無声音の区別がある。「番」と「パン」は、異なる単語と意識され「金」と「銀」は別の意味と認識される。

 しかし、有声音と無声音の区別が自分の母語にはない、という学習者もたくさんいます。
 有声音と無声音の区別をしない言語の代表、中国語。

 昔むかしのテレビのなかでのこと。中国ナマリをからかって、お笑いのコントではよく「あんた、ぱかアルよ」「パカって何だい」「パカはね。パカのことね」などと言わせていました。語頭での有声音と無声音の混同を笑いのタネにしていたのです。
 現在では、このようなナマリをからかうコントをやったりしたら、国際問題になりかねないので、見ることはなくなりましたが。

 中国語母語話者にとって、有声音(濁音)と無声音(清音)は異音です。
 中国語は、有気音と無気音によって単語を区別し、また高低アクセント(四声)によって単語の区別をします。

 しかし、有声音と無声音は、「ダン」と「タン」、「バカ」と「パカ」は、同じ単語なのです。有声音と無声音は、同じ音の異音だからです。
 日本人にとって「R」と「L」は、異音なので、right もlight も、どちらもライトで、耳できいたのでは同じ音に聞こえるのといっしょです。

 異音というのは、音声的には別の発音をしているのに、発音している人は同じ音を発音していると思っている発音のこと。

 日本語では、「ん」の異音が代表的。
 「ん」には三つの異音があります。でも、ほとんどの日本人はこのことに気づいていません。

 さんま(秋刀魚)の「ん」は「m」と発音しています。
 「さんま」と、言ってください。つぎに「さんま」の「さん」を言ったら、「ま」を言おとして、言わない。「ま」をいう直前で、とめます。
 自分の口を鏡に映してみて。唇は閉じていますね。「さんま」の「ん」は、口をとじた「m」の発音。

 さんど(三度)の「ん」は「n」です。
 「さんど」と言ってみてください。つぎに「さんど」と言おうとして、「さん」だけ言って、「ど」を言わずに直前でとめ、自分の舌がどこにくっついているか、確かめてみて。歯茎の上に舌があります。唇はとじていないはず。「さんど」の「ん」は「n」の発音。

 さんご(珊瑚)の「ん」は「ng 」です。
 「さんご」と言ってください。次に「さんご」と言おうとして、「ご」の直前で、「ご」を言わにず、やめます。のどの奥のほうに舌がくっついているのを確かめてください。これが「ng」です。

 ひらがなでは同じ「ん」だけど、マ行、バ行、パ行の直前では「m」になる。サ、ザ、タ、ダ、ナ、ラ行の直前では、「n」になる。ア、カ、ガ、ハ行の直前では「ng」になる。
 それぞれ異なる発音をしているのです。

ほら、あなた、何十年も日本語を使ってきたのに、「ん」の発音を使い分けていること、今まで、気づいていなかったでしょ。無意識だったからです。
 これが、異音です。

<つづく>
07:15 コメント(11) 編集 ページのトップへ
2006年05月11日


ぽかぽか春庭「タンスしました」
2006/05/11 木
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本語ってどんな言語?まずは発音から(7)タンスしました

 「m」「n」「ng」三種類の異音がある「ん」
 しかし、日本語母語話者は、全部同じ「ん」だと思い、自分が単語によって異なる「ん」を発音をしていることに気づいていません。

 日本語教員養成教育講座では、このような「無意識での日本語」を「意識化された日本語、客観的にみる日本語」として、気づかせていくのです。

 日本語母語話者が、「ん」の異音に気づかないように、中国語母語話者も、自分たちにとって、有声音と無声音が異音であることなど気がつきません。無意識に使い分けているのです。
 中国語母語話者にとって、「だ」と「た」、「べ」と「ぺ」など有声音と無声音は異音であり、単語を発音する前後の音の影響で変ります。音が変っても、語の意味は同じです。

 私たちがペキンと発音している中国の首都「北京」。
 アルファベット表記は、Beijingです。語頭のBは、無気音です。
 海外の空港で北京行きの便を電光表示板でさがし、Pekinだと思いこんで探していたので、いくらボードを繰り返してみても、Beijingが目に入らなくて、北京行きの飛行機に乗り損ねるところだった、という人もいました。
 北京をペキンと思っていたら、ベイジンだった、というわけです。

 この語頭の発音、日本語の「ぺ」でも「ベ」でもありません。息を出さないでいう無気音の「ぺ」なので、日本人の耳には「べ」と聞こえると思いますが。

 日本語初級の最初の文型、「私は○○します」「きのう、○○しました」を習った後、教師は、学生に昨日の行動をインタビューする。

 「ヤンさん、きのう、何をしましたか」
「わたしは、スーパーへ、たまごを買いました」
「ヤンさん、もう一度言ってください。スーパーで、たまごを買いました」
「スーパーで、ペンを買いました」
 なんて問答を学生と続ける。

 中国から来た留学生に質問。
 「リュウさん、きのう何をしましたか」
「タンスしました」
「え?もう一度」
「タンスしました」

 ここで、日本語教師の頭に、誤用の理由があれこれ思い浮かぶ。
 かれが、引っ越ししたばかりなら、荷物を運んで箪笥の整理をしたことも考えられます。

 追加の質問。
「どこでしましたか。リュウさんの部屋で?」
「ティスコでしました」
 これで、判明。彼には、有声音と無声音の区別がまだできていないのです。

 大丈夫、彼に有声音の「だ」が発音出来ないのじゃありませんから。
 自分では「だ」と「た」を無意識に発音しているので、意識化させれば、「ダンス」と「箪笥」は別の意味なのだということがわかってきます。

 日本語母語話者も、意識的に練習すれば、RとLの発音を区別できるし、聞き分けも次第にできてくるのと同じです。

 練習すれば、「きのうディスコでダンスしました」と言えるようになります。

<つづく>
07:29 コメント(6) 編集 ページのトップへ
2006年05月12日


ぽかぽか春庭「シーッ、静かにしてから授業続行」
2006/05/12 金
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本語ってどんな言語?まずは発音から(8)シーッ、静かにしてから授業続行

 中国語など、有声音と無声音の区別がない言語を母語とする人々にとって、日本語の有声音(濁音)と無声音(清音)の区別は、慣れるまでたいへんです。

 有声音と無声音のちがい。
 とりあえず、有声音とは日本語の母音あいうえおと、ひらがなの濁音と思ってください。濁音プラス、鼻音(鼻から息が出る音)の[m]と[n]、はじき音(流音)の[r]、半母音[y][w]が有声音(のどの声帯がふるえる音)です。

  無声音とは「k、s、t、h、p」などですが、日本語の音節は、ほとんどが子音+母音でできているので、日本人に無声音だけを発音させることはむずかしい。
 「か」とか「た」と言ったときには、有声音の「a」が含まれているので、声帯がふるえてしまっているからです。

 「無声音ってどんな発音?音を出してみて」と学生に言う。
 「え~どうするの」がやがやガヤ。
 そこで、ひとさし指を口にあてて「しーっっ静かに。はい、まねしてみて。しーっっ」
 ここで教師がやってみせるのは、声をださずに、ささやきで言うときの「しー」
  学生も「しーっっ」

 「ひとさし指を口からはずして、その手をのどに当ててみて。はいもう一度、しーっっ」
 「どう、手がビリビリってふるえた?ふるえてないよね。これが無声音のひとつ。「∫(国際発音記号のひとつ・Sを長くひきのばしたような形)」=「sh」の発音です。

 じゃ、つぎに、手をあてたまま、アーって言ってみて。ア~。どう、こんどは、ビリビリふるえを手に感じたでしょ。これは、のどがふるえているからですね。のどと言っても、正確には声帯。この声帯がふるえる音が有声音です」

 日本語母語話者には、無声音(清音)と有声音(濁音)の区別ができて、有気音と無気音の区別ができない。
 中国語母語話者には、有気音と無気音の区別はできて、有声音と無声音の区別がむずかしい。

 いかがですか、授業実況中継聞いてみて、日本語に興味わいてきました?
 有気音と無気音、有声音と無声音、日本語の清音と濁音の区別がついてきましたね。

 私、いつも90分めいっぱい使ってしまいます。
 授業時間オーバーは学生に嫌われます。90分の持ち時間のうち、10分遅れで教室に現れて、10分早く授業を終わらせるのが、学生に好かれるコツなんだってわかっているのだけれど、、、、

 はいっ、そこのふたりっ、この教室内では、私語禁止!シーッ!
 はい、みんないっしょに声ださずにささやき声で、シーッ。これが、無声音のひとつでしたねっ。

<つづく>
07:03 コメント(2) 編集 ページのトップへ
2006年05月13日


ぽかぽか春庭「鼻濁音で「がぎぐげご」
2006/05/13 土
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本語ってどんな言語?まずは発音から(9)鼻濁音で「がぎぐげご」

 私の授業、講師説明中の私語は禁止だけれど、学生同士でおしゃべりする「チャットタイム」を授業中に設けることもあります。コミュニケーションの練習です。

 「どの地方の出身か、ペアで質問し合って」などのコミュニケーションの課題を出します。
 このチャットをしていて、福島出身のひとりが、「自分が無アクセント地帯の発音なんだって、はじめてわかった」と、感想を言いました。
 茨城、栃木、福島の一部の地方では、高低アクセントのない、「無アクセント=全部、平板アクセント」で話されています。

 私も地元で暮らしている間、自分は標準語で話していると思っており、他の地域の人とアクセントや語彙に違いがあることに気づいていませんでした。
 私の地元では、鼻濁音は使いません。だから、大人になるまで、鼻濁音を発音できませんでした。
 鼻濁音が出来るようになったのは、朗読の発音発声の訓練を受けてのちです。

 b********さんから、コメントをいただきました。日本語に関心を持っていただき、うれしいです。

 『 「が」の発音も濁る「が」と濁らない「が」がありますね。地方によってちがうようで、わたしが小学生で大阪府箕面市にいたころ、合唱隊の先生は「が」をきれいに発音するよう指導されました。
 富山から転校してきた子が「が」が汚くない発音だ、というのです。ngaという感じですね。いま、長崎でも同じ職場の人がそんな発音でした。字に書くと「が」ではないような気がするのですが。 (2006 5/10 13:58)

 「ん」の三つの異音が、意識されていないのに比べると、「が」のふたつの異音、口音の濁音「がga」と鼻濁音「がnga」は、日本語母語話者も「ふたつの異音」として意識している音声です。

 地域によって、鼻濁音を使うところと使わないところがあるので、やわらかい「が」と硬い「が」、とか、きれいな発音の「が」と、きたない「が」などと意識されてきました。

 鼻濁音ができないと、おしゃべりが少し「硬い」感じになるのだと思います。私自身は普段の生活では、鼻濁音を使わないで話しています。朗読や歌をうたうとき、日本語教育の授業でのみ鼻濁音「が」を意識して使っています。

 「が」の2つの異音、口から息が出る口音の濁音「が」と、鼻から息が出る鼻濁音「が」です。
 鼻から息が出る音は「鼻音」と言います。日本語の鼻音は[m]と[n]、つまりマ行の音節とナ行の音節です。

 mの音が鼻から息をだしている、ということさえ気づいていなかった学生達。まず、ハミングをさせます。「♪ム~」
 つぎに鼻をつまませ、ハミング。鼻をつまむとハミングできない、mの音は発音できないことに気づきます。

<つづく>
09:26 コメント(3) 編集 ページのトップへ
2006年05月14日


ぽかぽか春庭「カメラは欲しいが、ガメラはちょっと」
2006/05/14 日
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本語ってどんな言語?まずは発音から(10)カメラは欲しいが、ガメラはちょっと、、、、

 [m]が、鼻から息を出している鼻音であることを確認してから、口音濁音の「が」と鼻濁音「が」の練習。鼻濁音は、発声訓練の本などでは、「か」に○をつけた表記をしているのもあります。
 語頭の「が行音」は、「ガラス」「ゴマメ」「ギンコウ」など、口から息を出す「口音」の「が」です。

 語中や、助詞の「が」は、鼻から息をだす[nga]になるのが、標準語の発音でした。
 「わたしが」と言うときの「が」は、鼻濁音になります。
 語中や語尾の「が」を、鼻濁音で言うか言わないか、人により、地域によって異なります。

 タンゴ、マンガ、など、「ん」の後の「ガ行」のとき、鼻濁音がよく使われます。
 でも、口音の「が」と鼻濁音の「nが」は、異音ですから、どちらを耳にしても、単語の意味は変りません。「まんnが」と、鼻濁音で言っても、「まんが」と、鼻濁音を使わずに言っても、漫画という意味をとりちがえることはありません。

 昔のアナウンサーは、この鼻濁音ができるようになるまで、厳しい訓練を受けました。現在は、若者ことばにこの鼻濁音がなくなっている影響もあって、民法のアナウンサーにも、鼻濁音ができないまま発話している人が多くなっています。

 地方から上京したとき、外国語を習い始めたとき、外国語の歌を覚えたとき、など、客観的に自分のことばを見つめなおすチャンスです。日本語をみつめなおすと、いろいろ発見が出てきますよ。

 日本語は、有声音と無声音を区別して単語を作るので、パンとバンは、異なる単語になります。谷とダニもちがいますね。
 けれど、有声音と無声音の区別がない言語の人にとっては、パンとバン、谷とダニ、同じ音に聞こえます。

 これは、息を出して言う有気音のパンと、ださないで言う無気音のパンを、私たちは区別できなくて、両方とも同じ音にきこえるってことを考えれば、わかるでしょう。

 カメラとガメラは意味がちがう語です。私は、カメラ欲しいけれど、ガメラ、あまり欲しくない。えっ、欲しい人もいるの?、あ、フィギュアね。

 ただし、濁音の「が」と鼻濁音の「nが」は、異音だから、これをまちがえても、意味がわからなくなることはありません。
 鼻濁音をつかって「nガメラ nが nがんばっている」と言っても、「ガメラが がんばっている」と、口音濁音で言っても、意味はかわりません。

 NHKなどの標準的発音では、ふたつ目の「が」を鼻濁音にする。すなわち「ガメラ nが、がんばっている」になる。

<つづく>

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2006年05月15日


ぽかぽか春庭「マクドとマック」
2006/05/15 月
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本語ってどんな言語?まずは発音から(11)マクドとマック

 鼻濁音を使う地域と使わない地域が、日本国内でも地方によってことなることをお話しました。
 鼻濁音の有無だけでなく、地域によって、さまざまな方言が存在します。
 方言の差を知り、同時に外国語と日本語の差を知ることが、大切。

 東北方言、鼻にぬける鼻母音が多く、フランス語の響きに近いので、関東以西の地方の人が苦手なフランス語の鼻母音の習得が、東北出身者にとっては簡単だそうです。

 発音(調音)も言語によってそれぞれ違いますし、また、アクセントも、高低アクセントを使う言語と、強弱アクセントを使う言語があります。この違いも、だんだんわかってきます。

 日本語のなかでも、地域差で鼻濁音を使うところ、使わない所、あるように、高低アクセントも、地域差があります。
 また、語彙が地域によって異なることは、よく知られています。

 観光地へいくと、ハンカチやのれんなどに「お国ことば」の一覧などが印刷されたものを売っています。
 秋田料理の店、沖縄料理の店など、郷土料理の飲食店に入ると、そんなお国ことば暖簾がカウンター前や壁にかかっていたりして、読むのが楽しみです。

 さて、有気音無気音の練習で、「パン」「ぱん」と言っていたら、お腹空いてきましたね。「コバラがすいた」ってところです。
 郷土料理もいいけれど、手軽にハンバーガーでも食べましょうか。
 近くのマックへ行きましょう。

 関西出身の人、大阪の人は省略するとき、マクドっていうよね。東京では、たいていマック。こういう語彙のちがい、社会言語学で、地域位相差といいます。地域位相差っていうとむずかしそうですね。方言のことですよ。

 方言というと、「中央の標準語共通語が優位で、方言は一段おとる」みたいに、いまだに考える人もいるので、言語学では「方言」ではなく、「地域位相差」というのです。

 でも、私は方言が大好きで、日本語の豊かな言語文化を支える基盤は方言だと思っているので、「方言」という言い方も遠慮なしに使います。

 大阪ふうにきいてみましょうか「なぁ、にいちゃん、このへんにマクドあらへんかなあ、教えてぇな」
 「そんなもん、知らんわ。あんさん、マクドなんぞやめて、たこ焼きにしとき、ほら、あそこの角まがったら、すぐやで」

 「自分のことばは上品で丁寧だ」と思っている山の手奥様風「あの、お手間をとらせて、もうしわけございません、少々お教えいただけませんでしょうか。ちょっとおたずねしたいことがございまして。わたくし、マクドナルドという名のお店をさがしておりますが、見つからなくて、難儀しております。もしや、おたくさまがご存じでしたら、どのあたりにありますのか、お教えねがいたく、お願い申し上げます」
 こんな風に聞かれたら、私、「ああ、めんどくさ」と思っちゃうんですけれど。根がガサツなもので。
 
 私の舅姑の故郷、東北風だと、「マクドナルドさ、どさ?」簡潔きわまりなし。
 これだと、簡潔に教える気になります。「あの角まがって、右がわ」

 関西では、促音「っ」の入る音は避ける傾向があるので、「行ってしまえ打線」は
「いてまえ打線」になる。
 大阪では「マクドナルド」の前半をとって「マクド」と省略される。

 関東では、促音が多くなる。「どこかへ行ってしまえ」は、「どっか、行っちゃえ」
 マクドナルドを省略するとき、アイルランドスコットランドなどの出身者に多い人名マックドナルドの前半をとって、「マック」になる。

 地方によって、さまざまな語彙やアクセントがあります。
 方言は大切にしていきたい言語文化です。方言が出来る人、自分のネイティブのことば大事にしてね。

<つづく>
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2006年05月17日


ぽかぽか春庭「マクドナルドはドナルドの子」
2006/05/17 水
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本語ってどんな言語?まずは発音から(12)マクドナルドはドナルドの子

 マクドナルドが出てきたついでに、授業で頻出する「余談」「脱線話」のトリビアをひとつ。名字の解説。
 ファーストネームは、どの国でも親が子どもの幸福を願って名付けます。日本の女性の名前で一番多い名前、ひところは「幸子」でした。

 ファミリーネーム(氏姓)についてお話ししましょう。ファミリーネームの作り方のひとつの例です。

 先祖がアイルランド・スコットランド出身者に多い「マクなんとか」というファミリーネーム。「マック」は、「~の息子、~の子ども」という意味。

 ドナルドの子ども、ドナルドの子孫、というファミリーネームがマックドナルド。マッカーサー(マックアーサー)は、アーサーの子孫。マックガバン、マッケンジーなども。

 「~の子」という意味の接辞、マックのほかに「オ」を前につける場合もある。
 ニールの子オニール、ハラの子、オハラ。『風とともに去りぬ』のスカーレット・オハラ、ファミリーネームを見れば、アイルランド移民の子孫とわかります。

 イングランドなどでは、これが「ソン」になる。ジョンソン、アンダーソンなどの「ソン」、ジャクソンはジャックの子。
 また、アダムの子→アダムス、ジョーンの子→ジョーンズ、ウィリアムの子→ウィリアムズ。

 オランダ、デンマークなどでは、ヤンセン、アナセンなど、センをつけた姓が多くなる。「セン」も同じく、「~の子ども~の子孫」、という意味。ヨハンセンは「ヨハンの子」
 ちなみに、日本でアンデルセンと呼んでいる童話作家、地元デンマークではアナセンです。

 ドイツではゾン、ゾーンです。メンデルスゾーン、モーダーゾーンなど。

 ~ソン、~センなど、「~の息子」という意味のヨーロッパ圏の名字を紹介しました。ついでに、アラビア語圏のなまえ。

 アラビア語を中心とするアフロアジア語族文化圏では、自分の名前と父親の名前を重ねて名乗り、ファミリーネーム(氏姓)はありません。

 「モハメッド・アリ」という人がいたら、自分の呼び名がモハメッドで、お父さんの名前がアリ。モハメッドに子どもがうまれて、アブドゥラとなづけたら、その子は「アブドゥラ・モハメッド」になります。
 日本人にあてはめると「一茂茂雄」「良純慎太郎」「孝太郎純一郎」「光永將」という名乗りになります。

<つづく>
10:11 コメント(3) 編集 ページのトップへ
2006年05月18日


ぽかぽか春庭「ラディンの息子、バトゥータの子」
2006/05/18 木
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本語ってどんな言語?まずは発音から(13)ラディンの息子、バトゥータの子

 ヨーロッパ文化圏に多い~ソン、~セン、~ゾンなど「~の息子」と同じように、アラビア語圏でも「息子」をつける場合もあります。

  「イブン」が「~の息子」の意味。
 イブン・バトゥータは「バトゥータの息子」、イブン・ハルドゥーンは、「ハルドゥーンの息子」。イブン・アッズバイル、イブン・トゥールーンなどなど。
 アラビア系の人の名前、やたらにイブンばかりが多いと思いました。イブンはファーストネームじゃなくて、「~の息子」だったんですね。

 c******さんのコメント。ありがとうございます。
『 かの有名な?サウジアラビアの富豪の子息、
オサマ・ビン・ラディン・・・これも「ラディン家の息子」と言うらしいですね
(2006 5/17 23:48) 』

 その通り、オサマ・ビン・ラディンのビンが「~の息子」にあたります。「ラディンの息子オサマ」です。
 日本の新聞などでは「ビン・ラディンはいまだに潜伏中」などと、書かれていますが、アラビア語圏では「オサマは、健在」と書かれます。ファーストネームを呼ぶほうが一般的なので。

 アラビア語と同じアフロ・アジア語族(セムハム語族)に属するヘブライ語で、アラビア語のbinに当るのはbenです。
 映画の「ベン・ハー」はBen Hurでson of Hur、ハーの息子。
 イスラエルの国際空港の名前にもなっているベングリオンは、元首相の名からとられました。ベングリオン、すなわちグリオンの息子です。

 こういう余談がしょっちゅうさしはさまれるので、なかなか本題がすすまないのが、私の授業なのですが、まあ、これも言語文化を知る一環です。

 どの文化にとっても、母語は大切な「文化の基盤」です。
 日本語との違いを理解しつつ、その母語の持つ特性を尊重しながら、日本語を教えていくことが重要です。

 はい、余談はおわり。マクドナルドの話にもどります。
 また、アメリカ生まれの大リーガーになってください。まあ、大リーガーじゃなくてもいいんだけど、とにかくアメリカに住んでいて、生まれたときから英語しゃべっている人です。

 マクドナルドはどこか、聞いてみましょう。
 アメリカじゃ、マックやマクドじゃ通じないかも。はい、道きいてみて。

 あてられた日本人学生、英語なら得意って顔をして「フェアリーズ マクドナルド」と、質問を英作文して言う。「マクドナルドは、どこですか Where is MacDonald?」と、たずねたつもり。

 教師の返事「えっ、なんですって?どうしたの?」

<つづく>

07:41 コメント(1) 編集 ページのトップへ
2006年05月19日


ぽかぽか春庭「マック食うのも一苦労」
2006/05/19 金
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本語ってどんな言語?まずは発音から(14)マック食うのも一苦労

 「Fea lii-zu makudo-narudo ふぇありーず まくどなるど」という「英作文?」を耳にしたアメリカ人役の教師、おおげさに「What? Can I help you? 何?お手伝いしましょうか?」
 「Makudo-narudo? What's it? マクドナルドって何?」

 日本人学生、困った顔で「あのぉ、マクドナルド ユーノー?マクドナルド?あの、ハンバ^ガー。アイ、ウォント トゥ イート、ハンバーガー、Han-baa-gaa、」なんて言う。
 
 「マクドナルド」と、6つのカタカナをひとつひとつ読む言い方で発音したのでは、たいていの町でわかってもらえません。「ハンバーガー」も、「ハン、バー、ガー」では、なんのことやら。

 日本語の音節と拍(モーラ)について、理解しないまま英語にあてはめても、このような「日本語式モーラの英語」になるのです。

 無理してマクドナルドを何度も言い直すより、まるっこいMのロゴマークを書いてみせたり、ハンバーガーの絵を描いて、手でつかんで食べるマネをするほうが、わかってもらいやすいかも。

 なぜ、アメリカ風にマクドナルドが発音できないのか。日本語と英語は、音の組み立て方がちがうからです。

 日本語は、開音節であり、音節ひとつひとつの拍の長さが等しい。高低アクセントによって発話を形づくる言語です。
 英語の単語は、日本語と音節構造が異なる閉音節の語が多く、強弱アクセントなので、日本語とはずいぶんちがう。
 こんな風に言われると、なんだかすごく難しそうですね。

 日本語の音節と拍、アクセントについてお話しします。

 日本語は、ひとつひとつの発音の単位=音節が、全部で百ちょっとあります。
 音節というのは、発音するときの、音の単位のひとつです。ひとつのまとまった音声(音韻)と認識されて発音する単位が音節です。
 (「ツェ」「ディ」などの音節を日本語音節の中に含めるか含めないかで、学者によって音節数の数え方が異なる。ツェなどは、外来語のみに使う音節なので)

 「日本語の音をひとつひとつ、言ってみて」というと、たいていの日本語母語話者は、「五十音表」に出ている文字をひとつひとつ読み出します。
 ひらがなひとつひとつ。清音と濁音(文字でいうと、ひらがなに点々つき)半濁音(は行の文字に○つき)、「きゃ・きゅ・きょ」などの拗音。
 この平仮名文字を発音したのが「日本語の音節=発音の単位」と思ってください。

 そのほか、特殊拍とよばれる、撥音(文字でいうと、ひらがなの「ん」)促音(文字でいうとひらがなの小さい「っ」)長音(文字でいうと、カタカナの、伸ばす棒「ー」)
 このひとつひとつを、一拍(1モーラ)と、数えます。

<つづく>


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