2010/11/24
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポンご教師日誌>日本語学・音響音声学(1)池上彰式
学生とメールでのやりとりが簡単になり、今期から授業コメントを紙媒体ではなく、メールでの送信としました。コピーするのも簡単になり、学生向けに「授業フィードバックコメントサイト」を開設しました。発表ネームはニックネームにしていますが、クラスメード同士は誰の感想かわかるようになっています。
サイトにUPされた自分の名前を見ることで、学生は自分のメールが教師に届いたのかどうかを確認でき、翌週「先生、メールの不具合で私の授業感想が届かなかったみたいなので、もう一度送ります」と言ってくる。中には、単純に送付し忘れただけの学生もいるのだけれど、まあ、いいかと「じゃ、もう一度送ってください」と言うことにしています。
日本語学の発表、ただ日本語教育辞典や日本語学辞典を調べてそれを引き写して発表するのではなく、必ずクイズかゲームをとりいれるよう、指導しています。先週の日本語学演習では、助数詞についての発表をする学生には、ゲームとして「数とり団」をクラスの皆でやるので、ゲーム進行の方法を考えてくるよう伝えておきました。
授業感想の例をあげると。
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学生A:
授業フィードバック
今回は縮約語と助数詞、母音交代のレポートを聞きました、まず縮約語は中学生が対象のレポートでした最初のレジュメのケー番、告るなどはすぐに理解したのですが裏側に書いてあったがじてつやアフレコなどはさっぱりわかりませんでした。
次に助数詞です、つまり物の数える単位ですが何気なく使っているから意識していないだけで結構おもしろいと思います。
母音交代はなんとなくイントネーションにていて結構理解がはやっかたような気がします。
授業感想
みなさんとても素晴らしい発表でした僕ももっと頑張らなくてはならないとと思いました、最近気付いたのですが先生の解説すごくてなんか池上彰みたいですごいと思いました。
学生B:
授業内容
一人目の発表は、縮約形・縮約語の発表で、今の若者はその言葉として使っている言葉が本当は縮約されているという発表をしていた。発表は縮約語だけだったので、先生が縮約形のつけたしをした。縮約形とは、・いけなければいけない→いかなきゃなんない、いかなくちゃなんない ・やはり→やっぱり、やっぱ 等に変化することを言う。2人目は、母音交替の発表で、風と上で読み方は、かざかみ になるなどの話をしていた。3人目は、私が助数詞の発表をした。発表の後に、みんなで数取団をやった。
感想
縮約語は、クイズ全然できませんでした。キャバクラとか、チューハイ、パリーグは、そのままで言葉として成り立っていると思っていたので、分からなかったです。こうしてみると、縮約してあってもそれがそのものの言葉だと思うことばがいっぱいあるんだろうな。と思いました。母音交替は難しかったです。助数詞は、始めて聞いた助数詞とかもあって調べてて楽しかったです。数取団懐かしくて楽しかったです。
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授業内容をまとめて書かせるのは、こちらも学生がどのように教わったことを把握し理解したかの理解度がわかって、理解不足のところは次回に補足できるので、書かせています。感想コメントは、それぞれの受け止め方がわかるので、こちらも読んでいて参考になります。「先生の解説すごくてなんか池上彰みたいですごいと思いました」という感想コメント、「すごくて~すごい」という日本語がなんですが、ああ、こういうほめ方もあるのだという参考になりました。池上彰が複雑なニュースをわかりやすく伝えている、という意味で、「先生は池上彰みたい」とコメントしたのだろうと受け止めました。
退屈になりがちな日本語学の解説を、わかりやすく楽しく理解できるようにとこころがけていることを受け止めてくれているようなので、一安心でした。
<つづく>
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2010年11月26日
ぽかぽか春庭「専門外」
2010/11/26
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポンご教師日誌>音響音声学(2)専門外
中学校の国語教師だったころのこと。さほど大きい規模の学校でないところでは、ほとんどの中学校で「専門外」の教科を受け持たされる、ということがありました。美術科免許の先生が社会を教えたり、数学免許の先生が英語を教えたり。学校規模によって教師の人数が決まってしまうので、どうしても教科のばらつきが出て、免許教科外を受け持たざるを得なくなるのです。
中学生のころ、音楽部に所属していたと話したために、私には「音楽を受け持ってほしい」と打診があったのですが、「とても生徒に教えられるような力はありません」と、お断りしました。音楽を受け持つには、バイエルやチェルニーを習った程度のピアノではとうてい無理、という私の「科目外受け持ち拒否抗弁」に、音楽の先生も賛成してくれたのであやうく教科外科目を持つことは逃れ、3年間国語を教えるのみでやりすごしました。
カフェ日記でも、中学校美術の先生が数学を受け持ち、たいへん熱心に数学授業にも取り組んでいらっしゃるようすを読ませていただき、頭が下がる思いがします。もともと数学が好きだったのかもしれませんが、免許外の教科でも「生徒にもわかりやすく、自分でも数学を楽しんで」と、毎日の授業を工夫していらっしゃるようす、感心しています。
私は、数年前「音響音声学」という学科を受け持つことになりました。「私は、日本語学の一部としての日本語音声学しか学んだことはなく、音響学についてはまったく何もできません。日本語音声学としての授業だけでいいのなら担当させていただきます」という条件で授業をはじめ、数年は日本語音声学だけ受け持っていました。
去年から、「音響学基礎」について「自分も学びながら、学生とともに音についての知識を深めてみよう」という野心を持ち、少しずつ勉強しています。
音響学は、物理学を基礎としています。周波数とか音波干渉とか、私には無縁だった世界を広げてみることになったのです。
きっかけは、学生の発表内容でした。ある学生が「日本語と英語の音声の周波数は異なる。日本人には英語の周波数は聞き取りにくい」という発表をしました。いわゆる「英語周波数」にまつわる話です。
「日本語の周波数は、最低が150HZで、最高でも1,500HZであるのに対し、英語(米語は別)はといえば、最低が2,000HZで始まり、最高は、12,000HZを超える高周波で話されています。英語に限ってみてみると、日本語と英語とでは、なんと、500HZの隔たりがあることになるのです」という記事がネットの中にもあり、日本人が英語会話を聞き取りにくいのは、周波数が異なるからだ、ということを発表したのでした。
直感的に「それは違う」と思ったのですが、周波数とかヘルツとか言われると、数字に弱い私のおつむは、もううまく反論することができなくなってしまい、大いに反省しました。
そこで、一念発起、音響について学びはじめ、「音」というものを物理学・工学的に理解することにしたのです。
中学校理科、高校物理の時間に、音速がうんぬんかんぬんで、ジェット機は音速より速く飛ぶから、自分の出す音は聞こえない、とか、光は音より速いから、花火が光ってだいぶたってから「ド~ン」という音が聞こえる、などの話は理解できたのですが、その先の、フーリエ変換だの、等ラウドネス曲線だのメル尺度だのと言われても、もう何がなにやら、の世界です。
でも、辛抱強く音響学関連について学び、今では自信をもって、「日本人が英会話を聞き取れないのは、周波数のせいではない」と言い切れます。英語と日本語の周波数が異なるから聞き取れない、という説は「とんでも科学、似非科学」であると学生には説明できます。サイレンの音が自分に近づくときと遠ざかるとき音の高さが変わることも物理学的に「ドップラー効果のしくみ」として説明できるようになりました。
音声と音響について、自分の知識の幅が広がりました。
<つづく>
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2010年11月27日
ぽかぽか春庭「モスキートーン」
2010/11/27
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポンご教師日誌>音響音声学(3)モスキートーン
音響の基礎。
音は、ものが振動することによって発生します。その振動が水や空気など媒体を伝わって耳に届くのです。空気中より水中のほうが速く音が届きます。1000メートル上空からと1000メートル海中から同時に音を鳴らすと、海からの音のほうが速く耳に届くのです。空気のない宇宙空間ではモノが振動したとしても、音を伝える媒体がないので、宇宙は無音です。
音には、三つの要素があります。音量(音の大きさ・単位はデジベル)と、周波数(音の高低・単位はヘルツHz)と、音色(音の波形の違いとして見ることができる)の三つです。
人間の耳は、人によって差があるけれど、およそ20ヘルツという低い音から、20000ヘルツという高い音まで聞き取ることができます。ヘルツというのは、音の高さを表す数字です。音の波が、1秒間に1回発生すると1ヘルツ。音のゆれが1秒間に20回発生すると20ヘルツです。20ヘルツより低い音もこの世には存在していますが、人間の耳には音としては感じられません。ただし、「振動」として身体に感じる人もいます。
音の大きさはデジベルという単位で表します。人の普通の会話は30~50デジベルくらい、にぎやかな交差点の騒音は80~90デジベルくらい。120デジベルという大音量を聞かされると、短時間で難聴になってしまいますが、90デジベルくらいでも長時間聞いていると難聴になります。大きな音を出すチェーンソーを長時間使っていた木材伐採の労働者が短期間に難聴になったことから、音の大きさの問題が話題になったことがありました。
ものが動くと音が生じるのですが、蝶の羽ばたきは2デジベルという小さな音なので、普通の人の耳には聞こえません。150~200デジベルというような大音量を耳の近くで聞かされると、鼓膜が破れるなどしてしまいます。音の大きさは騒音問題となって、特に都市地域では大問題になっています。
音の高さ低さについて。20ヘルツ以下の音は、音というより振動として身体に感じます。8000ヘルツ以上の高音は人間の耳にはキーンという耳鳴りのような音に聞こえます。赤ん坊は高い音でも聞き取ります。25歳くらいまでは高音を聞き取り、しだいに高音が聞こえなくなっていきます。年をとると高音が聞こえなくなります。
モスキートーン(Mosquitone,モスキート音)の聞き取り実験を「音響音声学」の教室でやってみました。
子供の頃から聞こえにくかった私の耳は、もはや10000ヘルツまでしか聞こえなくなっていることがわかりました。いっしょに実験した学生達、私が10000ヘルツの音に「聞こえない」と言ったことにショックを受けていました。「老人の耳が聞こえにくくなっているって、ほんとなんだぁ」と思ったようです。
学生達には15000の音はほとんどが聞き取りましたが、それ以上になると聞こえない者もでてきます。赤ちゃんの中には18000ヘルツの音に反応を見せることもあります。20000ヘルツでは皆が聞こえなくなります。ただし、犬や猫には聞こえます。この高周波音を応用したのが「犬笛」です。人の耳に聞こえず、犬や猫だけに聞こえる笛の音です。
モスキートーンの音を聞いて何ヘルツまで聞こえるか確かめたい方は、次のサイトへ。25歳以上の方へ警告。最初の低い音の時は普通の音量でいいですが、高ヘルツになるにしたがって、音量を下げないと、キンキンした音が不快です。
http://www.youtube.com/watch?v=b3u7o7zBH5U
いかがでしたか。私には10000ヘルツ以上はまったく聞こえません。若者は15000Hz~17000Hzが聞こえます。自分の耳年齢を自覚するのはよいことです。
個人差があるのですが、年齢別のおおよその音の聞こえのめやす。
10歳代以下、20Hz~20,000Hz、
20歳代で20Hz~18,000Hz
30歳代で20Hz~15,000Hz、
40歳代で20Hz~14,000Hz
50歳代で20Hz~12,000Hz、
60歳代で20Hz~10,000Hz
さて、この実験をふまえて、読んでいただくと、昨日の記事の「英語日本語周波数の違い」という論がわかりやすくなります。
明日は、「英語日本語周波数の違い」という説が「とんでも科学」だということをお話ししたいと思います。
<つづく>
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2010年11月28日
ぽかぽか春庭「オギャア~は440ヘルツ」
2010/11/28
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポンご教師日誌>音響音声学(4)オギャア~は440ヘルツ
モスキートーンの聞き取り実験、やってみましたか。50歳以上の方、高音が聞こえないことに気づいたことと思います。これは自然なエイジングですから、高い音が聞こえないのは当然と思ってください。見た目を若く保つのは個人の努力次第ですが、耳の聞こえの老化は免れません。
さて、世にある低い音高い音のさまざまな音の中で、人の話し声はどれくらいの周波数でしょうか。
小学校中学校の音楽の時間に習った楽譜を思い出してください。♪ドレミファソラシド~の音階を「アアアアアアアアア」と発声練習をしました。楽譜のト音記号の下のドでア~と発声すると、約260ヘルツです。楽譜の上のほうに書き記された1オクターブ高いドが倍の約520ヘルツ(倍音といいます)。ピアノの伴奏の楽譜ヘ音記号がついているほうの、1オクターブ低いドは半分の約130ヘルツです。
赤ちゃんが生まれた時に発声するオギャアという鳴き声の高さはおよそ440Hz前後です。この声はどの国に生まれようと、大きなちがいはありません。
普通の声で話しているとき、男性の声での平均の高さは、150~550ヘルツくらい。女性は400~800ヘルツくらい。(男性は声変わりすると声帯が太くなり、声が低くなります)。話し声の高さは人それぞれですし、年齢によっても異なります。
歌うときは、話し声より高い音低い音を出しています。中学校などの音楽教科書の合唱曲では下は100ヘルツの低音から、上は900ヘルツくらいまで出すような曲もあります。高い音を出す女性ソプラノ歌手だと、ア~と言いながら、1600ヘルツの音まで出すそうです。
言葉を発音するに当たって、声の高さ(基本周波数)が500Hzを超えると母音(特にoの母音)が不明瞭になり始めます。500Hzというのはピアノの鍵盤でいうと、中央のド(C4)から数えて11番目のB4の辺り。一般の人では、1000Hzを超えると母音を発声することが不可能になるので、言語音としては用いられません。
子音の周波数は母音より高いのですが、子音だけで発音する言語は、世界中にありません。必ず子音と母音が組合わさって発声されるのが人の言語です。
私が直感的に「英語日本語周波数の違い」説を聞いて「この説は似非科学だ」と感じることができたのは、日本語音声学を学んで人の声の周波数について知っていたからです。音についての知識がまったくない場合、ヘルツだの周波数だとの聞かされると、なんとなく科学的な感じがして、信じ込んでしまうかもしれません。
「日本語の周波数は、最低が150HZで、最高でも1,500HZであるのに対し、英語(米語は別)はといえば、最低が2,000HZで始まり、最高は、12,000HZを超える高周波で話されています。英語に限ってみてみると、日本語と英語とでは、なんと、500HZの隔たりがあることになるのです」という説のおかしな点がもうおわかりですね。
どうしてこの説を「変だ」と感じたのかというと、まず、「英語の周波数が最高12000ヘルツを超える高周波である」という点でした。どの言語にも中心的な音声の周波数がありますが、12000ヘルツの高音など、ソプラノ歌手にもとうてい発声できない高い音です。
しかも、「英語と米語は別」と書かれている点。どう見ても、音声学を学んだ人の説とは思えません。英語と米語は、発音の面で違いがありますが、それは音の周波数とは関わりがありません。母音の音色の違いや、語と語の音の融合(リエゾン)の違いによります。
ケータイ電話は、言語音の周波数に合わせて、どの国のどの会社のケータイも200ヘルツから3400ヘルツの音のみを伝えるように設計されています。英語母語話者が、3400ヘルツ以上の高音を発声したとしても、ケータイではその音は伝わらないのです。もし、英語母語話者の発声が3000ヘルツ以上の高音が中心の音声ばかりであるなら、ケータイ電話では英語の会話は聞こえないということになります。(ちなみに、鈴虫や松虫などの虫の鳴き声は4000ヘルツ前後なので、ケータイではまったく聞こえません)。この事実だけでも、英語の周波数が高いから日本人には聞き取れないというのが「とんでも科学」であることがわかります。
さて、さらに詳しく人の声の周波数について調べてみることにします。
<つづく>
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2010年11月30日
ぽかぽか春庭「人の声の周波数」
2010/11/30
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポンご教師日誌>音響音声学(4)人の声の周波数
人間の声は、どの言語でも母音(呼気が口中のどこにも邪魔されずに出てくる音)と子音(口の中で舌や歯、唇などによって音が遮られてから外に出てくる音)の二種類があります。子音のほうが周波数が高い音になります。
日本語の母音の「ア」の周波数を計測してみると、基本周波数と呼ばれるもので、男性は150Hz~250Hzくらい、女性は250Hzから300Hzくらいです。子供はさらに高い周波数です。
「ア」の音声分析についてさらに詳しく知りたい方は、以下のサイトを。(音響測定を専門にしている会社のサイトです)
http://www.ymec.com/hp/signal/voice1.htm
子音の周波数は母音より高くなります。日本語子音の周波数を計測すると、おおよそ「パ行」の[p]の音は、700Hzくらい。「カ行」の[k]の音は、960Hzから1300Hzです。
英語母語話者の[k]の音の周波数を計測した実験によると、'cloudy'の[k]は、1,500Hz。came'、'market'、'capitol'の[k]だと、2,500Hz。日本語の[k]の子音より高いことがわかります。子音の周波数だけ比べると、英語のほうが高い、ということが言えるので、おそらく「英語と日本語の周波数が異なるから日本人は英語を聞き取れない」という説を出した人、(もしくは英語教材販売戦略担当者)は、ここを拡大解釈したのだろうと思います。
しかし、英語でも日本語でも子音だけを発声しているのではありません。
日本語は子音の数と母音の数はほぼ同じだけ発声されます。ひとつの子音に必ずひとつの母音を伴って発声するのが日本語の音声だからです。
それに比べて、英語は子音の数のほうが多い。日本語でストライクというと、子音が5つで母音が5つになります。英語でstrike[straik]というと、子音は4つで、母音はaiという二重母音ひとつだけです。日本人の耳に聞き取りにくいとしたら、この「子音の連続」が聞き難い、ということでしょう。
子音のほうが周波数が高いので、子音だけを比べれば英語のほうが高いということができるかもしれませんが、それでも、子供の声のほうが大人の声よりも高い、というほどの違いは「英語と日本語の平均的な周波数」に存在しません。声の響きにとって、母音が重要な要素だからです。
たとえば、日本語で「た」と発音したとき、[t]と[a]が組み合わされて発音されますが、子音の[t]と[a]の音の持続時間を比べてみると、[t]は、[a]の15分の1の長さしかありません。「た」という音のほとんどは[a]という母音の響きを聞いていることになります。
「英語日本語周波数のちがい説」の元の説は「世界の各言語には、もっとも中心的となる周波数がある」というだけのもので、それを、英語教材販売会社かどこかが、「日本人の耳には英語が聞き取りにくい。でも我が社のCD教材を聞いていると英語が簡単に聞き取れるようになりますよ」ということの宣伝のために、元の説を「とんでも科学」に変換したというのが真相のようです。
日本人が英語を聞き取りにくいのは、以下のような理由がありますが、いずれも周波数の問題ではありません。
1,母音の数が異なる。日本語共通語は母音の数は5つ。英語の母音単音は9つ。(二重母音なども数にいれると30種類以上になる)
2,母音の音色が異なる。日本語の方が、口の開け方の変化が少ない。ことに「ウ」は口をすぼめない「ウ」なので、英語のウと異なる。しかし、英語の母音の音色のうち、「イ、ウ、エ、オ」の4つは、日本語と全く同じではないが、日本語の母音と同じで充分通じる。日本語にはない音色の母音。「イとエの中間の音」「エとアの中間」「アとオの中間」「オとウの中間」「口をあまり開けないア」などが、日本語の母音と異なる。
3,音節の構造が異なる。日本語は「子音+母音」の開音節。英語は「子音」が多用され、子音で音を閉じる閉音節の単語が多い
4,英語は、単語の中に強い部分と弱い部分を含む強弱アクセント。日本語は語に高い音と低い音が存在する高低アクセント。
<つづく>