日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

近江守助直 脇差

2020-06-13 | その他
 助廣の初期の作風は初代の互の目丁子出来を専らとし、万治頃から互の目主調となり、寛文頃から互の目に変化を持たせた様々な刃文を焼いている。試行錯誤し、独自の刃文を生み出そうとしていた時代であろう。寛文四、五年頃の互の目乱刃に玉刃の焼かれた作がある。これも研究の一つであろう。以降、互の目を崩した刃文、湾れ刃、湾れと互の目の複合、などがあり、寛文八年頃から湾れに大小異なる互の目を配した濤瀾乱風の刃文が焼かれるようになった。寛文十年の作に濤瀾乱刃の完成ではないかとされる作があるのだが、玉刃は多くない。この時期は、ごくごく浅く湾れた直刃や、ゆったりとした湾れ刃も美しい。寛文十二年ころから盛んに濤瀾乱刃を焼くようになる。以上助廣大鑑より。助廣亡き後に大坂で活躍した助直や、國輝、照包、さらに時代の下った助隆、正秀、その門下の綱俊などなど、濤瀾乱刃を焼いた刀工は多く、ここに表記した刀工の作品は多くが助廣に負けていない出来となっている。
 濤瀾乱刃は良く知られているのだが、海原の大波をデザイン化したのが濤瀾乱刃であれば、大波にもさまざまあるわけで、濤瀾乱崩し、湾れ崩し、湾れ刃に互の目を構成した刃文、互の目を意識的に崩した刃文なども濤瀾乱刃と同じ考えの下で生み出された刃文ではなかろうか。綺麗に整った刃文も良いが、古作が持つ自然味と、江戸時代の綺麗に構成された刃文との調和美も見どころではないだろうか。どのように名付けてよいか分からない、結構面白い刃文がある。隙のないほどに整った造形からなる焼き物も美しいが、どこかに釉薬の垂れた痕跡や罅や皺のある、あるいは手捻りのゆがんだ焼き物にも言い知れぬ魅力があるように。



越前守助廣 脇差
 大互の目の時代。互の目の処々に玉が焼かれている。



近江守助直 脇差
 刃先近くまで深々とした沸の広がりが魅力。沸の中に湾れがあり、互の目があり、玉があり、沸筋があり、金線がある。物打辺りは不定形の刃文構成だが、下半は互の目湾れが顕著になっている。下半の刃中には沸筋が層を成している。


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