商品の品質(役務の質)の誤認とは、需要者が商品の品質を誤解してしまうことです。
(1)商標法は、商品の品質の誤認を生じさせるおそれのある商標は登録しないと定めています。需用者は商品を購入する際に「商標」を参考にしますが、商品の品質を誤認させるような商標は望ましくないからです。
この場合、誤認の「おそれ」を問題としますので、審査においては実際に品質を誤認させたという事実ではなく、その「可能性」の有無に着目して判断します。(2)たとえば 「タイタニック ビーフ」 という商標について考えてみましょう。第29類「食肉」という商品を指定して出願した場合。商標中に「ビーフ」という文字を含んでおり、一般に「ビーフ」は「牛肉」を意味すると解釈されます。
そのためこの商標が、「牛肉」以外の食肉(たとえば豚肉や鶏肉など)に使用された場合、需用者は商標を見て商品が「牛肉」だと誤解して買ってしまうことも考えられます。そこで、審査において「商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標」であると判断され、拒絶されてしまうことがあります。
(3)このような拒絶理由通知を受けた場合、手続補正することにより拒絶理由を解消できることがあります。例えば、上記の例ですと指定商品を「食肉」から「牛肉」に補正すれば、品質誤認を生じさせるおそれはなくなるので拒絶理由は解消します。「食肉」は「牛肉」を含む広い概念なので、その中の「牛肉」に限定することは問題ありません。
拒絶理由通知書にも一通り拒絶の理由を説明した後に「但し、指定商品を『牛肉』と補正した場合にはこの限りでない。」というようなアドバイス的記述が記載されていることがあります。(4)上記の例では 商標中に「ビーフ」の文字を含んでいるために「牛肉」以外について登録が認められない場合を示しましたが、「ビーフ」の文字を含む商標であっても「食肉」について登録できる場合はあります。
例えば「ロビーフロント」のような商標の場合、商標中に「ビーフ」の文字を含んでいますが、商標の構成から考えて この中から「ビーフ」部分を抜き出して「牛肉を意味する」と判断するのは不合理だからです。実際には商標の構成により審査官と見解が別れることはありますが、そのような場合には意見書を提出して「品質の誤認を生じさせるおそれがない」ことを主張するとよいでしょう。
「午後の紅茶」の判例などはまたの機会に・・・。