高橋源一郎氏が小説はほとんどが恋愛と死者のことが書かれているといっていたが、人間の心の動きの中で重要なことは、「愛すること」と「愛する人との別れ」に関係しているからだと思う。恋愛は人が人を濃密に愛する場面であるし、死は究極の別れであるからである。幸せや哀しみそれから孤独は、「愛」と「別れ」に関係している。たとえば、それぞれの人の人生が小説だとすれば、そこに書かれる物語は愛と別れという出来事が中心になるし、その物語の中で書かれる感情の流れは「愛と別れ」という出来事から派生する感情のバリエーションである。自分が今どのようなバリエーションの中に生きているかはそれぞれ違うが、人が自分の人生を思いっきり生きようとすれば、良くも悪くも深く喜んだり傷ついたりしてしまう。
ジョン・アービングの小説を読むと、へんてこりんで深く傷ついている人たちがたくさん出てくる。彼らの人生は暗くて重苦しい。人ごとだと思って客観的に眺めてみると、パロディのようで笑ってしまうかもしれない。小説の前半は、このような感じだが、彼の小説はどんなヘンテコな人間だってちゃんと生きてていいんだし、居場所もきちんと見つかることを教えてくれる。心の傷もいつか癒えるものだということが分かる。
山の夜露や湧き水が少しずつ集まって川になり、曲がりくねったところや落差のある滝を越えて、大いなる海に流れていくように、自然な感じで人生を送れたらいいなと思う。人生は自分という個性的な存在の中でしか生きれない。ひどい人生だとしても、そのひどさがその人の個性なのだ。ただ、人生はうまくできていて、ひどさの中でも、十分に幸せに生きていくことができる。ひどさという川の流れに自分を委ね、自然に生きていければいつか大いなる海にたどり着く。だから、きついなぁと思っている人には、頑張ってもらいたい。もちろん私もね。
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