フリードリヒの日記

日常の出来事を、やさしい気持ちで書いていきたい

私が殺した少女 原尞

2021年03月21日 07時00分00秒 | 読書・書籍

原尞さんのハードボイルド小説「私が殺した少女」を読了。

もっとゆっくり読むつもりでしたが、面白くて一気に読んでしまった。

この小説は、1989年10月に早川書房で刊行されました。

1989年というと、その年の12月の日経平均は38915円の最高値だった。

まさしくバブルの絶頂期。

そして、第102回直木賞受賞作品でもある。

それにしても、バブルから30年以上経つのが信じられない。

バブルにちょっとだけかすっています。そんなにいい思いはしませんでしたが。

小説は80年代の東京が舞台で、もちろん携帯電話は出てこない

主人公の沢崎は、公衆電話に10円をジャラジャラ用意していて、

テレホンカードすら新しいシステムだと言っている。

時代背景としては、もう古くなったのかもしれない。

しかし、最近書かれた小説よりも面白く感じるのはなぜだろうか?

最近の小説には、沢崎のような人物があまりいないからかもしれない。

沢崎は、お金よりも、自分自身の内面にある規律のようなものを大切にしている。

儲け話があってもそれに興味を示さず、不利益が被ろうとも自分の規律に従った行動する。

その姿勢に共感を覚えるかどうかが、

この作品を好きかどうかを分けるポイントだと思う。

沢崎にはそういう矜持のようなものがある。

彼の信念は、誘惑や困難に常に試されてる。

もちろん、プロットもうまく練られていて、

最後にあっと驚くような結末が待っている。

沢崎は、誘拐事件に巻き込まれるのだが、

普通、誘拐事件の解決は警察の仕事で、私立探偵の出る幕はない。

そこに、私立探偵が絡んでくるというひねり技が使われている。

最後は決してハッピーエンドではありませんが、

読み終わるのが惜しくなるようないい作品でした。

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