民家の軒を揺らすように、お馴染みマルーンレッドの8400系3両編成が近づいてきた。
30分に1本、律儀にそして長閑に西田原本と新王子をシャトルしている田原本線だ。
3両編成が折り返す西田原本駅は田原本駅(橿原線)と広場を挟んで50〜60m離れている。
広場には両線の乗換客を狙った一杯呑める露天やらキッチンカーが出ている。
両駅がそれぞれが独立している(連絡線はある)のは、両線のルーツに違いがあるから。
この日の午後呑み潰している田原本線は大和鉄道がその前身だ。
マルーンレッドの3両編成は7駅を数えて約20分で新王寺に終着する。
ここでもローカル線あるあるで、3つの箱から出てくるのは高校生とお年寄りばかりだ。
新王子は頭端式ホームになっている。つまり鉄路は車止めで塞がれている。
やはり駅前広場を挟んで生駒線の王寺駅と向かい合って、線路は繋がっていない。
わざわざJR線をオーバーパスしてきているのに、残念な駅ではある。
案外と王寺には昼呑みできる店が多い。5方面に鉄路が延びる乗換駅でもあるからかな。
それではボクも王寺駅に移動する前に赤ちょうちんに飛び込んでみるのだ。
そしてこの店が嬉しいのは、奈良の地酒が揃っているところでしょう。
この橙のラベルは香芝の “大倉”、山廃仕込みで旨酒を醸している。
この直汲み無濾過生原酒をグラスから升に溢してもらう。トロリとした芳醇な旨味のある酒だ。
アテの “斑鳩豆腐屋の冷奴” はクリームチーズのよう、関東のモノとはだいぶ違うね、美味しい。
“奈良万願寺トウガラシの焼き”、このピリリと辛いやつで何合かいけそうでだね。
二杯目は北葛城郡の “長龍”、この雄町の無濾過生原酒はジューシーでフレッシュだ。
地酒と地産の食材を活かしたアテを楽しんだら、ミョウガを散らして “そうめん” を啜る。
この暑さでバテ気味の身体に、この冷たいのが心地良いね。
今度は大学生に混じって王寺駅の改札を通る。生駒からやってきた1021系は4両編成だ。
旅の後半を往く生駒線は、朝護孫子寺への参詣のために信貴生駒電気鉄道がルーツ。
もともとの枚方まで繋ぐ計画は実現せず、枚方側は京阪交野線として開通している。
ひとつ目の信貴山下で降りてみる。かつてここからは東信貴鋼索線が信貴山をめざした。
駅前にはコ9形という戦前の車両が展示されている。
マルーンレッドの4両編成は、生駒山地東麓に広がる住宅地の中を、ぐいぐい勾配を登っていく。
いつしか鉄路は複線になって、山中のターミナル生駒には約25分で到着する。
王寺での昼呑みを挟んで、田原本線と生駒線の旅を終えた午後。
厳しい支線を潰す旅は、奈良の酒肴を堪能して、案外楽しい旅になったね。
近鉄田原本線 西田原本〜新王寺 10.1km 完乗
近鉄生駒線 王寺〜生駒 12.4km 完乗
<40年前に街で流れたJ-POP>
Bye Bye My Love / サザンオールスターズ 1985