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旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

武勇と松緑と稲荷の前の狸庵と 水戸線を完乗!

2022-01-22 | 呑み鉄放浪記

 ガーター橋に轟音を響かせて、ブルーの帯を纏った5両編成が鬼怒川橋梁を渡ってくる。
冬晴れの青空が広がっているけれど北からの乾いた風は冷たい。今回は水戸線を呑み潰す。

先週のゴール小山駅にやってきた。東北新幹線・上越新幹線にありがちな何の変哲もない箱型の駅舎だ。
南北に貫く東北本線から西へ向かう両毛線、東に向かう水戸線が分岐する小山、北関東の要衝ではある。

水戸線のホームは15・16番線、番号振りだけなら東京駅や上野駅にも負けない大ターミナルの様相だ。
シルバーに濃いブルーをひいた電車は、品川や上野を始発する常磐快速の付属編成の運用らしい。

09:45発の1739Mの席も暖まらないうちに、2つ目の結城で途中下車する。ここからは茨城県だ。
結城紬のふるさとは城下町の街割が残る歴史のある町、点在する見世蔵はかつての商業的繁栄を感じさせる。
そんな町並みの一軒に武勇酒造を訪ねる。鍋をつつきながらの一杯に、無濾過生原酒を仕込んで満足なのだ。

ブルー帯の5両編成にはセミクロスシート車両があって旅情をかきたてる。っで “武勇 辛口純米酒” を開ける。
列車はちょうど鬼怒川橋梁に差し掛かり、遠くに白を纏った日光連山から那須の山々が見渡せるのだ。

 辛口純米を愉しむうちに列車は下館に至る。
関東鉄道の終点であり真岡鐵道の起点であるこの駅は、鉄道全盛の時代には交通の要衝であったろう。
駅前のデパートは核テナントが撤退し、今では市役所本庁舎となっている。少々寂しい風景ではある。

 そんな町に人々を呼び込んでいる真岡鉄道の「SLもおか号」が、週末ごと駅や沿線を賑わす。
10:35、もうもうと煙が上り、突如として一声の汽笛が凛とした冬の空気を震わせる。
数分後、田圃の小道で待ち構える呑み人に、シュッシュ、シュッシュと蒸気を吐く音が聞こえてきた。

C12-66号機はその小さな鋼の体を主連棒だけは激しく動かして、ゆったりとカーブを描いて行った。
九州、東北、信州そして会津を走った戦前生まれは、齢90歳にしてここに健在だ。

 右手車窓に筑波山が見えなくなった頃、列車は笠間に滑り込む。
笠間稲荷の最寄り駅ではあるけれど降りる人は少ない。地方では初詣もやはり車でと云うことか。

日本三大稲荷に数えられる「笠間稲荷神社」の創建は白雉2年(651年)、1300年を優に超える由緒ある神社だ。
宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)は農業・工業・商業・水産業などあらゆる殖産興業の守護神であるから、
全国から多くの参拝者が訪れている。

何回目かの?初詣を終えたら門前で一杯と行きたい。それにしても参道はなかなかの賑わいになっている。

門前の老舗そば処「狸庵つたや」に席を見つけたら、“おでん” をつまみにキリンラガーを呷る。美味い。
それにしても稲荷の門前でなぜ狸?疑問は未だ解消していない。

     

喉が良い具合に湿ったら “ざる” を一枚、ここいらは当然に「常陸秋そば」を使っている。
ズズッと大きな一口を啜る。口いっぱいにその甘味が、鼻腔には芳醇な香りが広がって美味。

ゆるりと歩いて駅に戻る。っと駅舎が神社を模していることに今更ながら気づくのだ。

 この旅のアンカー749Mがやって来た。旅の終わりの友部まではあと2駅になる。

”二波山 松の緑の 色たけく よろずかけて なお榮ゆらん”
笠間稲荷神社の御神酒を奉納する笹目宗兵衛商店の “松緑” を開ける。なかなかスッキリした本醸造だ。

あっという間に右手から常磐線の複線が寄ってきた。カップ酒の残りを慌てて飲み干す。
ブルーの帯を纏った5両編成は友部駅の3番ホームに滑り込み、地酒2杯で呑み継いだ水戸線の旅を終える。
水戸線って水戸を走らないんだ。何だかつまらないことに納得して、2週間の北関東横断に終止符を打つのだ。

水戸線 小山〜友部 50.2km 完乗

色つきの女でいてくれよ / ザ・タイガース 1982