横浜市在住で、薔薇の鉢作りをされているYamameさんから、薔薇の土で苦労している話を伺いました。薔薇の土作りは、日本伝統の菊作りと同様、其の秘訣は配合の仕方にあり、それによって丹精の結果が決まりますので費用と労力を惜しまず吟味して土作りをします。与える肥料の種類も量も其の土で決まります。
―新宿御苑バラ園、見頃は5月下旬からー
しかし、土に関する最大の悩みは、鉢替えした古土の処分です。実は其の捨て場所が都市部では無いのです。容器用土栽培では、土替えの作業が必ず必要になります。土の再生材なるものが市販されていますが、昔から菊でも薔薇でも古土の再利用などは可能であっても論外です。
―旧古河庭園のバラ園、見頃は5月下旬からー
新プランター野菜栽培の培地では、一作毎に栽培した作物根から培地を振るい落として徐根し、洗浄して再利用する完全なリサイクル方式です。通常は必要は無いのですが、もし病原菌の進入の疑いがあれば、徐根洗浄の後、プール水の循環消毒に利用されている次亜塩素酸ナトリウムの消毒剤(市販品)を溶かした水を張って一晩置きます。
―培地を振るい落とした野菜(ブロッコリー)の根―
少量の種まき用に同じ培地を利用する場合には、半渇きにした培地をプラチック袋に入れて電子レンジで、80℃ぐらいに加熱殺菌します。これで土壌伝染性の病害とは無縁になり、連作も全く問題ありません。
こんな事が出来るのは、新プランター野菜栽培で利用する培地の主成分が酸化珪素(SiO2)材の全くの無機物であり、土壌栽培のような土からの微量要素や配合した有機腐食物からの肥料成分の供給を必要としない栽培法であるからです。
日本で無機土壌のみを利用する栽培法を提唱して実践されたのは、ご存知の方も多いと思われますが、永田農法です。しかし、それを容器栽培に利用する方法や洗浄再利用と言う考え方は導入出来ません。
―永田農法大玉トマト鉢栽培、哀れな姿―レインボー薬品HPより
自然の無機土壌では、構成粒度分布や細粒分量などの物理性、微量要素の供給能はあっても保肥力となる化学性や作物根と共生する微生物叢となる生物性の点で、配合調整なしでは、容器栽培に適する条件が必ずしも得られません。それに洗浄すれば、細粒分も流れてしまいます。
―標準プランターサブイリゲーション栽培の鈴なり大玉トマトー
実は、Yamameさんは、新プランター野菜栽培の培地を薔薇栽培に利用する事にしたのです。植え替えの度にサブイリゲーション用の鉢を手作りし、用土栽培から新プランター栽培の特殊培地に切り替えを始めました。その利点は、鉢替えした古土の処分の心配が無くなる事です。
―挿し木で育てたエリザボエル、植替え後の比較、左側サブイリゲーション栽培―
次に灌水と施肥が一体となった均衡培養液をサブイリゲーション方式で利用するので、従来のような鉢底から散水によって水が流れ出る事が無くなリました。肥料管理が大変楽になり、それに加えて水持ちがよくなって、給液回数も減リました。春の芽吹きも早いのも比較して確認されました。
―挿し木で2年目、昨年秋サブ入りゲーションに植え替えたベージュボンボンー
土壌を離れる大きなメリットは、土壌伝染性の病害からの開放です。薔薇科植物の大敵の根頭ガンシュ病や根こぶ線虫などの心配が無くなる事と虫害も減ると期待されています。
課題は、栽培成績です。成長の良し悪しに咲く花の大きさ、色ですが、二シーズンの結果では好成績と申しています。土を離れた養液栽培で利用されている均衡培養液は、植物生理の研究から考案され、N、P、Kに Ca、Mg、S,と微量要素のFe, Mn, Zn, Bo, Cu, Cl, Moの植物に必要な全ての栄養素を含む完全な無機肥料溶液です。
有機物の微生物分解を必要とする有機肥料栽培から全く離れる事が、結果でどう違うのかは、「いちご」や「トマト」の業務用の養液栽培で明らかですし、薔薇の業務園芸栽培にも既に利用されています。
―この冬の挿し木と昨年の挿し木のサブイリゲーション栽培比較―
Yamameさんの話では、「培地の挿し木発根率も抜群で、挿し木1年目から花が咲き、理想の培地」と太鼓判を押しています。どうやら新培地の物性の違いが分かったようです。これからも、Yamameさんから「薔薇の新培地によるサブイリゲーション栽培」の結果報告を逐次頂く事に成りました。
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